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まさかお父様が

コツ、コツ、とゆっくりと足音が近づいてくる。その足音からさえ怒りが伝わってくるようだった。


「大人の目がない場所で、反撃の手段を持たぬ相手に暴言を吐いて悦に入る……それはとても卑怯なことです。人としても、男としても、下の下である行動だと自覚なさった方がいい」


「……っ」


うつむいてはいるけれど、殿下の顔が悔しそうにゆがんでいる。殿下のこんな顔、見たこと無い。


「どちらにしてもレオニーはもう殿下の婚約者ではなく、護衛でもない。殿下とは何の関わりももたぬ女性として、一定の距離が保てるよう転籍までさせております。なにとぞ、今後このような理不尽なふるまいはご容赦ください」


「……分かった」


小さな声で、殿下が答える。


まさかお父様が、こんなにもはっきりと殿下に苦言を呈することがあるなんて思わなかった。


呆然としている私の前にお父様の広い背中が立ちはだかって、殿下の姿は見えなくなってしまう。もしかして、私を守ろうとしてくれているのだろうか。


「それから……」


「まだ何かあるのか」


「ジュールもお気に召さぬようであれば、警護は騎士団から別途派遣させていただきます」


「えっ……」


「そもそもはレオニーやジュールを護衛につけたのは、殿下と、殿下と学びを共にする学生達が、常に騎士が傍にいることに窮屈さを感じるのでは無いか、少しでも精神的負荷を減らしたいという思いから設けられた施策です」


お父様から以前聞いたことがある。殿下や私達学生が過ごしやすいようにと考えられた事だというのに、全うできなかった事が今でも残念だ。


「申し訳ないことに私の教育方針はどうやら殿下にとっては居心地が悪いようで、私の娘や息子が傍でお守りすることで逆に窮屈さを感じておられるようですので、本来の形に戻した方が良いかという話にもなっているのですよ」


先ほどよりは険のとれた声で、お父様が言う。


やっぱりジュールも苦労しているのだろうか。


確かに殿下とアッサイ殿達の会話や考え方は、私にはあまり楽しいとは思えなかった。ジュールも同じように、なじめないで居るのかも知れないと思うと、その役目をジュールに引き継いでしまったことに申し訳なさを感じてしまう。


けれど、せっかく飛び級までしたのに任を解かれてしまうとなると、ジュールだって思うところがあるだろう。それはそれで難しい問題だと思う。


「いや……」


絞り出すような殿下の声が聞こえた。


「そんな考えがあっての事だとは知らなかった。……その、俺の態度も良くなかったと思う。少し考えさせてくれないか」

明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします(^^)

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