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第110話『呪いの勇者と宝剣に流れた鮮血』


 「主人様、あの古小屋にエリクシアの匂いがするぞ! 入ってみるか?」


 「ブレットが言うなら間違いないよな……。敵の警戒をして慎重に侵入するぞ」


 残党に遭遇することなく、エリクシアの所在を突き止めただろう俺達だけど、どうもこの状況に俺は納得出来ていない。


 偽村長を撃破したことで残党共の勢力は増すはずだと思ったんだけどな。きっと、見当違いだったのだ。


 サクッとエリクシアを救出して、こんな村出て行ってやるとしよう。追放され落ちぶれたり俺と、毒を生成する特異体質のハーフエルフの出会いの場ではあるが、同時にこんなクソみたいな村なんか居たくもない場所なんだから。


 俺は意を決して、古小屋の戸を開ける。


 ーーギィィー……。


 そこには、口を塞ぎ、目隠しと、両手両足を縛られて拘束されるエリクシアの姿があったんだ。やっとの再会で舞い上がりたい気分を抑えて、俺は体調に異変が無いか直ぐにでも駆け寄ったんだ。


 「エリィー! 怪我は無いか!」


 「……ん!? んー!」


 「今解くからちょっと待ってくれ」


 拘束を解き、エリクシアの無事が確認出来た。傷一つでもついてたら、このエルフの村を滅ぼしてるところだったぜ。


 事情はとりあえず、屋敷に帰ってからゆっくりとエリクシアに聞くとして、ここから一刻も早く立ち去ろう。


 偽村長の持つ宝剣の破壊も済んだことだし、長居する必要も勿論ないんだ。またメンドーに振り回されるのもごめんだね。


 早々とブレットに帰りの足を任せようとすると、エリクシアが俺達を引き止めるようにして、尚且つ聞き捨てならない言葉を残した。


 「カケル、宝剣は一本じゃない!」


 「……え? マジ……!?」


 「ーーそうですとも呪いの勇者。宝剣は一本ではない、二本で一つの短剣なんですよ」


 「何でテメェが生きてるだクソ村長!」


 タイミングを見計らい、俺達の前に現れた俺のよく知る人物。いや、エリクシアも良く知っている。


 奴は紛れもなく、偽村長だ。俺が始末した偽村長そっくりだったけど、俺はそれを否定したい。


 これは偽村長の思惑であり、村長と偽りエリクシアを誘拐紛いのことをした。そうあって欲しかったんだ。


 否定したいが、否定出来る要素が何一つとねぇ。偽村長は俺が始末したんだ。生き返るはずもねぇし、不死身って訳でもなさそうだ。


 ーー考えられることは、その一つ以外ありえねぇ。


 「テメェが、この件の首謀者だったのかよエルフの村長さん。グルだったって訳かい?」


 「ご名答、さすがは呪いの勇者だ。このエルフの村を犠牲にしてでもその厄災を振り撒くハーフエルフは生贄と言う名の処刑をしなければならなかった」


 「お前、まだ俺達に逆恨みでもしてんの? エルフのメンツ潰して悪かったな。なんて言うと思うか? 何度も言わせるな、テメェらごときが、うちのエリィを泣かしたり、殺していい理由なんか、何一つ有りはしねぇんだよ!」


 「こちらも何度も言わせて貰う。一族の恥だからな、村一丸となってエリクシアを殺す計画を立てていたんだよ。我々は遂に見つけたのだ。エルフを殺せる魔人の力をなぁ!」


 先程見た、青い鞘の短剣ではなく、今回は赤い鞘の短剣。


 これが、二本目の宝剣であることなんか重々承知だ。だったらどうするか。答えは簡単だ。


 それほどまでにエリクシアが憎いか、嫌悪の対象にしやがってよ。こんな頭がおかしいとしか思えない細工までしやがって、俺達の前には抹殺は愚か、手を出すことすら通用しない。


 「テメェの首、打ち取ってやらぁー!」


 ーーグサッ……。


 村長が何をしているのかが、俺には理解出来なかったんだ。


 エルフ族の村長は、自らの首に赤の短剣を突き刺し掻っ切った。俺にはそうとしか映らなかって訳で……。


 端的には、自殺にしか見えなかったんだ。


 「ーーうぁぁぁぁ!!」


 雄叫びをした村長は、その場で大量出血により絶命しやがった。全く、何がしたかったのかサッパリだぜ。


 理解に苦しむが、戦闘の手間がなくなって助かったと思ったのも束の間、この異変にブレッドがいち早く勘づいた。


 「あの短剣から獣の匂いがする。危険じゃ主人様、何かが起こるぞ!」


 「大変て言ったって今更どうにもならんだろ! 逃げ場なんかないんだぞ!」

 

 ーーパキンッ!


 紅き血染めのその短剣は、亀裂を走らせ砕け散り、その姿を化け物へと変化させている。


 これは、あれか。


 封印が解かれたって奴なのか?


 頼みの綱のエリクシアも奪還され、魔獣トロールを顕現させる計画が潰されたことで村長がヤケでも起こしたんだろう。


 というか、そうとしか考えられん。


 自分の命を賭すことで、魔獣トロールの顕現に成功させてしまうなんてどんだけの執念なんだよ。


 少なくとも村長は、俺を呪いの勇者と呼んだんだ。俺達の活躍を何処かで聞いていたんだろう。そこで、一族の恥晒しと思われるエリクシアの動向もチェックしていたんだろうな。


 俺達のことが、よっぽど憎かったらしいな。今となっては、どうでも良いことだけれどね。


 「ーーグギァァァァ!」


 「凄まじい咆哮だな。巨人って言っても差し支えないん、じゃないか? あれがゴブリンと同種族だなんて微塵も思えないよ……」


 「大丈夫だよカケル。迷惑かけた分は私がフォローするから。あの魔物を討伐しよう」


 そう、だったよな。


 俺達は挫けない。


 エリクシアと共に誓ったもの、俺と俺達が信じたものを護り抜く。魔獣トロールの顕現はかなり厄介だけど関係ねぇー!


 ーーエリクシアの闘志を受け取り、俺は仲間と共に諸刃の剣をトロールに向けて、完全討伐する決意を固めた。


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