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第四話 探検するものは後ろから追い越されたのだ

あの日、俺は数分の内あの女の子との出会いそして別れた。その後、屋敷でお勤めをしてる一人の侍女が俺を発見し、無こと母さんの寝室まで送り返してくれた。


俺が部屋に入ってようやく母さんは目覚めた。未だ幼児でしかない体はとてもじゃないが感情を隠すなんてことは無理で、目覚めばかりの母さんは俺に何があったと聞く前にただ俺を慰めるよう抱き締めてくれた。


後の話だが、客人が帰ったことで戻って来た父さんにその客人とは誰だ と聞いたら 詳しくは言わずただとある貴族とその娘さんだと教えてくれた。


その後俺はしつこく父さんに聞き続け、その貴族はとある大貴族で公爵の爵位を持っていて、その公爵の家名だけ教えてくれた。



そしてあの日から更に月日が流れ、三年もの時間が経過し、俺は五歳になった。


この三年間前に会ったあの子もその公爵もこの屋敷に一度も訪れることは無く、俺の方はその後も発作のない日に探検し続け、今はこの屋敷内のこと熟知していてもう迷うことがなくなった。


三年という時間、起きた変化は何もそれだけじゃなかった。


良い変化が有ったように、悪い変化も有ったのだ。


この三年間、俺の病気の発作はより頻繁になっていた。前のように二ヶ月ごとに定期的に発作が起きる筈が、今となれば一ヶ月ごとになったのだ。そのことに母さんも父さんも前以上に俺のことを心配するようになったのだが、俺は相変わらず好奇心を満たす為に探検を続けた。


流石に三年も掛けて屋敷は全部探索済み、だからそれ以降に俺はほどんど屋敷の外だけを探検するようになった。


そう、今日も俺は屋敷中の監視(使用人達)の目線を掻い潜り、屋敷から外に出た。


屋敷の外、その正面に街道が整備されていてその先には町があり、そして必ず人が居て探検には向いていないと俺は判断し、逆方向、屋敷の裏側に俺は目指した。


屋敷の裏側には浅い森がありそこからは直接うちの庭と直結して居て、俺はその庭を出発地点にし、そこから森へ入ろうとする。


慣れた感覚で庭に辿り着き、あの日と変わらない風景に俺は惹かれて一時だが好奇心を忘れそこの風景だけを見ていた。しかしよく見るとその風景は前と少しだけ違ったことに俺は気付いた。


前よりこの庭が少し小さく感じた。


それもそうだ。三年の時間が経ち、この庭にあるものはもちろん俺もきちんと成長をしたのだからだ。


違ってくるその感覚がまた新鮮で俺はもう少しの間その景色を見ながらあの日の出会いを思い浮かべた。



数分の時間が経ち、良い思い出で気分が良くなった俺はもう一度庭を見回し、森の方へ向かった。


うちの屋敷の裏側にある森については少なからず屋敷の中にある使用人達から話を聞いている、なんでもその森の奥に怪奇的な場所があり、この地の領主つまり俺の父さんは何年か前にそこに調査をしに行き、色々と対策をしたものの依然と危険が残る場所だから今は立ち入り禁止しているとのことだ。


立ち入り禁止なんでこれ以上ない程に探検したがる俺の心を燻り、その やっちゃいけないことを禁止すればするほどやりたくなる 的な人間ならではの 禁忌の果実効果 たったかな、そう言う心理があり、やりたくなる俺だったのだ。


森については前の数回の探検のお陰で俺はその全体を把握している。だからその森では先ず迷うことは無い。


故にその森を俺は余裕に踏破し、その奥にある 禁地 と呼ばれている洞窟の前に俺は辿り着いた。


その洞窟は俺の前世からの記憶の中にあった天然的にあった洞窟と明らかに違い、その入り口の上の半分はアーチを描くような天然的にしては出来過ぎなものであり、下の半分も人の手によるものだと思う方が自然なものだ。そんな入り口から中へ伸びる道も石を敷いていて、それら全部が全部そうであると語っている。


見るからにファンタジーにありそうなこの洞窟に少し感心しながら俺は入り口から中へ入った。中へ踏み入れた瞬間、中は突如明かりが着いて、暗くで何も見えない程の闇は白昼の如く光に照らされた。


視界が良くなったと思ったら入ったばかりなのに一つの同じ石が敷いている階段を発見した。


延々と下へと続く終わりが見えないその階段が俺の目の前にあった。


俺はその階段から少しずつ下の方へと進み、案外まだ五歳の子供でしかない俺も歩き易かったのですらすらと下へと進んでいった。


下へ進んで行き、ある所に着たら今までのように同じく石を敷いている壁が突如途切れた。階段はいつも通りなのに壁だけが上と下の二つに別れ、まるで中間の一段だけがぽっかりと消えたように空いている。


不思議に思いながら俺はその空いた部分に手を入れ、空気を探るように手だけて左右上下に、円を描くように動かした。しかしやはりそこに何も無く、中に入れば何かを見付けることが出来るかも知れないが、幼児から子供の体に成長は遂げたと言ってもかなり危険があるから俺はそれを辞め、再び階段を下りていった。



