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第23話『呪いの勇者は、聖堂教会を相手取る』


 「カケルさん本当に来るのでしょうか?」


 「恐らくな。みんなは、不審人物が現れたらしっかり教えてくれよ」


 アクアとの密会を終わらせてエリクシア達と合流し、リッチー村の監視を始めていた。予想通りなら今日辺りにでも、聖堂教会がこの村に死体でも置いていくんだろう。


 そんなことさせるかよ。尻尾掴んで迎撃してやるさ。変に村を掻き回す野郎には、しっかりと制裁を加えてニーナの冤罪を晴らしてやらないといけないんだから。


 俺達は死体がよく上がるポイントを厳重に巡回し、異変が無いか隈無く探すが、これといって状況は何も変わらなかった。


 根比べになってしまうのだろうか。もしかしたら予想を全くと言っていい程、外してしまっているんだろうか。焦りが段々増していく。


 「カケル様、これを見て下さい!」


 茂みに入っていた俺とエリクシア達は、アリアドネに案内され地面に落ちている物を拾い上げる。何やら布の繊維のようだ。小枝に引っかかってしまったのかもしれんな。だけど、妙な違和感が俺を襲っていた。


 土地勘がある村のリッチーがこんな茂みにわざわざ入るんだろうか。もっと楽で良い道ぐらい、知っていてもおかしくない。


 もう一つの違和感は、この繊維である。この素材は果たして何だろうか。紅色でキラキラしているそれを確かめる為に、俺は触って確認した。


 「痛って! なんだこれ!? ただの繊維じゃないぞ」


 「やはりそうでしたか。カケル様、この繊維は聖堂教会のローブに使われている素材によく似ています。もうこの辺に、来ているのかもしれませんね」


 俺の予想は、的中していたようで安心した。誰も来なかったらどうしようかと思ったぜ。ようやく、追い詰めるだけのピースが全て揃ったんだ。絶対に見つけ出してやる。


 ここから一番近い、死体遺棄ポイントに向かい様子を確認する。陰で待機していると、聖堂教会の奴ら複数人は姿を現していた。やはりその付近には、死体が用意されていた。


 ここまで来ればもう充分だ。しっかりと、聖堂教会の奴らの言い訳でも聞こうじゃないか。


 「死体はこれで最後か?」


 「あぁ、さっさと内部抗争してくれないと俺らの仕事が増えちまうよ。怠いよなぁ」

 

 「ーーへぇ。内部抗争が狙いだったんだな」


 「だ、誰だお前!?」


 「はーい、通りすがりの勇者でーす!」


 自分達の存在でバレてしまったのがそんなに不味いのか、一目散に逃げ始める教会の者は、転送魔法陣を展開しており逃げるつもりだ。


 ーー逃す訳ねぇだろタコ助! 絶対に仕留めてやる!


 「マリエル、詠唱開始!」


 「はい! スロー・ギアクル!」


 今回ばかりは、雑魚共の行動を制限させる方が早そうだ。教会の者らに俺が触れると死んでしまうリスクがあるので、アリアドネに拘束を任せる。


 ロープで縛りつけた後、奴らを睨みつけ尋問することにした。どうせ大したこと吐かねぇんだろうけど、一応聞くしかないよな。


 「離せ! 勇者が何故この様な事をする!」


 「ふざけんなよ馬鹿野郎共。何が楽しくてこの村にちょっかいかけてんだよ。停戦協定を結んでるんだろ? リッチー達がそんなに邪魔か?」

 

 「何を申すか! リッチーは我らの敵。そこにいるシスターだって知っているだろう。手が出せぬのなら自滅してくれた方が手っ取り早いんだよ!」


 「へぇ。ならお前らを殺すしかないな」


 「我々にたてつく気か!? あの方に殺されるぞ!」


 「あの方? 誰だよそれ、親玉か?」


 案の定大した事は、聞けなかったがどうやら親玉がいるらしい。そいつは、今どこにいるのか分からないが、先ずはこいつらをどう処分してやろうか迷う所である。迷っていると、後方から何者かの声がして俺達は絶句した。


 「ーー我が信者達を離してはくれぬか、イレギュラー」


 「お前、どこから現れた!?」


 親玉なんだろうか。俺やアリアドネに気配を悟られずに現れたアイツはきっと只者ではない。けれど、アリアドネは奴の顔を見るなり身体を震わせ恐怖している。


 明らかに顔見知りなんだろうな。一体、奴は何者だ!


 俺とエリクシア、マリエルはその場で凍りついてしまった。


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