お前、すごいんだな
ダグラスにルシャとの出会い……あの顔に大怪我を負った日、彼の薬で傷跡までが跡形もなく消えたのだということを話したら、ダグラスの態度は一気に軟化した。
「お前、すごいんだな」
感心したような顔でルシャを見つめて、ダグラスが呟く。
「ダグラスは私の傷を見ていたから、ルシャの薬の凄さが想像できるんじゃないか?」
「当たり前だ。傷口を見てないレニーよりは遥かに事実認識が正しいと思うぞ。あの傷は、そんじょそこらの薬なんかで治るようなモノじゃない」
「だよね、アレは酷かったよねぇ、なのにレオニーったら血ぃダラダラ流しながら笑ってんだもん。僕、この人頭おかしいんじゃないかって疑ったよね」
ダグラスの言にルシャが同意する。そんなにも酷かったんだろうか、なんて考えていたら、ダグラスがルシャを信じられないって顔で見つめていた。
「お前……女のような面の割に、随分と歯に衣着せぬ男だな」
「顔は関係ないでしょ」
ぷくっと頬を膨らませて、ルシャがピシャリと言い返す。すると意外にもダグラスは楽しそうに笑っていた。
「確かにそりゃそうだ。まぁでもとにかく、レニーの傷のことについては俺からも礼を言うよ。ありがとう」
「アンタに言われる筋合いないし」
「あの傷は俺の剣を受けてできた傷なんだ」
「あ、そうなの? 酷いことするなぁ」
「ああ、自分でもそう思うよ。あの場を離れてからも、レニーが痛みで苦しんでるんじゃないか、あんな傷できちまって絶望してるんじゃないかって気が気じゃなかった」
痛そうな顔で、ダグラスは私を見る。そんな思いをさせていたなんて知らなかった。
「俺が知ってる薬なんかじゃ到底治癒できない酷い傷だったからな。……お前の薬のおかげでレニーは長く痛みを感じる事もなく、傷ひとつないつるんとした顔でいられるわけだろ。本当にありがとう」
「あー……そっか、まぁ気にしないで。別にアンタのためにやったわけじゃないし」
相変わらず褒められなれていないルシャに苦笑しつつ、私は足を早めた。
「とにかくそういうわけで、その傷薬の礼にルシャが住む場所と住まいを提供する事になっているんだよ。父上が所領の中から好きな場所を選んでいいと言うから、ルシャにとってより良い錬金の素材が手に入る森を検討している最中なんだ」
「へぇ」
「そりゃ特上の出来ではあるけど手持ちの薬塗ってあげただけだから、お礼なんかいらないって言うのにさ、この親子全然退かないんだ」
「そりゃそうだろうな。俺も何か礼をしたいくらいだ」