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第八話 本から得られるものは何も知識だけじゃない

父さんから軍国と王国の二国連合の侵攻を知った日から数日の時は流れた。


その短い時間は大きな変化をもたらした。


あの日以来父さんは一度も家に帰って来る事が無い、その所為が母さんは少し痩せて、顔色も良いとは言えないものだった。


なのに何故か俺の体の具合はどんどん良くなって行き、今では少し違和感を感じるだけで今まで感じたことの無いくらい体が軽く感じた。


体の具合が良くなった俺は非常時である事にも関わらず外出しようとした。


流石またこっそり脱け出すのは不味いと思い、きちんと母さんと相談し、その了承を得てからにした。


しかし当然この非常時に了承を得る事が出来ず、俺は屋敷から出る事は無く、良くなった体を持て余した俺は起きてる戦から気を逸らすと思い、父さんの書斎で読書をすることにした。



「如何にも書斎で感じの部屋だな。」


俺は書斎のドアを開け中に入って中を見回したら思わず感想が漏れた。


書斎は屋敷の二階で左の方に有る突き当たりの部屋だ。そのドアから真正面 部屋の中心から少し外した所に大きい机があり、その直ぐ隣にセットになるよう椅子が置いてある。


その椅子の後ろに壁を覆いか尽くす本が二つの本棚を埋め尽くしていた。左側にもう一つの本棚があって、右側に大きな窓がある。その窓から光が差込、机と椅子を照らした。


「いつもならこう言う書斎は隠し部屋があるのが定番だよな、そしてその仕掛けとしては...これ、じゃないか...じゃ」


俺は中へ入り昔で、前世で見た漫画や小説などの物語の中に出て来る書斎の隠し部屋の事を思い出し、それに真似て机の上に置いてあるアクセントを動かす。しかしなんの反応もなく俺は他の可能性(記憶)を頭の中から探り、本棚に有る本を注目した。


だけど何冊が有り得そうな本を取り出しでも何の反応や兆しが無かったのだ。


「やはり無かったか、隠し部屋。」


長年の探索でこの屋敷の外と中を熟知している俺は最初からそう言う予想を立てていたが、この世界の魔法と言うものに期待を抱いていたのだ。


俺は期待が外れたことに少しテンションが下り、最初の目的である本そのものに注意を向けた。


「やはりそう言うロマンは無いのだな...ておい、これは出来すぎじゃね。」

俺は呟き、手で本の背表紙を撫でるようそこに有るタイトルを流し読みで漁り、始まって直ぐに一冊の本の背表紙に有るタイトルに驚かされた。


『ロマンは此処にある』


その本にこれらの文字が縦で上から下へ綺麗に並べている。当然のように日本語では無くこの世界の文字でだ。


俺は心底 出来過ぎだろ と思いながらもその本を手に取り、裏表紙に書いているであろう作者名を確認する。


『ローラン』


ペンネームが本名が知らないがこの世界に来た以来聞いた事の無い名だ...が前世では少し馴染みの有る名で、神話に出て来た事のある名だ。


さっきのような偶然とこの作者名の所為で俺はこの本に絶えない興味を持って仕舞い、その本の内容を見ようと俺は本の正面を自身に向け、本を開けた。


最初の空白の一ページを捲り、二ページ目に有る前文を読んだ。


―――――――

『プロローグ』


これは私が自分の子孫に残した唯一のもので、そして今これを読んでいると言う君が私の後代に当たる人物である事にさせて貰う。


この家の者である以上君もきっと虚弱で良く病気に掛かる事があるだろう。そんな君に解読されて居ない私の父の手記をこの本の本文として捧げよう。


解読出来ればきっと君も父のような英雄になる事が出来よう。


健闘を祈る。

―――――――


前文を読み終わり、俺はワクワクした気持ちでページを捲った。


○○○○○


一時間程の時間が過ぎた後に俺は書斎から出た。そしてそこから更に十数分の時間が過ぎて行った。


「此処に来るのは何年ぶりになるのだろ?十年も前かな?」


俺は今以前父さんと来ないと約束したかの洞窟の前に来ている。


「これで父さんとの約束を破る事になるな...でも、それでも俺は確かめないといけない事があるんだ、ごめんなさい父さん。」


俺は洞窟を外から中を覗き、一歩中に踏み入れた、そしたら以前来た時のように真っ暗だった洞窟に灯りが点いた。


「あれはこの下だな。」


俺は少し進み一度降りた事のある階段が繋がっているその先を覗き、一歩を踏み出し階段から降りた。


「......」


五歳だった自分が一度だけ通った道に奇妙な懐かしさを感じながら俺は黙ってひたすらに進み、ゆっくりと以前興味を引かれたあのぽっかりと空いた空間をただ通り過ぎ、そこから更に下へ俺は進んで行った。


