第104話『呪いの勇者と翡翠色の誓い』
「マスター、私と二人きりでお出掛けをしては頂けませんか?」
「何ですかそれは、それってデー……」
「違うわボケェー!」
ーーバチンッ!!
何だよ、期待させやがって。一瞬だけ舞い上がった俺の気持ちも考えやがれってんだよ。ですよね、そんな甘い話しがあるかってんだよ。
でも、一体二人きりだなんて、そんなに行きたいところでもあるんだろうか。
たった一つのあり得ない奇跡を起こしたことにより、ヒスイの生還も喜ばしい頃、今では屋敷でメイドとして日々精進しています。
たまの我がままぐらい付き合ってやらないと、きっとマリエルやエリクシアにドヤされてしまいかねん。
本当は、デートがしたいのですよ?
二人で出掛けることも、そうそうないことですし、人の感情にもっと触れさせてやりたいと思うんだ。変な下心を悟られては、マリエルのビンタが飛んでくる。
俺は、慎重にして、スマートに行動しなくてはならない。
「行きたい場所があるのです」
「行きたい場所とは?」
「ーーあの丘に行きたいのです」
あの丘って指す場所は、特別何かある訳でもなくて、目立つ物と言えば、一面に咲き誇る花園がある。そんな、変哲もない場所なのだ。
どういうことなんだヒスイよ。
もしかして俺、ヒスイに天へと召されるの!?
何かした覚えなんて、まるっきり皆無なんだけどよ。
これには、俺もデートだと浮かれた心が、疑心暗鬼の恐怖心へと豹変した瞬間なのであった。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「もしかして、何か卑猥なことを考えてはいませんか?」
「し、し、してる訳ねぇーだろ! 俺はいつでも冷静何だぜ?」
「マスター、挙動不審過ぎますよ。どうしたのですか?」
どうしたのと、聞かれてしまっては仕方がない。俺はてっきり、ヒスイに天に召されるのかとヒヤヒヤしていたんだがな。
何で、外行きのおめかしをしてやがるんだ!
不自然に露出が多いだよな。メイド服をあんなに気に入っていたじゃないか。どうして、胸元を空けているのかも、その割に清楚に見える服装をしていた。
なんていうか、ヒスイの魅力を全て引き出したかのようで俺はそれを可愛らしいと思ったんだよ。
こんなものは、完全にデートである。
「で、どうしてこの花園が良かったんだ?」
「マスターも知っていますよね。カヤモリ様は花がとても好きだったとね」
「そう……だったよな。先輩は、花をこの上なく愛していたのは知ってるぜ。まさか、それを見せる為にここへ来たのか?」
「そうですよ。ですが、それだけではありません」
花が好きってので何となくは、察しがついてしまったな。
花を大事にしている先輩が、自分で手入れするほどに愛していた花のことを俺は思い出す。
俺って奴は花に疎いからな。
名前までは分からない。
翡翠色の花。だから、マギア・ドールの彼女へ、俺はヒスイと無意識の内に、名付けてしまったのかも知れない。
先輩はそこまで見据えていたのかね……。全く、恐ろしい女性だよ。こんな可愛いらしい忘形見がいるってのによ。今の彼女を見たら、きっと度肝を抜く筈だ。
「この花園には、翡翠色の花が少し咲くらしいのです。するならここが良いと思ったのです」
するって何?
俺は一体、何されちゃうのぉー!
無駄に雰囲気も良い場所でそんなこと言ったら俺、期待してしまうじゃねーか。やめてよねヒスイさん。僕はウブなんだから本気にしてしまいますよ!?
「絶対にエロいことを考えていますよねマスター。そんなことはしませんよ。此処へは誓いに来たのですから」
拍子抜けしたよ。逆に良かった、心の準備が出来ていないところだったからな。変にどうようしてしまったよ。
それにしたって誓いとは、また洒落たことをするよな。互いにとっての特別な場所ってことかい。通りで、二人きりだなんて言い出す訳だ。
「この日、この場所だからこそ、私は私の意志でマスターに誓いを立てます。この命尽きるまで、皆さんと、そして、マスターの側に居させてください。私は、これからもマスター達が言う『愛』を知っていきたいのです!」
愛を知りたい。
いいや、ヒスイはもう分かっているんだぜ。
誰かに愛されていることも、ヒスイが俺やエリクシア達のことを愛していることだって知っているのだ。
あの涙は、偽物の涙なんかじゃ決してない。誰にもそう言わせねぇーし、俺がそう思いたいのさ。もう分かっている筈なんだけどな。ていうか、手放してたまるかってんだ!
もう二度と失いたくない、大切な存在にヒスイはもうなっている。俺が出すべき答えは、もう決まっているよ。
「もう、何処へも行かせねぇ。俺達の側にいろヒスイ! 愛がなんだ何てのは、人間にだって未知の領域なんだ。その分からないなりにも、俺はヒスイをもう二度と失いたくないと思っている。だから、俺も誓うよ。もう助けられてばかりじゃダメだもんな。必ず護るから、俺をマスターだと認めてくれないか?」
「約束しましたよマスター。約束を護れたらその時は私の胸を触る権利を差し上げましょう」
「なるほどな、俄然やる気が出てきたわ。いつかその胸、揉みしだいてやるよ」
「頑張ってくださいね。貴方は私のマスターなのですから」
花吹雪が舞う中で交わした約束の誓い。
感情の無い筈のドールが、人間と触れ合い、笑って泣いて、人を愛してみたり、愛されたり。
それって人形だとか、人間であるのかなんて、これっぽっちも関係が無かったのだ。ったく、護るもんが増え過ぎちまって、敵いやしねぇな。
ーー翡翠色に輝く一輪の花が、俺とヒスイの破れぬ誓いを祝福しているような気がしたのです。
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【魔導人形】編 完結です。
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