第106話『呪いの勇者とエルフの宝剣』
「ほーれ、マリエルのパンツじゃぞー!」
「ブレッド! 私のパンツを振り回すなぁー!」
ヒスイの一件以来、今日も僕達は屋敷で平和に暮らしています。
マリエルの下着は、とても美しいですね。どこで、あんなエロいパンツを入手しているのでしょう。
メイドであるヒスイの淹れてくれたお茶を優雅に飲みながら、俺はほくそ笑み、宙に舞うパンツを眺めていましたとさ。
下着は立派なんだがな、何故胸は成長しなかったのだろう。
最愛のエリクシアは除くが、比較的に皆んなはスタイルは中々のものである。特にアリアドネ、あれは人を悩殺するボディだ。
豊満でエロい体だと言うのに、それでいて引き締まっている所はしっかりとしている。理想の女性と言うには、まさにアリアドネがピッタリだと俺も思う。
だけど、そんな話ししてたら間違いなく俺は、マリエルから悩殺ならぬ撲殺をされてしまいかねん。ただ黙って、ブレッドとマリエルのやり取りを眺めていることにした。
「そういや、エリィを見かねないけど何処に行ったんだ? もう昼だって言うのに、まだ寝ているんだろうか」
「そんな訳無いでしょうカケルさん。エリクシアは誰よりも早起き何ですよ? いつもの特等席に居ないっていうのはおかしいですね」
「ますます分からないな。事件に巻き込まれてなければいいけど……」
「カケルさんが、嫌らしい目つきでエリクシアを視姦したから、愛想を尽かして出て行ったのじゃないですか?」
「そんな訳ねぇーだろ! 俺は視姦なんて一度だってしちゃいない。俺とエリィはなぁ、強く硬い絆で結ばれてるんだぞ? 出て行くなんてことあるか!」
俺の人生において、視姦したなどといった犯罪は決して、してはいないのである。アリアドネの胸をガン見してたとか、マリエルのパンツを見てたとか、そんなことは有り得ないのです。
何故、胸を隠すんだアリアドネ。
マリエルのことを信じないでね!
僕は、変態じゃない!
だけれども、このエリクシアのいない原因について、全くと言っていいほどに、心当たりが無いのである。ただのお出掛けなら良いのだけれどね。
親心にも似た不安を抱えていると、マリエルがエリクシアの特等席で、何やら妙な物を拾ったらしい。これが事件の発端になったんだ。
その不安は、俺を絶望へと叩きつけたのである。
「手紙……ですね。エリクシアのでしょうか?」
「そうか、マリエル。読んでみてくれ」
『呪いの勇者には、もうついていけません。これでお別れです。さようなら』
ーーえ? 俺、捨てられたの!?
どうしてなんだ、どうしてエリクシアが出て行ったんだ!
さっき、絆がどうとか言ったじゃねぇーか!
絆どころか、見えない傷と心の溝を作っちゃったんですけどぉー!
「エリクシアぁー!」
ただ、獣のように俺は叫び、心を折ってしまいそうだったけど、空気も読まずギルド受付嬢アクアが、我が屋敷に訪問に来ていた。
「カケルさん、クエストを持ってきたんですが……!? なんで大の男が、子供のように膝を抱えて泣きじゃくってるのです?」
「帰れよ、それどころじゃないんだ。エリクシアが出ていったんだよぉー!」
元からクエストなんてモチベーションも皆無なのに、こんな状況でやってられる訳ないじゃないか。ちょっと可愛いからって、無理難題を押し付けるのもどうかと思いますけどね。
即刻、帰って頂こう。
最愛の女性に捨てられた後なんだ。そっとして欲しいし、変に慰められたら俺は惨めになってしまう。
帰らせようと思ったんだが、エリクシアが出て行ったと聞くと顔を豹変させていた。分かってるよ、俺が悪いって責めるつもりなのだろう。
だけど、本当に心当たりがないんだ!
信じて下さい、アクア様!
「エリクシアさんが出て行った……。この話し、繋がっているのかも知れない」
「まさか、アクアはエリクシアの失踪について、何か知ってるのか?」
「関係あるかは、分かりません。でも、エリクシアさんはハーフエルフでしょ? 今回持って来たクエストに、関係があるのかもしれません」
エルフにまつわるクエストってまた、何か厄介事に違いない。でも、エリクシアを捜索するヒントになればと思い、その話しを俺は聞くしかなかったのだ。
「エルフの宝剣が顕現してしまいました。カケルさん達はこれを破壊、もしくはギルドに提出して貰います。勿論、拒否権はありませんよ。これは緊急クエストですからね」
宝剣って名前だし、さほど危険性は無さそうだと思うんだけどな。緊急クエストっていったら、死ぬリスクも伴う難易度なんだとか。
それで、俺を指名してくるなんてよっぽどのことらしい。
理由ぐらいは、聞いてやってもいいかな。ヒントだけ貰って今の話しはなかったことにしておこう。
「エルフの宝剣は、とある魔獣を封印した剣なんです」
「とある魔獣って? 顕現したってことは、その宝剣はいきなり現れたってのかよ」
「魔獣トロール、エルフを喰らうエルフの天敵です。そうですよ、宝剣は封印された後、正しく処分されました。ですが、再度、形を成してエルフの里に顕現しました。原因は不明です」
なるほどね、その宝剣を正しく処分しないといけない訳か。
出来なきゃ、封印が剥がれた時、エルフという種族は滅ぶ事になってしまう。めちゃくちゃ、危ないクエストじゃねぇーか。
まさか、エリクシアは、その宝剣を封印する為に出て行ったのだろうか。故郷ではあるだろうが、いい思い出なんて無いだろうに。
無茶しやがって……。
エリクシアは、本当に優しい女の子だな。相談ぐらいしてくれたって良かったのにさ。
とりあえず、俺達の目的はハッキリした。
ーー俺とエリクシアの始まりの地、エルフの里に行き、エリクシアを奪還して、その宝剣とやらを破壊してやるさ。
お読みいただき、ありがとうございました!
【エルフの宝剣】編 始まります。
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