第二十二話 より乱れる世界へ
ローランド王国、王城地下にある地下聖堂に居た千もの人が光に包まれ、その場から消失した。
光のみがその場に取り残され、次第に収束して行きやがて四つの光の球になって、その光の球の輝きすら消えてなくたってその中からさっきまで此処に居なかった人の姿を見せた。
「うおっと!足元に魔法陣みたいなものが出て来たと思えば今度は周りの景色が知らないものになっているのかよ。」
姿を現した四人の内一人の男、いや少年はさっきまで感じた浮遊感がなくなり、いきなり襲ってるか重力に不意を突かれバランスを崩してしまい、なんとか足を後ろ一歩の所に引いて持ち直した。
その少年は周りを見渡しながら愚痴った。
「この状況、まるで読んだことがあった異世界転移ものにあった展開ね。」
四人の内の一人の少し気が強そうな少女は簡単に今のこの状況を受け入れて、そうこの場にいる他の三人も思ってる言葉を口にした。
「そうだな、普通こういう場合は必ず誰かが召還に巻き込まれたものでそいつが誰よりも強いチートを得るという事になるんだよな。でもオレ達は丁度四人だから余りものはいないだろ。」
もう一人の少年はさっきの少女の言葉に同意しながら彼自身の感想を述べた。
「いいえ、こういう場合は誰かが邪神の加護を得て、その、他の人と敵対になる と言う流れたと……」
もう一人のさっきの少女より少し気弱そうな少女は上手く話題について行き、他の可能性を並べた。
「そうそう、そういう流れもあったな。でも、ちょっと意外だな、まさかあの天原さんもラノベを読んでいたなんて。」
気弱そうな少女 天原に賛同の声を上げるもう一人の少年、彼は大人しいそうな天原の事を見詰めた。
「えっ、えっと、宮野君その、そんな意外だったかな?学校のみんなも良く読んでいたから、その、少しでもみんなのお話に着いて行ける様にって。」
天原はもう一人の少年 宮野に意外と言われて少し慌て出し、直ぐに説明を付けた。
「へぇ、星乃もそうだったんだ。」
もう一人の見るに気が強そうな少女は星乃ごと天原とまたお話できる話題が出来たからだろうか、少し嬉しそうにしている。
「へぇって呑気すぎだろ、お前等!この状況を見てなんとも思わないのか?」
最初に回りを見渡した少年はこの状況下で楽しそうに雑談染みた会話をする三人の緊張感の無さに呆れ、怒りに近しいものが腹の底から湧き上り、声を少し大きくした。
「そうは言われてもな、本当に夢みたいで、なんだか物凄く実感が涌かないのだよな。」
宮野少年は隣に居る二人の少女の意見を求めた。
「そうですよね、夢じゃないかって思ってなんだか勝手にほっとした感じだよね。」
少女 天原星乃は自身の思ってる事を口にした。
「そうなんだよね、正にそう言う気分だよね。あっ、そういえばこんな建築物の中に召還されたって事はこれから誰かが迎いに来るだよね。皆はどんな人が来ると思う?わたしは聖職者で渋いお爺さんだと思うけど!」
宮野と天原の意見に共感しながら少女は前に読んだ事があるラノベの内容を思い出し、これからおきるであろう事に気付いたようにワクワクして、他の三人に聞いてみた。
「あっ、それならオレはとこかの国の姫の方だと思う!」
少女の話に宮野は喰らい付いた
「それ、私もそうだと思います。」
天原は宮野の意見に賛同した。
「だから、なんでお前等そんなに緊張感が無いんだ!もし迎いに来たのは魔王だったらどうするんだよ!」
この場で唯一良い具合な緊張感を保っている少年はまた緊張感の欠片も感じない三人に突っ込みを入れた。
「あぁ、確かに最近じゃそう言うパターンもあったね!」
少女の声からは依然として緊張感を感じ取れないものだ。
「「そう言うものもあったな(ね)!」」
宮野と天原は賛同の声を上げた。
カチャン
