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第二十話 一人が倒れただけで誰かの世界は狂う

今宵、私は珍しくも眠りの途中で目が覚めた。今日はかなり疲れている筈だが、なんだか物凄い悪い夢を見た、その所為で嫌でも起きてしまった。


その後私は何度かもう一度眠りに就くつもりだが、やはり寝付けなくて、仕方ないから隣で静かに寝息を立てている妻を起こさない様に私はベッドから降りた。


夜は未だ深い、もう一度寝付ける様に私は気分転換の為外の景色を眺めた。


太陽の光がなく月と星の光しかない夜でも我が家の庭の景色は最高だった。


ゴン


程良く肩の力を抜けてこれなら眠れると思った矢先に外からとんでもない爆音が轟いた。


「何、どうかしましたの、あなた?」

その音に妻シェリアは起こされ、窓辺に突っ立っている私を見詰めた。


「大丈夫だ。ただ今外で凄い音がしたのでな、一様私が様子を見て来る。」

私は妻が落ち着いていられる様に少し嘘混じりの言葉を返した。


そうこれは嘘だ、いやあながち嘘とも言えない、ただまだ知っている事を全部伝えていないだけだ。外から確かに凄い音がした、だがそれは先の戦で私が嫌と言う程聞き慣れた爆発音だ。


誰かが戦っている。誰か?決まっている!


「そう、じゃ気をつけてね、あなた。」

妻も私に心配させない様に笑顔を見せた。


「あぁ、じゃ行ってくる。」


「うん、あなた、いってらっしゃい。」

私達はそう簡単な言葉だけを交わし、上着を取ってそのまま私は寝室を後にした。


「旦那様!」

私を呼びながら直ぐ私の所にミランダが走り寄ってきた。


「どうした、ミランダ?」

私はミランダに聞いてみた。


「はい、実はあの音の所為で起こされましたが、念の為にとお坊ちゃまのお部屋に見に行ったのですが、お坊ちゃまがその、お部屋に居ないのです!それで厨房や食堂など、行きそうな場所を探したのですが、見付からないのです!」

相当焦ったミランダは私を相手にかなり荒れてる声で話した。


「大丈夫だ、アイツの居場所はわかっている、だから安心して良い。それより屋敷のもの達に伝えろ、一歩も屋敷から外に出るな、伝え終わったらシェリアの側に居てやってくれ。私はちょっと出掛けてくる!」

私は慌てているミランダにきちんと声が届けるように少し声を大きくして彼女に指示を出した。


「そうなのですか!判りました、今向かいます!」

本当に珍しく慌てているミランダは私の言葉で少しは安心したようで、直ぐに私が下した指示に従い、下の方へ向かった。


その後ろから私も直ぐについていき、階段を降り切った所で彼女は中に有る侍女達の部屋へ向かい、私は玄関から外にでようとした。


「あぁぁぁぁーーーー!!!!」

誰かの悲鳴が聞えた。とっても辛そうに喚いて、叫んでいるのが判る。


もしかしたら と私は焦った。


急いで玄関から出て、直ぐそこで右に曲りベリオットの部屋の窓の真正面に向かって全力で走り出した。


我が家代々に遺伝するかの遺伝病と共に受け継がれてきた超人的な身体能力を駆使し、十秒前後に私は目的地に辿り着けた。


そこに一人の見知らんやつが片手にナイフを握り、もう一人背中を見せその手に持つ身の丈以上に大きい大剣を杖代わりにしながらも跪いた少年に近付いて行く。


「少しは悪く思っているよ、だが此処で貴様の息の根を断たないと後に我々の喉元に突き刺す最も鋭い刃になるかも知れないから。さらばだ、我等の平穏なる生活の礎となっ!何者だ!」

ナイフを片手に持ってるやつはナイフを持った手を上げ、呟きながらもう一人跪いている少年を刺そうとした時私は途端の思い付きでそこに転がっている石っころを飛ばし、見事やつのナイフに命中した。ナイフが打ち落とされた事に切れてやつは叫んだ。


「それはこちらが聞きたいものだ。私の家を前に、私の息子を殺そうとしたやつに何者などとふざけた質問されとは思っても見なかったものだ!一度だけ通告する、私がまだ正気で居られる内にそこに倒れているやつを連れてこの町から出て行け!」

背中を見るだけで判るそこで跪いている少年は私のたった一人の息子だと、故にこいつ等が許せない。だが声を大きくし過ぎるとシェリアに聞かれる可能性がある、だから抑え目の声で持てる殺意を全て言葉に込み、今でも怒りで狂いそうになるくらいな目でやつを睨み、そう‘通告’した。


