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第101話『呪いの勇者、精霊殺しと相見える』


 「責められないよ。責められる訳ないじゃない。私達にそんな資格ないんだから。約束、護ってくれてありがとうカケルくん」


 「何のことだったかな、パンツのことか? 俺は見ちゃいねぇよ、黒のレースのパンツなんか決して見ちゃいねぇ!」


 「ガッツリ見てるじゃないのよ! カケルくんサイテー!」


 正直に心配してたから、必ず助けたかったとか、照れ臭くて言えやしねぇんだ。ただの強がりで、はぐらかす事しか俺には出来ないから、妙なことを言ってしまう。


 本当に違うんだぞ? マリエルよ、そんなに睨んでくれるな。冗談でパンツ見に行くって言っただけなんです。まさか、本当に見えるだなんて思わなかったんだ!


 弁解しようにも僕のお仲間は、呆れ顔でして、言い訳など聞く耳を持つはずもありませんでした。


 「はぁ……。何が『背中は預けたぜ、相棒』ですか。あんなにカッコよかったに残念ですよ。変態の相棒になんか、なった覚えないですし、まさか背中を預けてくるなんて、恐怖すら抱いてしまいますね」


 「恥ずかしいだろ! 人のセリフ蒸し返すな! マリエルだって、相棒って言われてちょっと照れてたろうが! そこまで言われる筋合いなんかねぇぞ!」


 どうやら、ビンタはお預けらしい。ブン殴られなくて本当に良かった。いつも殴られ損してるからな。今日ぐらい無くったって、バチは当たらねぇーはずだ。


 綾香の殺される寸前で、智治の暴走を止めることが出来て本当に良かったよ。もし、殺されでもしていたら……。その先は、あまり考えたくなかった。


 マリエルとの痴話喧嘩もいよいよ落ち着きを取り戻した後、綾香に精霊殺しの所在について聞いておくことにした。聞いておかなくちゃ、前へは進めてねぇからな。


 影打ちでヒスイを殺される訳にもいかないし、知っておかねぇと対策を練るのだって難しくなる。さて、あのハゲはどこに消えたのか。面倒を増やしてないと良いけれど……。


 「研究の成果、その集大成の準備に出るって言っていたよ。ヒスイさんに関わることじゃないの?」


 「私もそう思います。私は、最終号機としてカヤモリ様に創られたドールですから、例えヒュンレイと言えど簡単に私の破壊など出来ないはずです」


 「より複雑で最高傑作って訳か。確かに精霊殺しでは破壊は難しそうだな。まさか、研究の集大成って……」


 「そう、創り出したのでしょうね。私を破壊破壊する道具とやらを」


 だろうな、としか言いようもない。ホント、イカれたサイエンティストだよ。智治に使った高純度ポーションとやらもそうだ。あれは、ポーションなんかじゃ絶対にない。


 命を代償にしたドーピング剤だったんだろう。どこまで、勇者達を馬鹿にすれば気が済むんだ。利用するだけして、ボロ雑巾のように捨てやがる。


 その薬を使った時点で、智治は恐らくもう助かることもなかったんだろうな。殺してやったのが、せめての救いになったのならそれで済ましておくか。


 「ーー探す必要などありませんよ呪いの勇者。私は舞い戻るのですかね。マギア・ドールの命、頂戴しましょうか」


 「カケル! 精霊殺しが現れたよ、気をつけて!」


 「来やがったなハゲ頭。眩しくて目立ってるじゃねぇか。アリア、ブレット! 構えておけよ、何しだすか分からねぇ!」


 「勿論じゃ、主人様。わらわはあやつが好かん! 消し炭にしてやろうぞ!」


 「嫌ですわブレットさん。私のコキュートスが存在ごと、消し去るに決まっているじゃないですか。抜け駆けはいけませんのよ?」

 

 噂をすれば何とやらだな。てか、恥ずかしくないんだろうか。太陽の照らす側で堂々と現れやがってよ。頭部が輝くに決まってんだろ。ハゲてる自覚がないんだろうか。


 追求するのも可哀想だし、とりあえずは精霊殺しの話しでも聞いてやることにした。お願いだから、日陰の方へ移動して欲しい。


 「消し炭ねぇ。私に手も足も出なかったじゃないですか。終いには逃走など、負け犬同然ではありませんか。あ、ついでに逃げた勇者を一人、殺しておきましたよ」


 「勇者ってまさか……」


 「そう、槍の勇者をも私は殺したのです!」


 「え? 誰だ、槍の勇者って」


 「一樹だよ! 忘れたの?」

 

 「ごめん、全く記憶無いっすわ」


 どうやら、槍の勇者をも手にかけたらしい。なんてことしやがる精霊殺しめ! 


 槍の勇者、山田を殺すなんてけしからん奴だ。決して忘れてなんかいないからな、絶対だ!


 だけどマズイよな。明らかに勇者を狙い撃ちにして、着実に殺すまでのルートを作ってやがる。このままじゃ、綾香や魔術師の桜だって殺されてかねん。


 そこまでして、勇者が憎いか、先輩が憎いか。マッドサイエンティストの考えることは、全く持って理解出来やしねぇ。


 わざわざ、一樹を殺したって言ってくること自体、何かヒスイを殺すトリガーになる準備をしていたと、考えざるを得ないだろう。


 やってやるさ。上等じゃねーの。テメェなんざの為にこれ以上、死人を増やさせる訳にはいかねぇからよ。そのくだらねぇ、集大成とやらを俺が打ち砕くぜ。


 ーーヒスイを護りたい。ただそれだけの為に、俺は諸刃の剣を振り上げる。血反吐吐こうが、どうしようが、それだけは譲れねぇ。


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