第一話 僕、プログラミングなんてできませんけど
「なんでバグが取れないの・・・・っ」
彼女は画面の前でずっと悔しそうに、泣きそうになりながらデバッグをしていた。
なぜ俺はこのソースコードが読めないのだろう。
なぜ俺は彼女のようにプログラミングが出来ないのだろう。
そう思いながら、印刷されたコードを頭を抱えながらじっと見つめていた。
---------------4ヶ月前---------------
「柏博くん、いますか?」
高校に入学して1ヶ月が経ち、ゴールデンウィークが明けた頃、俺が所属する数学部に部室に訪ねてきたのは同じクラスの八潮千南さんだった。
「はい。どうしたんですか?」
読んでいた本を閉じ、八潮さんを出迎えた。八潮さんとは同じクラスだが、放課後に用もなく雑談するほどの仲ではなかった。
「私と一緒にコンピュータ甲子園…いや、プログラミングの大会に出てくれないかしら」
コンピュータ甲子園、プログラミングの大会と言われればそれらしいが、聞いたことはなかった。
「2人1組の大会で、来月6月に予選、9月に本選があるの。」
クラスの女の子に一緒に大会に出てほしいと言われるのは悪い気はしない。大きな予定もない。しかし、1つ問題があった。
「プログラミングの大会、ですか?僕、プログラミングなんてできませんけど・・・」
最近子供の習い事として流行ってるらしいが、おそらく自分の年代ではほとんど経験がないだろう。
確かにプログラミングと数学の親和性は高いとよく聞く。しかし、1ヶ月で大会に出られるレベルまで習得できるものなのだろうか。
困惑した俺への返答は、少し意外なものだった。
「大丈夫、柏くんはプログラミングをしなくていいの。」