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第二話 異世界の神様も優しくないようだ

俺の意識が戻ってからどれくらいの時間が経ったのだろうか、一つの振動が伝わってきた。


暖かかくって俺を包み込んだ水が勢い良く減っていき、何らかの力が俺をこの居心地良い場所から追い出そうとする。


長くても実際は短い一時間?が過ぎ俺の身に掛かる力が無くなり、前のような水は無いものの暖かい感じがした。


ゆったりとした光が俺の目蓋を刺激し、しかしながらまるで自分の体じゃないように目を開ける事がままならない。


周りが騒ぎ、聞き慣れない発音に知らない言葉が飛び舞う。そんな中、一人の女性の声がした。俺は抱き上げられたような微かな浮遊感と何故か落ち着くことの出来る安心感を感じた。


周りが静かになり、俺を抱き上げた女性であろう足音だけが こ こ こ と響き、数歩歩いたら立ち止ったようにその足音もピッタリと止まった。


暖かく感じる温もりが二つから四つへそしてまた二つに戻り、そこでようやく俺は目を開ける事が出来た。


一人の西洋風の女性は俺を両手の中に抱えていて、そのブロンドの色をして少しパーマーが掛かっている長い髪は全部俺の反対側に纏めていた。


俺はその女性をじろじろと見て、その顔にあるパーツがバランス良く整えている事に気付き、隣からさっき聞いた女性の声が聞こえた。


その女性の言葉の所為だろうか、俺を抱かかえている西洋風の女性は微笑み、さっきも綺麗な笑顔だったのにそれ以上に輝くような笑顔を見せ、西洋風の女性は俺に話しかけた。


通じない言葉の筈だが、それが何故かその意味が判る。


今の状況を理解した。


どうやら俺は転生したようだ、新たに生を受けそして今は赤ん坊としてこの西洋風の女性の子供になったみたいだ。


俺は唯一何とかして少しは意に添えて動かせる右手を挙げ、その西洋風の女性今世に置ける俺の歯は親を触ろうとした。


母さんは俺の意を察したようにそっちの方から近付き、俺の小さな右手に顔を擦り付けた。


母さんの頬から伝わってくる温もりが心地良くて、俺は自然と笑いを零れた。


俺が笑った事に対し周りは又騒ぎ出し、しかし俺の方は何故か得体の知れない眠気に襲われ、それに逆らうとしたが数秒もしない内に寝落ちてしまった。



産まれたばかりの赤ん坊が寝付けた後直ぐに一人の男がドアを開けて中へ入ってきた。


「産まれたのか?」


男は完全に気分が高揚して上手く音量を抑えることが出来なくて大声が上げた。


「しぃ~お静かにお願いします、つい先程眠りに付いたばかりですから。」


一人の侍女がこの屋敷の主人である男に威圧的な態度を取りながら敬語で男に お静かに と言い付けをした。


「あ、あぁ、済まない、どうも気持ちだけが先走ってな、中々に落ち着かないものだ。それで親子共に無事だろうな?」


男は侍女の言葉で少しの冷静を取り戻し、明らかに屋敷の主人に対する態度でないのにそう言った態度を取った侍女に男は怒らない所が逆にこっちから謝った。


「えぇ、母子共に無事です。今は奥方様がお坊ちゃんを抱っこしていて、お坊ちゃんは寝息を立っています。」


侍女の方も長年の間仕えで来た主人であるから当然のように返した。


「なぁ、君は今お坊ちゃんと言ったな!言ったような!男の子か、男の子なんだな!」


男はさっきの言い付けを忘れ、またしても声を大きくした。


今回男に侍女からの警告はないが、その代わりに殺気が篭った視線で睨まれてしまった。


その視線に死を予感する男は自ら無理矢理声を抑えて、もう一度小さい声で侍女に聞いた。


「えぇ、奥方様はまだ起きていらっしゃいますと思いますので、顔を見せて差し上げれば良いのかと。」


「あぁ、そうだな。」


素直に声を抑えた男に侍女は地面に向くように視線を逸らし頭を下げて 失礼します と言ってその場から立ち去った。


「シェリア、入るぞ。」


男は優しい声で中にあるものに声を掛け、中へ入っていく。本来はドアが閉まっていなくでも、そう言うことには気に掛けている男だったようだ。


「あなた...ほらあなた、あなたの子よ。」


侍女の言う奥方様、男が シェリア と呼んでいる西洋風の女性は中に入って来た彼女の夫であり、それと同時にこの屋敷の主人でもある男に腕の中で気持ち良く寝息を立たせている赤ん坊を見せる。