「息子?なるほど、貴様もアイツの家系か。だが残念だ、こいつは我等の命を賭けでも始末しないといけないっ!」

やつは私がベリオットの父である事を納得したようだが、直ぐに続く言葉が非常に癇に障るものだからこちらからそれを止めさせた。


「私はこう言ったのだ、一度だけだと。これ以上この町に留まってみろ、君とそこに居る二人だけの命で済むと思うなよ。今はまだ知らなくとも明日にでも明後日にでも君の言う我等と言う君の仲間を見つけ君が仕出かした事の償いを強要する事になる、もちろんそれはただ死ぬなんで生易しいものではなく、もっと絶望的のものでだ。」

反応する暇も与えずに私は一瞬でやつの後ろを取り、その真後ろからやつの耳元に囁いた。


「......」

私の囁いた言葉にどうな想像をしたが知らないがやつは沈黙した。数秒間にどんな思考の紛争をしたか判らずにやつは素直に私の言葉を聞き入れて他に寝転がっている二人を一人ずつ片方の肩に乗せ、なにも言わずに此処から立ち去った。


本当に帰ったがどうか確かめるために私はそいつらの後ろ姿をずっと見詰め、完全に居なくなった後に私の吊らしている心が半分くらい降りて、直ぐにベリオットの側に寄った。


「ベリオット、ベリオット!ベリオットの体が熱いな。確りしろ、おいベリオット!くそっ、確りするんだベリオット!父さんが必ずお前を助けてやるからな!」

何度もベリオットを呼び掛け、何度もその体を揺らした。しかしベリオットはおきない、こうしちゃ居られないと私は思った。


ベリオットを抱え、私は屋敷に戻り、ベリオットを彼自身の部屋へ連れ戻した後もう一人の侍女にその世話を頼み、私はまた屋敷から出て行った。


■□■□■


屋敷から出て私は全速力で聖域の山に向かった。どれだけの時間が経ったのか、時間を確認する隙すら惜しいと思い確認せずに感覚的に二、三分くらいの時間が経過した所で私は目指している聖域の山にある唯一の洞窟の前に来た。


何度目になるか憶えていないが基本的にどれもベリオットの為に此処に訪ねてきた事は確かで、慣れた動きでいつも使ってる転送門を開き、迷わずにそれを潜った。


何回目だろうこの白の空間を目にするのは、残念ながら今はそんなものを見る隙も無かった。


「居るんだろう、出て来い、ローラン!」

私は以前此処で会ったあの霊みたいな自称先祖様の名を呼んだ。


「...おや、もう来ているという事は、あの今代の所持者、ベリオットとやらだったかな何者かに襲われたな。」

私の声に反応したのだろうか、周りの灯りは一気に消え、この空間のど真ん中に以前一度だけあった事のあって、そして今正に探している人物が姿を現した。


「知っていたのか!?なら何故前回私が此処に来た時、教えてくれなかったのだ!教えてくれればベリオットはこんなつらそうになる事はなかったはずだ!」

宙に浮くかの人物に私は怒鳴りつけた。


「変わらないさ、これだけは。」

私の態度がなんとも思わずにローランはいつもの口調で返事した。


「変わるのだ!最初から知って居ればっ」


「だから知っていようとなかろうと結果君の息子、今代の所持者であるベリオットは必ずこうなるものなのだよ。」

八つ当たりである事は判る、今からそう言う事言っても何も変わらないことも。だがどうしようもないこの怒りをぶち上げたい気分なんだから、私は気持ちの流れるがままに言葉を発した。しかしまだ言い終わっていないのにローランは割り入った。


「だからお前は何を持ってそう決め付ける!」

溢れ出す怒りは治まりが付かないまま、私はより一層感情的になっていた。


「君の来訪でだけで私が言い当てられるから、それが確証だよ。それよりも君はまだそんな事で時間を浪費するつもりなのかい?」

私と正反対で常に平常を保ち、ローランは説明し、私に聞き返した。


「時間の浪費だと!これは大事なっ」


「浪費だよ。君の今()()大事な事でどうしても私に聞きたい事があった筈じゃないのか?」

ローランの言葉がきちんと頭に入れない状況で更にローランに突っ掛る、しかしそれもまたローランは割り入り、態と一番と言う単語を強調しながら私に聞いた。


「一番大事なのはもちろんベリオットの事だ!」

私は即答した。


「それならば落ち着きたまえ!話が聞けなくては答えのしようが無いのだよ。」

ローランは私を一喝した。


「っ!...すまない頭に血が上りすぎたようだ。息子は、ベリオットは確かに誰かに襲われた。その対峙してる間に起きた事は私は知らない、息子の体には何の外傷も無い、本当に掠り傷すら見当たらないのだ。だが体が異様に熱い、熱すぎて素手では触る事する出来ないのだ。」

ようやく冷静を取り戻す事が出来た私はローランに詳しくベリオットの容態を話した。


「...なるほど。そう言う状況か、大体予想がついた。そうだな...今代の所持者、ベリオットとか言ったな、君の息子はもう一度経験している。」

ローランはそうゆっくりと私に告げた。

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