そしてどれ位の時間が過ぎたか知らずに俺はただ進み、目的地であるあの神々しい白に塗り尽されている広間に到着した。


「此処があの人の手記にあった 聖剣の間(ロカマドゥル) か?」


俺は囁き、広間の中心部へ向かった。


中心部にあるあの大剣の元に俺は辿り着き、その大剣を見詰めた。


あの無骨な大剣は明らかに鍛冶で出来たものと違い、何かの科学技術で複数枚の金属を組み立てたものだ。その組み立てる技術力が凄まじいもので組み立てた跡が無く、大剣の剣身にあるラインや槽等のものは全部そうなるようにわざとそう言うものしたものばかりだ。


その造形からでも前世の地球との科学力の違いを感じる、それ程まで凄いもので、華麗な作りをしている台座に刺さっているのだ。


以前は俺よりも遥かにデカイと感じた大剣は今やその柄の先も俺の胸口と同じくらいの高さしか無く、台座の中にある部分をも加えればまた違うだろう。


俺は一度上下にその大剣を観察し、一歩前へ進み大剣に近付き、両手でその柄を握り締めた。


『日本人の魂と僅な主の血統を確認、起動します。』


俺が大剣の柄を握り締めた途端にその剣身にある数本のラインに蒼く光る線が走り、それと共に声がこの広間に響き渡った。


何時か地球に居た頃にプレイした事があるRPGの中のシステムボイスの声で、日本語だ。


「ふん!やぁーー!」

俺はその声を構わず両足から腰へそして両手もそれらの箇所に目一杯の力を込め、思わず出て来る掛け声と共に大剣を引き抜こうとした...がびくともしなかった。


『所有資格を確認しました、一時的に機能を停止します。』

また声が鳴り、その声と共に剣身に走る蒼く光る線が点滅し、まるで大剣を地中に引き止めていたような力が消え、いきなり力の均衡が崩れたように俺は一気にその大剣を引き抜けた。


地中に埋めていた部分が曝け出し、俺の身長よりも長い大剣を俺は握り締めていた左手を解き半回転して柄を握り直して手首の力で回転させ、それと共に右手をも解きまた速やかに柄を掴み、大剣が丁度半回転でその切っ先が真上に向いた所で回転を止めた。


起きろ(アウェク)!」

俺は握り締めている大剣に向かって叫ぶ。


『アクティヴワードを確認、システムを再起動します。』

俺の叫び声に反応して、あの大剣が再び輝きだした。


『私の子孫にして同郷のものよ、良くぞ来てくれた。』

虚空に一人の人間の映像が投影され、あのシステムボイスと違う声が聞こえてくる。


「同郷……やはりあの人もか。」


前に見た手記はの中身は全部日本語で書かれたものでその手記の主人であろう映像の中のその人が日本人だと俺は予想した。


『意識を移さずただの映像で一方的に話し掛ける事を詫びよう。』

映像の中の人は語り始める。


『私は西暦2350年の日本から召喚されたものだ、この世界では ローラン と名乗って居る。転生した君は私と同じ時代かその過去の時代かまたは未来が知らないのだけれどこの剣はきっと役に立てると私は思う。』


「……」

あの手記から知った事だ。


『この剣に私の出来る全てを詰め込んだ、その使い方は直ぐにでも君の脳に送り込む事になるだろう。それでも残り少ない容量でこの映像を残したのはどうしても私自身の口で君に言わないといけない事があるからだ。』

あの人は続く。


『先ず間違い無く君も遺伝病とやらに苦しまれて居るだろう。念のために言われて貰う、それはどんなに酷くなっても決して死に至る事は無いし、そもそも病気とは言えないものだ。』


「えっ⁉︎ほん、とうに⁉︎」

知らない言葉(真実)に俺驚いた。


『これを聞けばきっと君は驚くだろう、それも仕方ない。何故ならこれを見てる君は間違い無く引き起こしてる症状が一番酷かった筈だ。理由がどうあれ、わざとさせたものとして今まで苦しまれて来たもの達に、何より同郷だった君に私は申し上げないと思っている。だから……』


映像の中の人はしゃがみ映っている角度も下へ向けた。


『自分の後代に土下座は様にならないが、同郷の君になら大丈夫だろう。済まなかった!』


あの人は完全に額を地面に着き土下座して、詫びの言葉を口にした。


その状態なまま時は流れ、一分くらい時間が過ぎそのまま映像は消えた。

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