場所か移り、かの禁地 洞窟の前に一人の男が立っている。


その男は洞窟の中に探検しに行ったベリオットの父親、この地の領主のロベルトであった。


「うん?誰かがこの洞窟に入ったのか?しかもこの 明かり 家のものなのか!?...まさか、ベリオット!?くっ、ショットカットして先回りしなければ!」


男 ロベルトも洞窟中へ入り、しかしベリオットと同じく階段から降りず、隣の石壁に手探りに何かを模索するようにあちこちを触り、ある所を触った途端にそこが凹んで行き、それを見たロベルトは一歩後ろに下った。


さっき凹んだ所が更に内側に入っていき白い石が黒くなったら、今度は地鳴りのような音が立ち、石壁の一部が地面の中へ収まり、そこに丁度一人成年男子が余裕で通れる門が現れた。


ロベルトはその門の取っ手を取り門を開け、中へ入った。


中へ入るロベルトの視界は一瞬真っ白になり、そして段々と白は消えて行きさっきとは違う景色が目に映ったのだ。



更に場所を変え、さっきまであの 空っぽの空間 に少しの興味を持ったベリオットごと、俺だが、めげずにあの長い階段から降りる所まで降りて、ようやく一つの広間に辿り着いた。


その広間は神々しくも全白に染まり上がっていて、天頂から壁そして地面の至る所に真っ白の石が敷かれている。


何も無く全てば真っ白のに美しいと思ってしまった俺は回りを見回しながら中心地帯へ歩いて行く。


その中心近くまで辿りつき、ようやくそこに何かが刺さっているのが見えた。


好奇心の元に俺は更にその 何か に近付き、良く見たらその 何か が一振りの大剣だと俺は気付いた。


当然のようにその大剣は今の俺の体よりもデカく、華麗な作りをしてる台座の深い所にまで刺し込んでいるが俺の目測でも父さんよりもデカイことがわかった。


俺の奥に眠るロマンと言う男心は刺激され、思わずに手を伸ばし剣腹に触った。


大剣は俺の手に反応したように少し浅く蒼い光がその剣身にある数本の筋に注ぎ込まれたように少しずつ浮び上げた。


ワクワクする俺は続きを見ようと思った...が直ぐに俺の視界は黒くなった。真っ黒じゃなく、それは誰かが俺の後ろに立ち尽くし、その出来た影が光を遮断していると俺は直ぐに理解した。だから振り向き、上を見上げた。


「おとうさま!?」


俺は驚いた。


此処に辿りつくまで前の方誰の姿や足音も何も無かった筈で、もちろん後ろからも無いのにどうして父さんは此処に居るのだろう?


俺は疑問に感じ顔をして、しかし父さんは俺の疑問に返答などしないし、さっき俺の言葉に反応も示さずにそのまま俺を担ぎ上げる。


俺が来たほうの階段と違った方向へ急ぎ足で進んで行った。


父さんが先へ進み、顔が後ろ向きになってる所為で何処なのも俺は判らずに視界は真っ白に成り、体験したことがあるから変に慌てたりはしないがやはり慣れないものだった。


視界の景色は戻って行き、洞窟の入り口近くであるのか俺は理解する。


ショットカットがあるのか?と俺は確信に近い仮想を立てた。


洞窟から出てようやく父さんは俺を降ろしてくれた。


「ごめんなっ」


バン


俺が謝る前に父さんが俺の頬を平手打ちした。


今まで打たれたことの無い俺はショックではあるが、今回は完全に俺が悪いことを理解していて泣きたいと思う衝動を必死に堪えた。


頬はヒリヒリと赤く腫れていることがはっきり判る。俺は自分の手で頬を撫でた。


「ごめん、なさい、おとうさま。」


俺は一拍子遅れで父さんに謝った、打たれたとは言え俺にはちゃんと自分の非を理解しているのから。


「...済まないなベリオット、カットなって打って仕舞った、父さんを許してくれ。」


打ったことを少し後悔した父さんの方から俺に謝った。


「うぅん、ちがうよ、おとうさま!ぼくが、ぼくがかってにあんなあぶないところにいったんだからおとうさまはおこってどうぜんだよ!ぜんぶぼくがわるいのだから!」


俺は必死で父さんに訴える。


「...確かにお前にも非はある、しかしだからと言って私がお前を打って良い理由にはならない。だが此処はとても危険なのだ、来ちゃいけないから禁地なんだ。だからベリオット父さんと約束してくれないか?此処にはもう来ないって。」


父さんは未だに悔いているように、低い声で俺に言う。


「...うん、わかった、おとうさま。やくそくする、ぼくはここにこない!」


俺は決定に少し躓き、頷きながら父さんと約束の言葉を口にした。


「そ、そうか!それなら確りとこの約束を守るのだぞ、ベリオット!」


「うん!」


素直に聞き入れる俺の態度に安心したか、引き締まっていた父さんの顔は緩み、再度俺に確認をし、俺は躊躇無く頷いた。


「じゃ、そろそろ戻ろう、でないと母さんが心配する。」


「うん!」


俺は力強く頷き、父さんは久し振りに俺をその肩に乗せ屋敷まで歩いていった。



ベリオットとロベルトが去った後、かの洞窟の底にある広間は一瞬の内真っ暗になり、微かに輝く浅い蒼い光だけが点滅している。


『日本人の魂と微かながら主の血統を確認、これより初期化シークエンスに入ります...初期化まで十秒前......五...四...三...二...一...ゼロ、初期化を開始します。』


無機質の声と共に広間により強く光がその蒼い光を上書きし、かなりの時間が経過してようやくその光は引いていくのだった。


『初期化完了しました...』


その声と共に広間にある光は完全に消えてなくなった。

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