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第二十一話 乱れの始まり

ロベルトの介入によりベリオットにトドメを刺す事に失敗したかの襲撃者は気絶してる他の二人を担いで夜道を走る。


ロベルトから受けた警告通りに町を通さず、そのまま少し回り道して真横からへロス町を横断した。


一夜を走りながら過ごし、とある小さな森の中一時的休憩を取る事となった。


かつての生活から得た経験を頼りに、川辺で少し広い空きがある場所を探し、その途中に担いでいた二人は目を覚ました。


「ヤン、ハン、気分どうだ?」

一晩中二人を担ぎながら走り続けたやつが逆に今起きたばかりの二人、ベリオットに手刀でやられたヤンと同じくベリオットに拳で気絶したハンに聞いた。


「あぁ、爽快な気分とはいかないけど、体の不具合を感じない。」

二人の内、ヤンが先に答えた。


「こっちも大丈夫だ。それよりもジェイ此処は確か昨日……気絶してどれくらい経ったが知らないが、まぁそのあいつの所を襲う前の日にオレ達が休憩を取った森だよな。此処に戻って来たって事は…」

ヤンに続いてハンも返事し、辺りを見渡して見覚えがある場所だと気付き、一晩走り続けたジェイに聞いた。


「あぁ、心配ない。その父とやらが乱入して来た所為でこの手で確実に仕留める事が出来なかったが、かの人物が残した唯一の秘宝を使った、言い伝え通りならやつも死んでいる筈だ。」

