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第六話 戦争開始だそうだ

あの日、父さんが出てった後、俺と母さんはその帰りを待った。


しかし俺は母さんと共に母さんの部屋で父さんの帰るのを待ったが、父さんは中々帰って来ないのだ。夜半になってようやく父さんは帰って来て、俺と母さんは二人して玄関まで行ってお出迎えをした。


「どうしたの、あなた?こんな時間になるまでたなんて。」

母さんは父さんに聞いた。


「済まない、シェリア。説明の時間は無い、これから私はもう一度出掛けなければならないのだ。」

父さんは慌て出し、説明する以前に母さんに謝った。


「父さん何か不味い事でも起きたのか?」

俺は質問した。


「あぁ、不味い以上に最悪の事態だ...隣国の侵攻が始まった、それも王国と軍国の二国連合でな。」

俺の質問に父さんは答えてくれた、その言葉からもその発した声からも 最悪の事態 と言うものを感じた。


「そんな!?二国連合でだなんて!?」

母さんは父さんの言葉に驚き、腰が抜けて崩れ落ちたよう地面に座り込んだ。


「...ベリオット、確りと母さんを守れ、私はもう出掛ける。」

父さんは座り込んだ母さんに手を差し伸べ、母さんが立ち上がったら即座に手を離し、侍女の手から、その侍女が持ってきた一つの包みを受け取り、俺にそう言ってまた出掛けた。


「まっ、父さん!」

俺は離れで行く父さんの背中に向かって叫んだ。


しかし届いないのか、それとも父さんの耳に入っていないのかは知らないが父さんは返事もせず、ただただ前へ進んで行った。


俺はまだ腰に力が入らない母さんを支え、去って行く父さんの背中を見詰めながらもその場から動く事が出来なかった。


その後、父さんの背中が見えなくなってから俺は母さんと母さんの部屋へ送り返した後、俺も戦争の事を考えながら自身の部屋へ戻り、休むことにした。



翌朝、場所は移り、エムベラド帝国の辺境を守るとある要塞で一つの臨時会議が開かれる事となった。


「これより状況の再確認をする。」

その会議を仕切る一人の男がその場に居る他のもの達に告げた。その会議を仕切っている男は他でもないベリオットの父親のロベルトなのだ。


「斥候の報告によると、昨日の夜にて軍国と王国の二国連合の軍隊はこの要塞から大よそ五キロの離れた所に一休を得た後、再び進行を開始した。このまま行くと一時間多くて二時間後にこちらと接触することとなるだろう。」

男の ロベルトの話を聞いたその場に居た他のもの達は驚かない、最初から予想していた事だったのだからだ。


「その報告によると、その数は五千。」

これも昨日の夜で知っていた事だ と他のものは眉を皺める一方で驚いたりはしなかった。


「そして続報によると、その後方に更に五千もの兵を確認した。」

ロベルトは今朝届いたばかりの情報を言い出した。


「なんだと、そんなもの昨日にはなかったじゃないか!」

その場に居るもう一人の少しひょろりとした男はテーブルを叩いて、その勢いで立ち上がり、大声を上げた。


「今朝一で入ったばかりの情報だ。きちんと確認を取れたもので真実なのだ、ドガネット伯爵。」

ロベルトはそのひょろりとした男 ドガネットにそう告げた。


「えぇい!なんでそう言う事を速く言わんのだ!」

ドガネットはロベルトに怒鳴った。


「そんな事は今更どうでもいいのでは、それよりも速やかに対策を立てた方がいいじゃないのか?」

また一人その場に居る男が止めに入り、切れてるドガネットに対しまるで 黙っていろ と言うよう威圧を放った。


「くっ!」

ドガネットはその男の威圧にやられて仕方なく口を慎み、眉を更に深く皺めながらその男を睨んだ。


「それくらいにしておくのだな、お前達。」

ドガネットに威圧を掛けた男とはまた違う人、一人の鎧を着こなした女性が睨みあう二人の中を割り込むように声を上げた。


「おっと、これは失礼をしました。」

ドガネットに威圧を掛けた男はその女性の介入で即座にその威圧を解いて、ドガネットでは無くその女性に謝った。


「くっ、くそっ!私はここで帰るにする!あとはそっちて勝手にやれ!」


ドガネットはさっきまで威圧を掛けに来た男の態度が頭に来た、しかし周りに居るこの二人はこの要塞の武将で敵う筈も無い相手にドガネットはどうする事も出来ず、ただ怒りのままその場を後にした。


「...さて、お邪魔虫も居なくなった所で、再開としよう、ロベルト。」

あの女性はドガネットの退場を待ち、ロベルトに再開しようと言い出した。


「余りそう言う事をして欲しくないな、ドガネット伯爵は確かに利己的な一面はあるがあれでもこの国を憂して居る数少ない貴族の一人なのだ。もう少し丁寧に扱って欲しいのだ。」

