第112話『呪いの勇者と遅効性の毒』
「かぁ〜! スッキリした。これで全部終わったよ。エリィ、怪我は無いか?」
「無いに決まってるじゃない。私の王子様が全部救っていったのだから……。私のわがままを聞いてくれてありがとうカケル」
エリクシアに素敵な笑顔見せられたら、これ程誇れることなんてないよな。やってやったと、したり顔する他ない。
これでアクアからの依頼でもある宝剣については、クリアしたも同然だが俺には気になっていることがある。
ーーあの手紙だ。
さようならと置き手紙で姿を消したエリクシアだけど、まだ事実確認が出来ていない。
俺、振られちゃうの!?
いや、きっと違うはずだ。
そう思いながらも、恐る恐る手紙の件に触れざるを得ないのも事実。意を決して俺は口を開くことにした。
「やっぱり……俺じゃ嫌だったか?」
「!? 何のこと?」
「そうじゃろうて。主人様はやはり妾とじゃなきゃ釣り合わぬ」
「テメェはうるせぇよブレッド! トロールの死体でも食ってやがれ!」
飛んだじゃじゃ馬ならぬ、じゃじゃ竜に横槍を入れられて不機嫌になるブレッドだけど、そんなものは知ったこっちゃない。
放置してれば勝手に興奮してしまう生物だからな。その変態性を見込んでシカトしておこう。
そんなことはどうでも良いのだ。
気になっているのは、エリクシアのリアクションである。
その反応は、どういうつもりなんだろうか。知ってるけどシラを通してるフリなのがそれとも……。
考えが深すぎるのが浅いのか、判断が出来ない程に俺は、冷や汗を流してしまっているのが肌で伝わってしまった。
「手紙って……。それはいつ見たの?」
「エリクシアが居なくなって今日で捜索は二日経ってるな」
「その二日前の早朝にエルフ族の村長に誘拐されたから、その手紙は私が書いた物じゃないよ?」
「なん……だと……!?」
エリクシアの言葉で冷静になれたよ。
言われてみればそうだよな。エリクシアが俺のことをカケル何て言わずに、呪いの勇者なんて呼ぶはずがない。
仲間内で、そういう言い方をしたことがなかったのを思い返して安堵する僕がいました。
嫌われて逃げられたと思ってましたからね。内心ヒヤヒヤものですよ。涙ちょちょ切れそうだったぜ。
俺は全てを感じ違いしたまま、このクエストに挑んでいたらしい。安心して口をぽかぁーんとしているのが、自分でも分かるくらいだ。
「何だそういうことだったのね。カケルにそんな手紙を書く訳ないじゃない。どうせ書くなら、もっと相応しい愛を込めた……」
「あぁ、そうだよな。僕分かってたもんね。エリィがそんな手紙を書く訳ないってさ。いや、全っ然ショック受けたとかそんなことないからね? いっちょ、迎え行ってやるか? みたいな?」
「ーーカケル、膝を震わせながら言うセリフじゃないと思うけど……」
「ま、まぁあれだ。エルフの里は壊滅してしまったな。多少の生き残りはいるのかもしれないが、せっかくの故郷をこんな風にしてしまって済まなかった」
「いいんだよ。私の存在が気に入らない連中は沢山いるし消し去ってやりたいって思うのも理解出来る。でも、私には私って存在を理解してくれている存在がいるからね。誓ったじゃない? 私はカケルと一生を添い遂げるってね」
こんな熱烈に愛されちゃ、世話ねぇよな。何なら俺が愛したいって言うのによ。
これだけは思ってんだ。
仲間は大事だが、その中でも特別であり最愛してるのはエリクシアなんだよ。俺の何の付加価値もない人生だがな、そんな俺の人生預けてんだ。
エリクシアはどうかなんて別にいいんだよ。要らなくなったら捨ててくれて構わない。それほどまでに、俺はエリクシアを愛している。
俺はエリクシアと共に居たい。エリクシアと関わりを持っていたい。それは彼女も思っていてくれているだろう。
ならば、俺がしなきゃいけないことはただ一つ。
その行動に全てを懸けろ。
「ちょ……// ンッ// 舌……入って……」
されてばかりのキスだが、今回だって俺から求めていく。
愛が伝わるように。
優しく、優しく。
エリクシアが照れ臭くなって、軽く俺を突き飛ばしたところで、今日のキスはおしまいとなった。
「ちょっとカケル、みんな見てるじゃない。固まって動いてないんだけど?」
「あー、こりゃいかんな。マリエルに後でぶっ飛ばされそうだ。まぁ、何だ。エリィ、愛してるよ」
うっわ、何これ恥ずかしいんですけど。
やっぱ柄にもないことはするもんじゃねぇーや。
あまりこういう告白に慣れている訳でもないし、正解かどうかなんて知るよしもないがこれで良かったんじゃないかと思うんだ。
ーーエリクシアの遅効性の毒に俺は侵されていた。言い訳はその辺ぐらいにしといておこう。
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