ジェイはヤンそしてハンにあれからの出来事を説明した。


「そうっか、それなら安心だ!」

ジェイの説明を聞き、ヤンはほっとした。


「確かにそれならもう気にする必要がないな。あのものは強過ぎた、我等三人掛かりでもやつは遅れを取らないそれどころかもしかの秘宝が無ければと考えると寒気がするな。」

ヤンの言葉を同意しながらハンは昨晩戦った少年の事を思い出した。


「あぁ、今の内に摘んでおいて良かったと私も思っているよ。」

ハンの言葉にジェイは頷いた。


「じゃ、僕達もう家に戻れるよね?」

ヤンは三人の内リーダー的な存在であるジェイに嬉しそうな声で聞いた。


「そうだ、任務は完遂した。これより戻るとしよう、さぁ、集落の方へ向かうぞ!」

ジェイはヤンが聞きたい返事をして、休憩を取ってるはずなのにまた立ち上がって、二人に出発の合図を出した。


「「おぉ!!」」

ジェイは二人を担いで一晩中走り続けた事を知らず、単純にジェイの言葉を賛同して、雄叫びを上げた。


こうして三人は数時間後の休憩まで北に向けて歩き出した。その道中、任務を完遂したからだろうかとてもウキウキした雰囲気を漂わせた。


■□■□■


同時刻、先の戦で敗れた軍・王の二国連合軍は王国にあった一つの要塞で束の間の休憩を取っていた。


このロンデ要塞に到着したのは大よそ二日程前で、到着した日に丁度先に王国国王に報告させたものと鉢合わせた。


その者が持ってきた国王の命を受け、次の知らせが来るまでその場で待機する事となり、仕方なくこの二日間ずっとこの要塞に留まっているのだ。


それでも王国大使オルソンはいつものように行動し、今日も目が覚めたて直ぐこの要塞の練武場に向かった。


「今日もお早うですな、准将殿。」

練武場について、オルソンは先客が居る事に気付いた。その先客とはかの武人であった


「...貴殿も何時もながら早いお着きで、兵士達はまだ眠っているのというのに。」

武人ゴンゾは少し棘の有る言い方をした。確かに褒め言葉だが、その逆に兵士の調練方がなっていないと取れるものでもあった。


「はは、私のような老いぼれは余り長く眠っていられないのだよ。今は非戦時無理に若者達を私に合わせる必要はないのだと私は思うのでな。」

きちんとゴンゾの言葉の二つの意味を読み取れたオルソンは逆に嬉しそうに笑い、ゴンゾに弁解の言葉を掛けた。


「左様ですか、では、自分はあっちで続きますから、貴殿もご自由に。」

ゴンゾはオルソンの弁解の言葉を聞き流し、軽く誤魔化したら直ぐその場から離れて行った。


「はぁ、やれやれだな。そやつ、まだあの事を根に持ってるのかな。」

近頃からずっとあの調子であるから今回も呼び止めなかったオルソンは前回のようにゴンゾが去って行く姿を見て、前回同様に溜息をついた。


「オルソン様!報告です、王都から知らせが来ました!」

一人の兵士が急いでさっきオルソンが通った道からオルソンに走り寄った。


「ほぅ、もう か。見せてくれ。」

かなり離れている王都から二日もないのに知らせが来た事に感心しながら、兵士に指示を出した。


「はっ!こちらです!」

兵士は直ぐ懐から一通の封筒取り出し、オルソンに渡した。


「ふむ......これはまた...功を急ぎ過ぎですな殿下。陛下も何故御留めにならないのでしょうな...ふむ、仕方が無い。そこの君。」

オルソンは封筒を受け取り、中身を読むと中々に複雑な気分になり、今だにその場で突っ立っているその兵士を呼んだ。


「はい!」

かなり訓練されてるその兵士は即座に背筋を伸ばし、大声で返事した。


「連合軍全体に知らせておけ、私はこれからこの要塞を離れ王都に向かう、そしてこれより全軍の指揮権を軍国准将ゴンゾに引き渡す。ゴンゾ准将の方には私自ら知らせておく、他のものにきちんと伝えておけ。」

オルソンは次の指示を出した。


「はっ!判りました!」

その兵士もまた直ぐに返答した。


「判ったらとっとと行け。」


「はい!」


兵士は一目さにさっき通った道を辿り、凄い勢いでこの場から離れた。その彼が離れた後、オルソンはもう一度受け取った手紙を見直し、見間違いじゃないと確認した後に魔法で一気に灰にしてさっきゴンゾが向かった方へ足を運んだ。


オルソンが受け取った手紙にはこう書き記されていた。


かの準備は整った、直ぐにでも始めるとする。よって王国大使オルソンに命ずる、連合軍の指揮を軍国の指揮官に引渡し、速やかに王都に来られたし。   王太子 オールランド・ローランド


■□■□■


ローランド王国 王都ローラン その王城の真下にある地下聖堂にて約千程の人が集まっていた。


彼等は皆同じ目的でこの場に集まり、それぞれ違う場所から集まってきた者達だ。あるものは王国に出身の兵士、またあるものは軍国出身者だ。


『皆のもの、良く此処に集まってくれた。この場に立てない王国国王陛下と軍国総帥閣下に代わってこの私が皆に感謝の意を伝えよう。有難う、本当に有難う!』

千人の中この聖堂の中心に居た一人の中年男子が魔法では無く、彼自身の声でその場に居た者達に伝えた。


彼の声を聞いて皆彼の方に視線を集め始めた。


『この中に国王陛下やまたは総帥閣下自らこの場に集まった訳を教えてもらったものがいよう、もちろんそれを聞いてないものもいるであろう、だがこれだけは聞かされたのであろう、我々は此処から二度と出る事が出来ない、此処が我々の死に場所になる事を!』

男はより一層声を大きくした。その声から怒りではない、悲壮な決意をはっきりと感じ取れるものだ。


「「「......」」」

その男の声をきちんとこの場に居る全員に伝わり、皆が皆その口を慎み、黙したまま男の声に傾けた。


『だがもう一度かの国王陛下と総帥閣下に代わって言わせて貰う。我等は此処で死ぬ!だがその死は新たなる平和への礎となる!』

はっきりと応えてくれなくとも男は依然として大声でこの場に居る者達に向けて叫んだ。


「「「......」」」

やはり他の人達は黙したままだ、しかしその中、数名、数十名、いやそれ以上の数でさっきまで死した灰のような目をしている人は再びその目に希望の光が灯った。


『では、皆のもの私に続けて詠唱を...』

男はそう言って回りを見回し、皆きちんと準備しているかを確認した。


『では...我等は此処に願う』

確認が出来て、男は見本になるようにと先に詠唱の言葉を口にした。


「「「「我等は此処に願う」」」」

他の者達も復唱した。


『この血肉の全てを捧げ、世界を渡る橋にならん事!』

他の人達の復唱が終わったらまた男は続けた。


「「「「この血肉の全てを捧げ、世界を渡る橋にならん事!」」」」

そして皆もまた彼の後を追うように復唱をした。


この場にいる人達の言葉に反応し、聖堂の床に刻み込まれた魔法の陣が輝きを放ち、その光は次第に大きくなり瞬く間に聖堂全体を包み込んだ。


数秒の時間が経ち、光は少しずつ治まっていき、その光と共に本来そこに居た千ものの人の姿も消えてなくなった。

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