一緒なら、きっと楽しい
「ねぇレオニー、クルッと一回転して」
「?」
「僕、エスコートだからレオニーの後ろ姿あんまり見れないもん」
「ああ、なるほど」
クルッと一回転して見せる。
「おお〜!!!」
ルシャはまた分かりやすく目をキラキラさせていた。可愛い。
「レオニー、後ろ姿もすっごく綺麗! 髪の毛ふわふわなのも可愛いね。いつもの纏めてるのも凛々しくて好きだけど、僕、これも好きだよ」
「うん、ストレートだとシャープ過ぎるかなって思って、ちょっと巻いてみたんだ。……ちょっと照れ臭いんだけど、褒めてくれて嬉しい」
「うわー僕今日、こんなにキレイなレオニーをエスコートできるんだよね。嬉しいなぁ」
輝く笑顔で私を見上げ、「お手をどうぞ、お嬢さん」なんて冗談めかしながら腕を差し出してくれるルシャは本当にいいヤツだ。彼となら、気が重いと思っていた夜会だって、きっと楽しい。
***
私とルシャが会場に入るなり、わぁっと歓声が上がる。
「おいでになったわ!」
「お待ちしておりましたのよ」
「レオニー様、ドレス姿も素敵!」
「愛らしいナイトも、今日は随分と凛々しくて素敵ですわぁ」
いつも仲良くしてくれているレディ達が、口々にそんな事を言いながら話しかけてきてくれる。私とルシャはあっという間に女性達に囲まれてしまった。
レディ達の視線は私にも集まっているけれど、ルシャの事もちらちらと見て頬を染めているところ見るに、この少年のような愛らしさと青年に足を踏み入れたような精悍さが共存する稀有な魅力に気づいてしまったようだ。
うん、気持ちは分かる。可愛いとも言えないし、ただカッコいい、と褒めるのも違う気がするのだろう。なんというか、言葉にするのが難しいよね。
代わりに褒めやすい私の方に自ずとコメントは偏っている。これは仕方がないだろう。私も照れ隠しに笑って見せた。
「ドレスなんて久しぶりに着たからちょっと恥ずかしいんだ」
正直にそう言えば、レディ達は私を鼓舞するように言葉を尽くして褒めてくれる。
皆、アカデミーの中庭でルシャが私にエスコートの申し込みをしてくれた事は知っているようで、今日をとても楽しみにしていたのだという。
私とルシャを囲むレディ達が嬉々として教えてくれたところによると、私達が今日どんな装いで参加するかは、どうやらちょっとした賭けにもなっていたらしい。知らなかった。
「私はお二人ともスーツに一票入れましたのに、残念ですわ」
「けれど、レオニー様のドレス姿を見る事ができたのですもの、悔いはありません……!」
「賭けの事、ルシャは知っていたの?」
ふと疑問に思ってそう聞いてみた。