ロベルトはあの女性に視線を向け、そしてそのままさっきの男に移った。


「......」

女性は今のロベルトの話に聞く耳持たないように目を閉じた、男の方は逆に そう言われても困る と伝えたいように苦笑いをしながら目を細めた。


「はぁ...仕方ない、続けさせて貰う。」

ロベルトは軽く溜息を吐いて、そしてまた続けた。


「さっき言ったように今朝一でその情報が私の所に届いた、私の一存で即座にもう一人の伝令兵を出し、援軍を呼びに帝都へ向かわせた。」

ロベルトは自分のとった行動をその場に残ってる二人に話した。


「相変わらず手が早いな。」

さっきの女性はそう呟いた。


「私達の祖国、この エンペラド帝国 は千年も昔では大陸一の軍事力を誇り、大陸全土を手中に治めかけたと謂われて居た。しかしかつての大陸一の強国 エンベラド帝国 は時間の推移を伴いその力を失い、逆に他の国が力を付き始め、今やギリギリ強国と言えるくらいのものに成り下がった。」

茶化すような事を言った女性をスルーして、ロベルトは語り始めた。


「「………」」

他の二人は黙したままだが、ロベルトの言いたい事をちゃんと理解して居てのだ。


「そうなった原因 いや 要因は他でもないかつてのこの国の貴族達と今となってもかつての貴族達と同じ真似をした今の貴族達なのだ。そんなやつらが巣を構えている帝都から援軍が来ない可能性は十分にある、だから考慮に入れないとならない。」

ロベルトは説明を付け加えた。


「「………」」

男もその女性も沈黙した。考えられない話じゃない、むしろ十分にあり得る話だから二人共黙したのだ。


「だから今からそれを踏まえた上で作戦を立案する、二人とも私に力を貸してくれ。」

ロベルトは二人を交互に見回した。


「「あぁ(えぇ)、もちろんだ。」」

二人の声は少しだけズレでも後で見事にハモッタ。


「そうか、じゃ早速取り掛かろぞ!」


「「おぉ!」」


こうしてロベルトとその場に居る二人で会議を続けたのだ。



場所をエムペラド帝国の辺境を守るとある要塞からその国境線の間にある平原に移り、時も少し遡る。


『気を付けぇ!休息の時間は終わりだ!整列~!』


束の間の休息を得た兵士達の間に一人声が万辺無く響き渡り、兵士達の耳に伝わった。


二つの国に所属してる兵士達は迅速に支度し、整列をし始め、五千もの兵士は二三分も掛からずに隊列の整えた。


「おはようですな、准将殿。」

一人の軽鎧を着こなしている精強な老者が一人の強健な武人に朝の挨拶をした。


「これは、おはようございます、王国大使殿。」

武人は老者に挨拶を返した。


「それにしても何時見ても素晴らしい統率力ですな、准将殿。自国の兵だけて無く我が国のものまでその一言でこんなに迅速に実行するとは。」

老者は迅速に整列終えた兵士達を見ながら武人に世辞など挿まず思ったままの感想を述べた。


「何を仰いますか、王国大使殿。貴方が居なければどんな統率力を持ってもその兵達の指先一本髪の毛の一本も動かすことも出来ないのでしょう。」

武人も老者に本音を聞かせた。


これも世辞とかではなく事実なのだ。


「それはご謙遜が過ぎますな、貴殿で無ければ例えそやつらを動かせてもこんなに速くさせる事は出来ぬのであろう。それだけでも誇って良い事なのだよ、准将殿。」

老者は武人にそう言った。


「そうですかな、自分では良くわからぬが、褒め言葉として頂く事にしよう。」


「はっはっ、それよりも准将殿。」

老者は武人を呼んだ。


「どうしたかな、大使殿?」

武人は老者に聞く。


「いよいよですな。」

老者はそう短く答えた。


「あぁ、そうですな。これから侵攻の合図を...そうだな、大使殿、貴方様も一緒に出陣の合図を出すのはどうですか?この戦えはきっと後の歴史に残るのでしょう、その歴史的戦えの出陣の掛け言葉を貴方様も一緒に。」

武人はこれからしようとした事を思い出しながら、老者をも誘った。


「それはそれは素晴らしい提案ですな、又とない機会ですから一緒にさせて貰う、准将殿。」

老者は武人の提案を快諾した。


「そうですか、では。」


「あぁ、では」


老者と武人は互いに息を合わし、そして同時に声を上げた。


『『軍国と王国の兵士達よ、これより エムペラド帝国 への侵攻を開始する。全軍前進!!!』』


老者と武人の掛け言葉に兵士達の士気は一気に高まり、五千もの兵士は足並みを整え、エムペラド帝国の辺境を守る要塞へと前進して行った。


こうして後に語られる‘帝国再起の始まり’と言う戦いの幕は少しずつ開けていった。

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