囲まれたんだが
なんで未だに絡んでくるのか知らないが、不愉快だとしか言いようがない。一緒にいても腹が立つだけなので、さっさとこの場を去った方が賢明だ。
「行こう、ルシャ」
ルシャを促して場を辞そうとしたというのに、4人の男性陣に取り囲まれてしまった。まったく、本当に何がしたいんだか。呆れ顔の私に、アッサイ殿がニヤリと嫌な笑いを投げかける。
「待てよ。もうすぐロベール様もいらっしゃる。お前とは違ってたおやかなフルール嬢と一緒にな」
「存じております。フルール嬢はさぞかしお綺麗でしょうね」
想像してちょっとうっとりしてしまった。
彼女は私にとっても、理想の愛らしさを持っているあこがれとも言える女性だ。そのドレス姿は是非とも間近で拝みたいが、それは正式な挨拶の時だけで十分。殿下やアッサイ殿達の嫌味を聞きながらだとお姿を堪能するにも気が散るじゃないか。
というわけで、もちろんこの場は去るに限る。
「ですが私はもうロベール様の婚約者ではありませんので、然るべきタイミングで王室の皆様方にご挨拶させていただきます。ご心配なく」
「ほんっとうに可愛くないヤツだな!」
「レオニーが可愛くないのは昔からだろう」
激昂したアッサイ様の言葉を後押しするように、新たな声が響いた。
殿下……登場が早すぎるんじゃないだろうか。心の中のため息は深くなるばっかりだ。
けれどいくら嫌だと思っていても、まさか殿下を無視するわけにもいかない。渋々振り返った私は、殿下の横の麗しいお方に目が釘付けになった。
フルール嬢……! 純白のふわふわレース満載プリンセスラインのドレスが似合い過ぎじゃないだろうか……!
可愛い!!!
文句なしに可愛い!!!
髪飾りやドレスの胸元に配されている淡いピンクの小ぶりなバラとこれまた淡い黄色のマーガレット、そしてそれをひきたてるかすみ草……似合う! すべてが完璧……!
もはや記憶に焼き付けたいレベル……!
「聞いているのか、貴様……!」
殿下の不機嫌まるだしの声にハッとする。
しまった。フルール嬢に見惚れてて、殿下の声なんて全然耳に入ってなかった。
以前からは考えられないことだけれど、もう殿下の護衛じゃないと思うと、正直殿下の声を聞くのも面倒くさくなってしまった。お父様ならそんな事はないのかも知れない。そういう意味でも、私はこの方の護衛から外れて然るべきだったんだろう。納得。
「申し訳ありません、フルール嬢のあまりの美しさに圧倒されてしまって。ご機嫌麗しゅう、殿下、フルール嬢」




