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第113話『呪いの勇者と魔王進軍の影』


 「カケルさん。トロール撃破おめでとうこざいます。ところで……今日はえらくエリクシアさんとベタついているのですね」


 「まぁ……あれだ。色々あったんだ。察してくれ」


 「なるほど、変態に磨きがかかったのですね。いっぺん死んでおきますか?」


 「アクアさん!? 当たりが強くないっすかね? ちゃんとギルドの依頼はこなしたじゃないっすか!」


 エルムーアに帰還後、俺はギルドに討伐報告をした訳なんだが……。


 何でそんなに怒ってるのアクアさん?


 別に悪いことしてねぇーじゃねぇか。


 これまで以上に、エリクシアとの絆も深めることが出来た素晴らしい日だってのにさ。謎に拗ねらると、俺だって落ち込んじまうよ。


 今回、エルフの宝剣事件は、エリクシアが誘拐されたから俺達が総出を上げて討伐したけれど、実際は誘拐なんてなければわざわざ俺達じゃなくても討伐出来る内容だった。


 この説明は、ちゃんとしてくれるんだよな……。


 この事件の裏に、何かあるって俺は思っているよ。


 「カケルさん、屋敷でお話ししましょう。話したいことがあります」


 「……大事な話しか?」


 「割と大事な話しです。エルフ族を裏でたぶらかした連中がいるとだけ言っておきますね。続きは屋敷で……」


 謎を仄めかすアクアは、仕事で呼ばれたのか俺の前から言葉を残して去って行った。


 まぁ、あれだ。


 エルフ族を裏で操っていた人物がいたのは間違いない。


 俺達は現場にいたんだ。


 何者かまでは掴めていないけれど、アクアの話しでようやく現実味を帯びた。


 急いで屋敷に戻り、俺達はアクアが訪れるのを待つことにしよう。


 「マスター、お疲れ様でございます。無事に帰還出来たのですね」


 「おうヒスイ、大変だったぜ。大切なエリィを取り返したと思ったら、馬鹿デカいトロールが現れてよ……。宝剣の封印ってすげぇんだなって痛感したわ……」


 ヒスイに愚痴を聞いて貰っていると、マリエルやらブレッドが久しぶりの屋敷だけあって浮かれていやがった。


 戦闘後だからな、マリエルに関しては魔力を一番消費する訳で疲れているはずなのに、どこから遊ぶエネルギーを持って来ているのだろう。


 よく分かんねぇよな……魔女っ子恐るべし。


 「カケルさん、来ましたよー! アクアさんです」


 「屋敷に入れて貰えー。俺はエリィとヒスイに話しがあって忙しいんだー」


 「へぇ……。セクハラの間違いじゃないんですか?」


 屋敷に入れて数秒しか経っていないはずだ。


 背後にドス黒い何かが俺を襲おうとしていた。


 背筋は凍りつき、恐怖心を押さえ付けて後ろを振り返ると……。


 にっこりと表情を崩さぬ、アクアの姿がそこにあった。


 「カケルさん。何とお話ししていたのですか?」


 「な、何って……。違う、これは頼まれたんだ」


 「そうでございますアクア様。最近、下着を買いましてマスターに気に入ってくれるかなと確認をしていてもらっていました」


 「へぇ……。頼まれたからって、女の子のスカートを覗くなんて普通しませんけどね?」


 おかしいな、俺はやましい気持ちで覗いていた訳では断じてない。ちょーと、確認をしていただけですよ?


 それをまるで、犯罪者を見るような眼で俺を蔑むなんざお門違いってもんだ。


 誤解を解かなければ……殺される!


 「カケル………それはダメだと思うの……」


 「エリィまで!? さっきはノリノリだったじゃねーか! 嵌めたのか!?」


 「カケルさん、味方がいないようですね。思い残す言葉はございませんか?」


 「ーーパンティは……黒かった」


 ーーバチンッ!!


 マリエルのビンタとは、一味も二味も違った。


 しなる様な鞭の痛み、決して弱くなく、頬が腫れ上がる程の凄まじい平手打ちに俺の脳は揺れたのである。


 暫く、痛みでもがいていたんだけど、緊急の話しをしに来たアクアのことを俺は思い出し、意識を覚醒させる。


 さらば、我が青春の光景。


 気持ちを切り替えて、俺は今回の議題でもあるエルフの宝剣事件について話し合いを開始した。


 「全く……事件が解決したからって気が緩み過ぎじゃありませんか?」


 「はい……全くその通りでございます。お許し下さい……」


 「アクア様、カケル様が変態なのは知っておいででしょう? 今更過ぎますわよ」


 「アリアさん、味方するなら殴られる前にして頂けませんか……」


 「はいはい、そうですね。カケルさんは元から変態さんでしたね! ところで本題になるんですが、あのエルフの里に宝剣事件の前、魔王が訪問していたらしいんです」


 「……なるほど、魔王がねぇ。ありえそうだな。俺達メンバーを殺すつもりだったのかも知れねぇ」


 その情報の裏を取る必要は無さそうだ。


 ギルドが総力を上げて手に入れた情報だろう。


 万に一つも違いは無いはずだ。


 なんなら、こんな情報は極秘にしなけりゃいけない案件だろうし、情報が漏洩して魔王側に有利な状況を作ってしまう可能性がある。


 それでも、話してくれたのは……。


 俺に魔王を倒させる為だろう。


 遂に動き出したのかもしれないな。


 「気をつけて下さいね。最近、魔王軍の動きがこれまで以上に活発化しています。もしかしたら、進軍はもう少しなのかも……」


 「構いやしねぇよ。その時が来たら俺は魔王を……いや、冴島を殺すのはこの俺だ。エルムーアは俺達が必ず護ってやるよ。心配すんな」


 ーー次会う時は必ず殺す。


 ーーその約束が、今度こそ果たされるのかもしれない。


お読みいただき、ありがとうございました!

【エルフの宝剣】編 完結しました。

 次回 最終章 【諸刃ノ剣】編 始まります。

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