第65話『呪いの勇者と異世界転生者』
「嘘でしょ!? 魔王を一撃だなんて……」
「いや、まだ生きてるぞ。あれだけやっても、手応えをまるで感じなかったからな」
綾香が驚愕しているが、そんなのに構っている暇なんかない。驚くほどの防御力を知らしめられて、俺やエリクシア達もより一層、緊張感を張り詰めさせていた。
地面を砕く程の衝撃だったんだけどな。深手とまではいかないが、そこまで深刻なダメージを与えることが出来なかったみたいだ。タフ過ぎるだろ……。
顔を隠す仮面は完全に砕け散り、魔王の素顔を拝むことが出来たんだが、俺はその男のことを良く知っていた。何でこの世界にいるのか、俺には分からないんだけどな。
因縁が因縁を呼ぶように、世界が変わったとしてもまた奴は俺の前に現れたんだ。元の世界で俺から全てを奪った男、先輩を殺した張本人のそいつは……。
「ーーお前、冴島だな……」
「おや? おやおや? よく見たら何時ぞやの刑事じゃねぇか! まさか、この世界にまで来ているなんてなぁ〜! これも呪いの力なのかぁ?」
「お前は、俺が殺したはずだ!! どうしてこんな所にいる!?」
「あぁ〜、そうだったよなぁ。たしか、俺がお前の大事な人を殺し、お前が俺を殺したんだよな。してやられたぜ、まだまだ殺し足りなかったのによぉー! もう分かってんだろ? 俺は、この世界に魔王の子として転生を果たした、ただの殺人鬼だってことによぉー!」
そんな筈ねぇって言いてぇよ。俺の大事な恩人でもある先輩の仇を撃つ為、俺はあの時、ピストルを抜いたんだ。殺した筈の冴島は今、この世界の魔王に君臨している。生きる希望を失った俺は、知らず知らずにこの世界に転移していて、殺人鬼の冴島が魔王として転生していた。
ーー殺す、殺す、殺す、殺す!!
殺意に駆られて、俺が俺では無くなりそうになる。救えなかった先輩を嘲笑うかのように現れた冴島が死んでも尚、更正もせずに、異世界で人殺しをすることが俺には許せなかったんだ。
「お前だけはぁぁぁぁ!!」
「ダメだよカケル。大丈夫だから……」
狂いに狂って、ただ眼前の敵を殺しに行くだけの、邪気を放つ獣になって諸刃の剣を闇雲に振り回そうとした時、エリクシアやマリエルが優しく抱きしめてくれて、俺の暴走を止めてくれていた事には流石に驚いたよ。
「……チュッ//」
「ーーんっ! んん//」
エリクシアが優しく、甘く、ねっとりとしたキスをしてくれたおかげで俺の失った理性を取り戻すことができた。ってか、いつも以上にエリクシアのキスが濃厚過ぎて、逆に理性が飛びそう何だけど!
「ダメだよカケル。一人で背負い混んだらいけないんだよ? 私が、みんなが居るじゃない。倒そう、皆んなであの魔王をね。レミアの為に、カケルの為に、私達だって全力を出すんだから!」
「そうですよ! 私達を置いて遠くへ行かないで下さい! 一人じゃないんです。皆んなでやっと一人前、だから私達はパーティなんですから、そんなに苦しそうに泣かないで下さいよ……」
優しく抱きしめられている筈なのに、とても力いっぱい抱きしめられているような気がするよ。気づけば、涙だって流していたし、身体にすら力が入らなくなっていたんだよな。
情けねぇよな。でもありがとう。エリクシアとマリエルが、俺を止めてくれてなければ、俺の心はきっと壊れていただろうから。
ーーここでやり直そう、俺と俺達の世界を超えた復讐を……。
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