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第64話『呪いの勇者と違和感の正体』


 「やめなよカケルくん! 幹部なんかよりずっと強かったよ。私達が手も足出なかったんだから……。死んじゃうよ!?」


 「何だよ綾香、今更心配してんのか? もうそんな関係じゃねぇだろ。死なねぇさ、俺達はレミアの為に戦うんだから」


 睨み合いの最中、魔王が不思議そうにレミアをじっと見つめていた。現状が理解出来てないようで、ただ頭をかしげていているんだけど一体何を考えているんだろうな。


 納得がいかないって感じだけど魔王がポツリと言葉を落とした。その言葉の意味を俺は理解したくない。理解してしまったら、これまでのレミアの頑張りや、命懸けで助けたレミアの姉さんが報われないから。


 ーーその心無い言葉を俺は絶対に聞きたくなかったんだ。


 「死人に魅入られてんのか? 勇者様はよぉ〜」


 「死人? そんな奴いねぇだろ。ホラ吹いてんじゃねぇぞ!」


 「ホラなんかじゃ無いさ。俺はよーく覚えている。その娘は間違いなく、俺があの村で姉妹共々、殺してやったんだからな!」


 意味わからねぇよな。レミアが死人? そんな訳ねぇよ。だってレミアは、レミアの姉さんが命懸けで護ってくれたって言ったんだ。否定したいが、アリアドネだけは声を出さずただ下を向いている。


 その姿を見てようやく俺は、アリアドネに感じていた違和感の正体に気づきたくないけど、現実を受け入れたくなかったけど、それを俺の脳は否定してんだ。


 レミアは、姉さんに助けられた訳では無い。姉妹揃って魔王に殺されていたんだ。何が目的なのかなんてのは知らねぇ。理由なんてのは今、この場において必要ねぇんだから。


 レミアの姉さんは、無駄死にだってのかよ……。


 ーーふざけんな! ふざけんな!!


 俺の怒りと同時にレミア自身も困惑していた。死んだ事実すら分からず、魔王に殺されて、姉さんを追い求めていく内にこの魔導列車に行き着いたんだろうな。


 「う、嘘よ! 私は死んでないわ! だって、姉さんが助けてくれたんですもの。姉さんを殺しておいて、死んだ後まで馬鹿にするなんて絶対に許さないんだからぁー!!」


 「うるさっ……。だから、お前は殺したって言ってんだろ。何回言わせるつもりだ馬鹿女。俺はお前達姉妹をツケ狙う理由があったんだ。生かす訳無いだろ現実見ろぉ! まぁ、命乞いだけは、立派だったよ。妹だけはーって、泣き叫んでいたから指を一本づつ、自分で全て落とせば妹の命はだけは助けてやるって言ったらあの女、本当にやりやがった! 一切、泣き言なんか言わなかったし、最高にイカれた奴だったぜぇ?」


 「う、嘘……。そんな……」


 俺の感情は、憎悪に侵されていたんだと思う。人の心を踏みにじった挙句、約束すら簡単に反故にして、快楽的に殺しをする魔王に対し、激しく激昂する以外の選択肢なんてなかったんだからよ。


 「本当に惨めな最後だったよなぁー! こんな快感久しぶりだったぜぇ〜? ありがとな、俺の為に無様に死んでくれてよぉ!」


 「ーーお前は、少し黙ってろ!! マリエル、詠唱開始」


 「この物語の最後を悲劇で終わらせる訳にはいきませんよね。勝たなきゃ軽蔑しますからね!」


 【スロー・ギアクル】


 神速を超えるだけではない。悪鬼が如く邪気を放ち、業を蓄えた強烈な一撃を脳天に一発、魔王に叩きつけた。骨が砕けたっていい、腕が千切れようが、二度と立てなくなろうが知ったこっちゃねぇ。


 別に俺は構わねぇんだよ。魔王のせいで世界が滅ぼうが、綾香以外の勇者パーティが壊滅しようがな。重要なのはそこじゃねぇ。それをこの一撃で分からせてやるよ。


 「そのクセェ口で、レミアの姉さんを語ってんじゃねー!! 護り切ったさ、姉さんはよ。今はちと、都合が悪くてな。変わりに俺達が相手してやるよ。護ると決めた女の子は絶対に護り通す。それが、魔王だろうが、神であろうとな。死ぬ準備は出来てんだろぉーなぁー!!」


 ーーブンッ!!


 俺は口から血を吹きながらも、レミアの悲しみの全てを諸刃の剣に乗せ、その斬撃により魔王ごと大地を粉砕した。勿論、この程度で死なれちゃ困るけどな。


 人の業の恐ろしさなんて、このクソ魔王には理解出来ないんだろうけど、分からないなら分からないままでいいさ。俺は、レミアやレミアの姉さんの為に、黙って魔王を殺すだけだから。


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