向こうにある扉が開いた。そこからぞろぞろと大勢な人が聖堂に入り、誰もが少し思い詰めた顔で四人の少年少女の方へ向かった。
少年宮野 京一と少年辻村健史、それから少女天原星乃に少女藤原凛音この四人の高校生はこの時代の勇者として召還された。
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エムベラド帝国より更に北、その北の果てにあった唯一城の中に数体程の異様な影が集まっている。
『皆のもの、揃っているな?』
此処の主として長いテーブルの端にいる影は先に言葉を口にした。
『はい、敬愛なる魔王様。三名程ご命令により欠席してる以外、きっちり全員が揃っています。』
此処の主を魔王と呼び、その魔王の左側に居る少し細長い影は立ち上がりその問に答えた。
『うむ、そうか。皆のもの良く集まってくれた。時は満ちた、我々の再起の時だ!』
魔王と呼ばれたものは立ち上がって両手を天に翳し、山をも揺らす程の音量で叫んだ。
『おぉ!ついに来たか、千年とは長がったもんだ!』
魔王とそれなりに離れている席に座っているデカイ影はまるで ずっと腹を空かした獣がこれから狩りに出掛ける ように、嬉しそうな顔を浮かべた。
『千年も経ちましたなのか?あっと言う間だったな。あの憎き人間はまだ生きているのだろうか?』
あのデカイ影の真正面に優雅に座っている少し細身な感じがする影はこの場にいる多数のものが気になる事を言い出した。
『それは大丈夫でしょ、幾ら強くてもあのものは人間。千年処か百年の時すら耐え切れないチッポケな存在なのだから。』
魔王の右側にいるこの場で唯一人間の女の姿をしてる影がさっきの問に答えた。
『かの我等の憎き仇であるあれは果して人間と言えのかな。あれなら人と言う枠を超え、不老な化け物になる事くらい意図も容易く出来てしまう気がするのだがの。』
魔王と一番離れているテーブルのもう片方の端の右側に座っている若々しくも老い耄れみたいな口調をしてる影は女の影の答えに異議を出した。
『やつが如何に生き長らえていようと所詮は人間、千年前より数段、いや数倍も強く成ってる今の我等の敵にすらならないだろう。』
魔王の左側にいる細長い影の直ぐ隣に居るこの場にいる者達と比べてかなり小柄な影は自信に満ちた顔で傲慢すら言える口ぶりだ。
『己を高く見るのも、敵を見下しすぎるのも余り賢いとは言えぬな。敵の力量と己の力量をはっきり理解せねば戦には勝てぬ!いくさはっ』
あの老い耄れみたいな口調をしてる影の反対側に分厚い鎧をでも着込んだような大柄な影の神経を逆撫でした小柄な影の発言に大柄な影は怒りを覚え、それを口にした。
『静まれ!敬愛すべき魔王様の御前だぞ!』
大柄な影の話す途中にあの女の影直ぐ横に座っている程良く隆起してる筋肉の上に程好く厚みの鎧を着込んだ生真面目な影は怒鳴り声を上げた。
『気にせずともよい、今回ばかりは余も気分が浮き立っているものだ。これでようやく千年遅れに我等の世が来た、これであやつの所為で遅れた分きっちりと人間共にその付けを払ってもらうじゃないか!』
魔王の方に揃って視線を向けた影達に魔王は右手で拳を握り力強く天に突き付けて、さっき以上音量でその場に居る他の影達に呼びかけた。その声に込められた魔力に反応し、丁度魔王の後ろの窓から見える空から太くて赤い雷が落ちた。
『おぅ、魔王様!』
細長い影は自分が仕えている主の力を目の当たりにし、思わず声が出た。
『魔王様!』
『魔王様!』
『王よ!』
『魔王陛下!』
『陛下!』
細長い影に連れられ、その場に居た魔王を除いた九つの影達はそれぞれ声を上げた。
『侵攻再開だ!』
魔王は天に突き出した右手を振り落とし、石作りのテーブルに叩き付け、悪意と殺意を撒き散らしながらドス黒いオーラを身に纏い、影達に命令を出した。