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【最終章】第1話『カヤモリ・アキ』


 「いいですかカケルさん。もうそれ程の猶予は残されていないのかもしれないんです。このままじゃ、本当に魔王侵略が始まってしまいかねません……」


 「だから分かったって! アクアが心配すんのも分かるけどよ、ちょっとは俺達のことを信用してもいいんじゃない?」


 「……すみません。先走り過ぎですよね。もしもの時は頼みましたよ? エルムーアの英雄さん」


 小っ恥ずかしいこと言ってくれるじゃねぇーの。


 信用してなくて言っている訳じゃ決してない。


 アクア達にとっては、このエルムーアの脅威に不安を隠せないのも事実。


 そんな気持ちだってあるだろう。


 その不安ごと俺が引き受けてやるさ。もう誰も悲しむ人が出ないように、俺は魔王を殺すと誓ったのだから。


 ある程度アクアをなだめて、そろそろお話しもお開きにしようとしていた所、マリエルが何かの違和感に気づき俺の元まで駆けつけた。


 「カケルさん、外に誰かいますよ。んー、あれは美人さんです! 尋ねて来たのでしょうか?」


 「いやいや、どうせお助け稼業の噂を聞いて来た奴だろ。構ってる暇なんかないぞ。追い返してくれ」


 「……なんか、肩をブンブン振り回しだしたのですが!?」


 「もう何だよいちいち……。殴ったところで屋敷の門は開かない……」


 ーーズゴォォォォン!!


 何かが壊れる音がした。


 そんなことありますか?


 人間のすることじゃねぇー!


 敵襲前提で戦闘準備をして、屋敷の階段を上がる謎の人物を待ち構えることにした。


 魔王の側近か?


 果たして、未知なる敵か……。


 緊張感を感じながら、この緊急事態に備えることとなる。だが、その不安はヒスイが綺麗サッパリ取り除いてくれたんだ。


 「この反応……何処かで!?」


 「何か知ってるのヒスイちゃん。ゴリラの様な魔獣が迫ってくる様にしか感じないけど……」


 「これは……マスターです!」


 「えっ、マスター!?」


 ーーギィィィィ……。


 ゆっくりと、俺達のいる大広間の扉が開く。


 そこにいた人物は、とても懐かしく、死んだとさえ思っていた、かつての恩人の姿をした、とても美人な先輩の姿だった。


 「よっ! カケル、元気にしてたか?」


 「ーーせっ……先輩!?」


 「何度も呼んだのに何で降りて来なかったんだよ。待ちきれなくてドアを壊してしまったぞ」


 「引けば開くので勝手に壊さないで下さい。このメスゴリラ」


 「……久しぶりの再会だというのに、どうやら死にたいらしいな」


 「いや、それは勘弁だが……。ヒュンレイに殺された筈じゃ……。さては、幽霊!?」


 「ざんねぇーん。生きてましたー。私があんなハゲに殺される訳ないだろ?」


 一同、驚愕である。


 俺やヒスイは初対面じゃないからまだ何とか耐えられるがその他、特にマリエルのSAN値はゴリっと削れて泡を吹き倒れる。


 幽霊、苦手だったもんな。


 しかも怪力ともあれば、誰しもが先輩を人だと認識するのが難しかろう。それ程までにカヤモリ・アキって奴は脳筋だった。


 あんな華奢な腕だってのによ。


 どこにそんな力を蓄えているのやら……。


 そうだとしても、久しぶりの再会だ。


 素直に喜ぶとしよう。


 「先輩……。俺、頑張ったんすよ……。どんだけ泣きそうになったか分かりません。俺、今はこんなにも仲間がいるんです……」


 心が完全に吹っ切れてしまった。


 仲間からは追放され、行く宛も無く彷徨い、エリクシアと出会って今があること。


 言葉になってた、なんてのは知らねー。


 先輩に泣きつき、まるでガキが喚くように俺の成長振りを必死に伝え、ただただこれまでのことを語り尽くす。


 「成長したなカケル。こんなに立派な男になったとは思わなかったよ。どうだいヒスイ、この男は頼れる男だったろ?」


 「勿論、最高にかっこいい殿方でございましたよカヤモリ様。生きておられて本当に良かった……」


 「ところで何だが……。どうしてお前は私の胸を鷲掴みにして泣きじゃくっているんだ?」


 「……あっ」


 ーームニッ……。


 たわわで豊満な……。


 けしからん先輩の胸を俺はどうやら揉んでいたらしい。


 他意はない。


 強いていうなら、弾みでそうなっただけ。


 これは事故だ、不可抗力だ!


 俺はそう心に言い聞かせていたが、そんなものなど意味が無いって悟ってしまったよ。ほら、見てみろ。俺のせいで怒り狂う少女達の姿をな。


 ーーこりゃ、詰んだな。


 今回は、手のひらでのビンタじゃない。

 

 皆が皆、拳を掲げて僕に襲いかかろうとしているじゃ無いですか。せっかくの感動の再会は、マリエルらの鉄拳制裁により幕を上げることになりましたとさ。


 ーーゴンッ!!


 頭部に強い打撃を受けて、俺は暫くぶっ倒れることとなる。


 「カケル、この人があのカヤモリ・アキさんなの?」


 「あぁ、間違いない。俺の恩人なんだ。エリィも仲良くしてやってくれないか? 凄く面倒味も良いしな……。おせっかいが過ぎるけど……」


 「あぁ? なんか言ったかおっぱい小僧! まぁいいよ。今日は目的があって来たんだ」


 「目的……ですか?」


 「私はな、カケルに会いたかったのもあるが、それとは別にサンダーボルトの設計図を始末する方法を教える為に来たんだよ」


 世界を滅ぼせる兵器の設計図を魔王と俺、双方一つずつ持っている。何とか処分を試みた訳だが、俺達じゃとてもじゃないが無理だったんだよ。


 処分の目処が立った。


 ーーその情報だけで、今の俺達にとってはまたと無い朗報だった。

お読みいただき、ありがとうございました!

最終章【諸刃ノ剣】編 始まります。


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