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噂になっているんだろうか

「待てよ、レニー!」


急いで校門を出ようとする私を呼び止める声に、反射的に振り向いた。


騎士科でよく呼ばれる愛称で私を呼ぶ声。それはとても聞き慣れたものだったから、それが誰かなんて予想はついている。騎士科の修練場方から走ってくるのは案の定ダグラスだった。


下校途中の生徒たち中でもひときわ目立つ高い身長。人の波を縫うように走っていても軸がぶれないのはきっと体幹が鍛えられているからだろう。先日ダグラスには不覚をとってその剣を顔に受けたばかりだ。彼に負けないように私ももっと鍛えないと……なんて思っているうちに、ダグラスは私のもとへ辿り着いた。


軽やかな身のこなしだ。さすが私のライバルなだけはある。


「どうした、ダグラス」


「どうした、じゃねえよ。もう五日も修練場に来てないじゃないか。殿下の婚約者じゃなくなったなら……その、鍛錬に使う時間は増えるんじゃないのか?」


「ああ、そのことか」


思わず苦笑した。


私にケガを負わせた翌日は朝一番に様子を見にきてくれたし、その日の午後にロベール様との婚約が解消されたと発表されたらまた心配そうな顔で現れた。翌日もその翌日も、何かとこうして話しかけてきてくれる。本当にマメな男だ。


きっと私にケガを負わせたという良心の呵責と、殿下に見限られ護衛ですら無くなった私の気持ちを慮ってくれているのだろう。ダグラスは剣の腕前も素晴らしいが、誠実で情にあついところもとても好ましい。


「大丈夫、今はちょっと別件で忙しいだけなんだ。心配をかけて悪いな」


「別件って……森の民か?」


「!」


「やっぱり思い当たる事があるって顔だな」


驚いた。


確かにルシャとは毎日会っている。ルシャの住まいを決めるためにどの森でどんな素材が取れそうかをもう少し見極めたいというルシャの希望を叶えるために、ここ数日は連日一緒にウチの管轄の森を巡っているわけだが、噂になるのもなんだと思ったからわざわざ王都を守る城壁の門を出た辺りで待ち合わせをしているというのに……。


特段噂好きでもないダグラスが知っているほどに、私がルシャと行動を共にしている事は噂になっているのだろうか。


「なんで知っているんだ」


恐る恐る聞いてみたら、ダグラスは苦虫を噛み潰したような顔をした。


「兄貴が、お前が緑色の髪の男とちょいちょい街の外で逢引……一緒に、街の外に出てるって言うから……!」


「ああ、そうか。ダグラスの兄上は門を守っていたんだったな、そう言えば」


「やあ!」


「うわっ!?」


合点がいったと頷く私の目の前で、いきなり後ろから襲撃を受けたらしいダグラスが前のめりに体勢を崩す。

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