第100話『呪いの勇者と勇者の結末』
「カケルさん、綾香さんは私達に任せて盛大に暴れちゃって下さい! あの勇者は、許しちゃいけません!」
【スロー・ギアクル】
確かに、明からさまだな。あのピカピカ光るだけのしょうもないソードスキルだった筈なのに、こんな短時間で膨大な魔力を増幅させ、俺に襲いかかって来やがる。
進化ってより、ただの暴走だろうな。一体何だったんだ、高純度ポーションとやらはよ。妙な薬を盛られやがって、これじゃ智治も余り持ちそうもないな。
だけど、そんなんじゃ無理なんだよ。結局お前は、俺を超えてなんていけない。そんなことしたって、俺にはかすり傷一つ付きやしねぇんだから。
「遅せぇんだよ、そんなデタラメな魔法が俺に当たるかよぉー!」
「な、!? いつの間に背後を!?」
ーーブンッ!!
ーーバリィィンッ!!
智治のボディに、諸刃の剣の一撃が綺麗に決まった。だいぶ重たい一撃だったから、さぞ苦しかったろうぜ。諸刃の剣の代償により吐血を始める俺だったけど、智治の様子を見ると俺はド肝を冷やしちまった。
「砕けてんのか? 臨界装備のあの鎧が!?」
初めての事象だっただけあって、俺も困惑を隠せない。俺の諸刃の剣は、勇者の装備ですら破壊してしまう程の代物だったらしい。
なんかこう思うと、魔王顔負けのことだよな。若干引き攣ってしまったけど、今は殺し合いの最中だ。気を取り直して、戦闘の続きをしようと思う。
「カケル、キスしよっか?」
「あぁ、頼むよエリィ」
「……鎧を砕いたからって、いい気になるなよ」
「な、まだ息があったのか!?」
タフな野郎だな。可愛い女の子とキスしてっから嫉妬の余り、地獄から這い上がって来たみたいな、醜悪さを増したツラをしてやがる。
智治の体は、血管が膨張し、体が今にでも朽ちていきそうな程、酷い状態だ。執念だけは捨て切れずに、まだ立ちあがろうとしていたんだ。
「まだ、倒れる訳にはいかない! 俺にも信念があるんだ! 俺はお前をここで倒さなくちゃならないんだよぉー!」
「自分の仲間に手を掛けるような、汚ねぇお前の信念なんか捨てちまいやがれ! お前が綾香を殺していい理由なんかある訳ねぇーだろうが!」
「何度も言ったはずだ。邪魔なんだ、逆らう仲間もカケルだって……。俺の前に立ち塞がるなぁー!」
【ボルテック・ブレイド】
智治の剣に全ての雷が集約され、一つの大剣が出来上がっていた。また、トンデモねぇもん出しやがって。これが智治の奥の手って奴なんかね。
いいぜ、真っ向勝負といこうじゃねぇか。
俺は、これから悪鬼と化す。
邪を持って俺は、智治を完封することにしよう。
「くっ、カケルさん。準備いいですか? きっとこれでラストアタックです。気合い入れて向かって下さい」
「背中は預けたぜ、相棒。お前のデバフ、最大限に活かしてやるさ」
【スロー・ギアクル】
「カケルぅぅー!」
「ともはるぅぅー!」
ーーバキンッ!!
一瞬の刹那、一つの剣が砕けちり地面に放り出された。電気を帯びたその剣は、次第に放電を弱めて、ただの鉄屑となり、その役目を終えたんだ。
勇者の剣を粉砕した。残るは智治の体一つだが、待ってましたとニヤけズラをかまし、弱った俺に近寄り始める。まさか、武器まで捨て駒にして、俺の隙を狙いに来たって策なのかも知れないな。
「全部捨ててやるさ。お前に勝つならな」
「お前、まだ剣を隠してたんだな」
「辺り前だろ? お前は剣の呪いで、回復しなきゃ一撃しか剣を振れやしない。そこを最初から狙うつもりだったのさ。回復役の女もいねぇ、今が殺し時だ。死ね、カケル!」
分かってねぇな、つくづく馬鹿だと思うよ。俺がこれを想定していなかったと本気で思ってやがる。騙されてんだよ智治はな。
その印象を強める為に俺は、わざわざお前の前でエリクシアとキスしてたんだからよ。童貞には、ちと刺激が強かったみたいだぜ。
「回復出来ないって、思っているなんてとんだ間抜けだな。馬鹿過ぎるだろ、お前はしっかり見てたはずだろ?」
「ま、まさか!?」
「そう、まさかだよ」
ーーバリバリッ!!
ポーションの入ったガラス瓶を俺は口で噛み砕く。正直言って好きじゃねぇんだけどな。口の中は切れまくるし、鉛の味が俺を襲うんだ。
まぁ、我慢してやるさ。これで最後だしな。俺の奥の手、最後の一撃だ。跡形も無く、チリ一つ残さず殺してやるよ。
「マリエル! 新技だ!」
「やっと来ましたか。これまでとは一味違いますからね。カケルさん、もう迷わないで下さい! 全力を持ってクソ勇者にブチかませぇー!」
【フロート・ギアクル】
浮遊魔術のそれは、単なる物を浮かせるだけの誰でも出来るような基礎的なバフだ。だが、例外があってよ、俺にそれをするとどうなるかってのが重要だ。
その答えは……。
ーーズドォォォォン!!
「まさか、これは……。重力……!?」
「違うな、超重力だよ」
「あ……あ……。嗚呼ァァァァ!!」
メキメキと智治の体を潰していっているのが、音でもしっかりと分かる。骨が砕ける音、血が大量に流れ出る音、人体からは有り得ない程の音を奏でていた。
残虐過ぎる技だったから、使うのを躊躇っていたんだけどな。智治はやり過ぎたんだ。その清算をするのは、俺の役目であり、俺にしか出来ない事だろう。
綾香達には、荷が重すぎるから。
ーーブチッ!!
全てが潰れてる音を最後に、智治の叫びも、その亡骸も、跡形も無く消し去っていた。後悔は、少なくとも無い訳じゃない。ただ、これはケジメなんだ。
誰かがしなきゃいけないことだったし、いかに自分が甘かったのかってのも思い知らされた。
いつもそうじゃねぇか。
大切なもんは、失った時に初めて気づくもんだ。
失ってから取り戻そうったってそうはいかねぇ。
簡単に手のひらから、溢れ落ちてしまうから。
だからこそ、俺はこの智治に下した行為を後悔などしてはいけないのである。
「まさか、殺しちゃうなんて……」
「綾香、恨むなら恨んでもいいぜ。それだけの行為はしたつもりだ。殺したくなったらいつでも言ってくれ。俺は、そうされるだけの責任があるからな」
殺したのは、事実だ。それをどう捉えるかは、勇者達次第だろう。それだけの責任を最初から一人、背負うつもりで智治と対峙したのだから。
ーーこれが呪いの勇者と勇者の結末。誰に何と言われても構いやしねぇ。俺は、大切な仲間と共に前へ進み続ける。
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