第1話『呪いの勇者、パーティから追放される』
「悪いけどもう足で纏いはうんざりだ。明日でいいからパーティから出て行ってくれ!」
当然といえば当然だろう。異世界に召喚された俺ら五人の勇者パーティは、魔王を討伐する為に召喚された。
五人各々が召喚されるにあたって、召喚特典として武器やスキルを教会から施されることになる。
最強の剣とソードスキル、仲間を支援できる回復魔法など様々なスキルをみんな貰ってたけど、俺、天月 翔は最強の武器を教会で願った。
どうしてこうなったのかは分からない。分からないけど、俺は現実を受け入れるしか無いようで……。
ーー全身の装備が呪い武器だったんです。
呪いの影響か、装備を外すことも出来ず、歩いているだけで魔物が寄ってくる体質になってしまい、パーティメンバーからは煙たがられるだけの存在になっていました。
そうだとしても、いきなり出て行けと言われたら反発もしてしまう。
パーティリーダーの智治と暫く、言い争いになってしまった。
「いきなり出て行けなんてないだろ!」
「君は馬鹿なのか? 確かに君は強いよ。強いけど足で纏いだ。魔法使いの綾香がどれだけ回復魔法を使っても翔は呪いの装備の影響でダメージに変換されるじゃないか。敵は勝手に寄ってくるし最悪だ。正直、居るだけで迷惑だよ」
「はは。そうだよな。俺みたいな奴は消えた方が良さそうだ。今すぐにでも出て行くよ。今までお世話になりました」
呪いとは残念なものですね。自分の居場所や存在理由さえ、簡単に消し飛ばしてしまうのですから。
唇噛み締め、それ以上の言葉を交えることなく俺は勇者パーティから追放された。
♦︎♦︎♦︎♦︎
パーティリーダーから追放されて数日が経つ頃、俺は小さなハーフエルフが住む村に辿りついていた。
殺風景だけど平和そのもので子供や村人が賑わう中、この街の路地裏に嫌な違和感を覚え、恐る恐る足を運ぶことにした。
「ーー痛い! いたっ……。止めて……。下さい」
大人や中には子供のハーフエルフ達が、少女に寄ってたかって投石を繰り返し罵倒している。
酷い光景だ。額から血を流し打撲痕もある。銀髪で美しい容姿もしている娘は、傷や土汚れで無惨な姿になっていた。この仕打ちはあんまりだと、俺は村人達に割って入り少女を護ったのだが……。
「何しやがる! そいつは疫病神だ! 邪魔するな!」
「そうよ! あなただれ? その娘は危ないのよ。早く退きなさい!」
ーーヘイトは俺に向いていた。
本当に最悪だ。これも呪いの力ですかね。少しは落ち込むが、こんなのは俺の日常なんでそこまでは気にならない。
状況が分からない俺は、何故、彼女が危ないのか、疫病神なのかを問いただすと更に村人達が罵声を浴びせてきた。
「そいつは体から毒を出す。きっと悪魔の生まれ変わりなんだ! 村から追放しなければいかん!」
「そうよ! その娘は私達を毒殺する気なんだわ!」
心無い言葉に嫌気が刺し、俺は怒りを村人達に叩きつけた。
「黙れ! 結局まだこの少女は誰にも危害を加えてねぇんだろ。この娘を傷つけていい理由にはならなぇだろうが!」
精一杯の怒りをぶつけ、俺は彼女に駆け寄り怪我の介抱をする。意識がはっきりしておらず、その少女は俺に倒れ込むようにバランスを崩す。
俺も彼女の前でひざまずいていたので、庇う様に倒れ込んだのだが事件発生。
「ーーチュッ!」
「ん! ん!?」
倒れた衝撃で、まぁラッキースケベに該当するんだろうけど少女とキスをしてしまっていた。
|(こいつ、舌を絡めて来やがる!)
女性経験の無い俺にとって、ファーストキスであり興奮するものであったが、冷静になって村人の話しを思い出していた。
『そいつは体から毒を出す』
ーーあ、俺、死んだっす。
まぁ、キスしながら死ぬのも本望かと思い舌を絡ませていると俺の体に変化が起こった。
|(HPが回復してる!?)
呪いの影響か、回復薬は俺にとって毒であり服用を誤れば死んでしまうものなんだけど、なるほど。俺は毒を飲むとHPが回復するらしい。
村人達は、俺が彼女と接吻する様を見て死んだと思っただろうが、未だに唇を重ね死なない様子に唖然としていた。
「どうだ? 死ななかっただろ。彼女には毒なんて無かったのさ。これまでの行いはどうケジメつけるつもりなんだ?」
軽い挑発をすると、村人達はバツが悪そうに俺らの前から姿を消して行った。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「ーーん……。此処は?」
「ごめん起こしたね。怪我は大丈夫かい?」
「いえ、大丈夫です。それより助けてくれてありがとうございました」
「いーてことよ。俺はカケル。君の名前は?」
「私は、エリクシアです。」
宿を借りて怪我を手当てをし、軽く話しをしていたが本当に可愛らしい少女だ。村から追放され、さぞ怖かったろう。
それらを考えれば、俺達は『似た者同士』だった。
「確かに怖かっただろうね。村人からあんな酷い追放をされたら尚更だ。俺も数日前にパーティから追放された落ちこぼれなんだよ」
「そうだったのですね。大変でしたよね」
エリクシアが優しく抱きしめてくれていた。俺を慰める様に、包み込む様に。その優しさに触れて、俺は涙を流してしまった。
お互いに軽蔑されていた人生だっただろう。それでもエリクシアは人に優しく出来るのだ。その優しさに俺は救われた。
「お互いにもう行く所なんてないしさ、俺と一緒にパーティを組んでゆっくり気ままに暮らさないか?」
「いいですね! 私もカケルさんの側に居たいです。というか私、カケルさんが好きです。助けてくれたカケルさんと共に冒険したいんです!」
急なカミングアウトに翻弄されてまた俺は、互いの好意を認め合う様にエリクシアと唇を重ねていた。
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