森の民はロマンチストだな
「ルシャ、確かに君の言う通りだな。私と殿下は、多分共に居て幸せになれるような関係性にはなれなかったと思う。きっとこの婚約は解消されて良かったんだ」
「でしょ。せっかく自由になったんだから、幸せにしてくれる人見つけなよね」
「ははは、森の民はロマンチストだな」
「なんだよ、当たり前の事でしょ。あ、そっか……貴族ってそういうの、難しいんだっけ?」
「ん? ああ、家を継ぐ者はやはり家長が決めた相手と婚姻を結ぶ場合も多いな。だが今は本人の意思を尊重する家も多いぞ」
「じゃあ、いいじゃん」
「まぁ私の場合は王族から婚約破棄されているからな。父上が新しい相手を探してはくれるだろうが……まぁ、もはや私を娶るような物好きは見つけるのが難しいだろうな」
「へ? なんで?」
私が率直な意見を述べると、ルシャは分かりやすく目をまんまるにして驚いた。
「アンタ美人だし、めっちゃ人気あるじゃん……。僕でも噂聞くレベルって相当だよ?」
「ははは、ありがとう。女の子たちに人気があるのは知ってるよ。思いを綴った手紙が山ほど届くからな。でも女同士で恋仲になれるわけでもないし、結婚相手にはなれないのが分かり切っているから安心してキャーキャー言ってるんだと思うよ。私も気持ちは分かる」
「そうじゃなくてさ、言っとくけどアンタ男にも人気あるんだからな」
「それは友人としてだよ。特に騎士科を目指すヤツらとは仲がいいんだ。ちょっとデリカシーには欠けるがあけすけで気の良いヤツが多いからな。好みのタイプとかの話もちょいちょい出るけど、皆小さくてふわふわしてて可愛らしい子が好みだぞ。……フルール嬢みたいな」
目の前に友人達の理想みたいな顔があるものだから、つい「君みたいな」と口にしそうになってしまって慌てて言い換えた。さすがに口にすれば怒られるだろう。
でも、本当にあいつらの理想通りだなぁ。ついでに私の理想通りでもある。ああホントに可愛い。
「ふーん、バカなんだね、アイツら」
なのに、可愛らしい口から出る言葉はやっぱり辛辣だ。私は苦笑しながら友人達を庇う。
「バカって事はないだろう」
「バカだよ。見た目なんてどうでもいいじゃん」
「まぁ、最終的には性格や価値観が合うかどうかが一番重要ではあるだろうけどさ、見た目だってかなり重要だよ。好きな顔や雰囲気なら、それだけで好ましく思って目がいくものだろう?」
「ふぅん」
目をすがめ唇をちょっぴり尖らせる仕草を見るに、ルシャは全然納得出来ていないらしい。まぁ、人の考え方なんてそれぞれだ。ルシャの考え方ももちろん嫌いじゃない。私は笑って話を終わらせようとした。
「ルシャは見た目ではなく性格重視なんだな。それも素敵だと思うよ」
「アンタは?」
「え?」
「アンタも好みのタイプとかあるワケ?」