【ルシャ視点】僕は決意した
「うわぁ美味しそう……すごく食欲をそそられる匂いだな」
「焼きたてってなんでこんなに幸せな匂いなんだろうね」
「そもそも焼きたてをこんな森の中で食べられるって事が未だに信じられないよ」
レオニーが感心したみたいに言うけど、それはもう、マジックバッグのおかげと言うしかないよね。僕が作ったマジックバッグはこれでもかってくらい機能が詰め込んである。
最大五十個までのアイテムをサイズ関係なしにぶっ込んでおける上に、入れている間は劣化なし、重さも感じないしもちろんかさばらない。だからこそレオニーが言ったみたいに、焼き立て、作り立てほやほやのあったかいものをこんな森の中で食べることができるわけだ。
錬金術で作ることができるアイテムの中でもトップクラスに便利だと思う。
「僕のマジックバッグのなせるワザだよね」
胸を張って言えば、レオニーは楽しそうに笑ってくれる。錬金術を間近で見ることが少なかったらしいレオニーは、僕の錬金術でできた物をこうやって見たり聞いたりするのが大好きだ。
マジックバッグの中から簡易的なテーブルと椅子を取り出して、二人並んでお昼ご飯を食べる。他愛もない話をしながら美味しいね、って言い合うこののどかで優しい時間は、僕にとっての癒しの時間だ。
「塩パンも美味しいけど、このかぼちゃのポットパイは絶品だな。かぼちゃがすごく甘くてトロッとしてる。シチューのホワイトソースもくどくなくて、かぼちゃの甘みがひきたつな」
「すっごい高品質なかぼちゃが手に入ったからね、ほかの素材は少し少なめにしてバランスとったんだよ。いい感じに仕上がってて美味しいよね」
「毎回レシピを変えるのか?」
「必要に応じてね」
「すごいな……感心してばかりだよ」
「レオニーっていっつもほめてくれるから大好き」
「ははは、ルシャはすぐにそれだな」
レオニーはそう言って笑う。そう簡単に好きだなんていうものじゃないよ、とやんわり注意された事もあるけど、困った顔をしつつもレオニーのほっぺがちょっとだけ赤くなるのを知ってるから、僕は隙あらば「好きだ」って言うようにしていた。
なんてことないって感じのすました顔で笑ってるのに、ちょっとだけ照れてるのなんて反則だよね。可愛いに決まってるじゃん。
レオニーにはちょっとずつ僕を意識してもらえればいいなって思うけど、レオニーの周囲にも僕を印象付ける事も大切だ。
よし。
僕は決意した。
「ねぇレオニー、今度レオニーのお父さんの時間がとれる時にさ、直接会うことって出来ないかな?」