「おぉ...」


男は妙に緊張して、シェリアの腕の中にお寝んねしてる赤ん坊を見詰める。


「こいつ何だかシェリアに似てるな。」


男は赤ん坊を見詰めるうちにその緊張が解き、その赤ん坊をシェリアと少し見比べた。


「ふふ、何を言ってるの、あなた。ほら、この子の鼻と耳の形はあなたにそっくりじゃない。」


シェリアは軽く笑いを零した。


「そうか?ならこいつは私達二人に似てるのだな。」


男はそう言って赤ん坊の小さな手を指一本で上げ下げして、まるで子供のように嬉しそうな顔を見せている。


「もう、あなたたっら。こいつこいつって、わたくし達はちゃんと予め産まれて来るであるうこの子に名前を付けた筈じゃない?」


シェリアの言葉が男に耳に入り、男は思い返すように天頂を見る。


「そう言えば...確か女の子ならリリーナで男の子だったら...」


男は記憶を掘り返し、見事にそれを思い出し確認をするように口にした。


「そうそう、やはり覚えでるじゃない。そうよ、そしてこの子は男の子で、だからこの子の名前は...」



男とシェリアと言う女性は今日初めて親になった、その初めての経験が二人を少し興奮させた。


その所為か二人はまだ起きもしない事や起こり得ない事など色々と妄想を重ね、男とシェリアは自分の中にあった一家のこれからについての妄想を暴露し合っていた。


男はシェリアが子供を産み落としたばかりと言う事実を忘れ、シェリア自身もそれを意識しないくらい気持ちが高揚してしまった。


結局さっきの侍女、前に赤ん坊をシェリアに渡し、先ほどまでに男と会話を交わしたあの侍女が止めに入るまで二人はずっと続けていたのだった。



そして男の屋敷に新たに一人の家族が増えて二年程の時間が経った。


「お坊ちゃま、待って下さい!」


一人の侍女が一人の子供の後ろから追い掛ける。しかしながら中々追い付けることができなくている。


彼女が お坊ちゃま と呼び、先頭を走る二歳児は他の誰かでは無く俺だ。


未だ二歳の子供でしか無い俺が侍女に追い付かれずに先頭を走る事が出来たのはちょっとしたズルをしたからだ。


俺は自身の小さい体を上手く使い、大人の通りにくい所を通り、その上侍女達が癖のようにもってる反応を利用したのだ。


「もうようやく話を聞いてって、お坊ちゃま!」


俺はわざと立ち止り、一息吐く。


侍女は俺が立ち止った事を見て、俺が待っているのも知らずに少しほうっとして、目を閉じ、胸を撫で下ろしながら俺に近付こうとする、しかし当然それを待っている俺はチャンスを逃さず、また走り出した。


騙まし討ちのダッシュのお陰で俺はまた侍女との距離を引き離すことが出来、少しの余裕がある間に俺は四周のものにも意識を向けた。


歩く事が出来るようになって一年以上になるが、周りにあるものはどれも新鮮で記憶に無いものであった。


新鮮なものに俺の注目した、その所為で注意が足りず 何か にぶつけてしまった。


ぶつかる時の反動で俺の小さい体はバランスを崩し、尻餅をついた。


何だろう? と俺は思いながら前を見る。その何かが誰かの足てある事が判明し、そのものが誰かなのかを知ろうと上を見上げる。


俺がその人の顔を見る前にその人はしゃがみ、俺の両脇の下に両手を入れ俺を抱き上げる。


「うん?おとうチャマ?」


俺はようやくその人の顔がはっきりと見えて、それが今世の俺の父親である事が判った。


「おぉ、ベリオット、お前はこんな所で何してるんだ?」


父さんは俺の目を真っ直ぐ見詰めながら緩~い声で聞いて来る。


「えっと、たんけん?」


俺は言葉を考え、最も自分のやってることに合った言葉を口にした。


「たんけん?」


父さんは わからない が書かれたような顔で俺の言葉を復唱した。


「うん!」


俺は嬉しくそして力強く頷く。


そう探検であるのだ、今までの行為は。


「おっふ、お、お坊ちゃま、よっ、ようやく追い付きました。」


さっき俺を追っている侍女がようやく俺に追い付き、余程疲れているだろうか息が切れきれだ。


「どうしたのだ君も、そんなに息を荒くして?」


父さんは遅れて到着した侍女に聞く。


「だ、旦那様!?えっと、その、お坊ちゃまが何も言わずにお部屋から出て、廊下を走っていましたので追い掛けでいましたのですが、中々追い付けなくって。その...」


侍女は自分が悪い事をしたように答える声がどんどん小さく成って行った。


「おとうちゃま、ぼくがかってにはしりだしたから、そのひとはなにもわるくないよ。」


俺は父さんに弁解する。


「そ、そうか。まっ、まぁ、あれだ、お前はどうして何も言わずにお部屋から走り出したんだ?」


二歳児の俺の口から出る言葉に慣れない父さんは躓いたようにしながらも俺に訳を聞いた。


「さっきいったよ?たんけんだって。」


俺は父さんに なんで覚えてないの で明らかに不機嫌な表情で言う。


「そっか、そう言えばそう言ったな。探検か?したい気持ちも分からなくはないが、お前は体が弱いからあんまりお部屋から出ない方が良い。」


言いたげに言えない複雑な顔で父さんは俺の顔を覗き込む。


「それっと!」


父さんは俺にそう言いながら俺を肩に乗せて、所謂 肩車 をしてくれた。


「あの、旦那様?」


歳相応にはしゃぐ俺、しかし隣に居る侍女は不安がる声で父さんを呼び止めた。


「あぁ、大丈夫だ。後は私がやるから、君はもう下って良い。」


父さんは侍女の顔から直ぐにその意を察したようで、侍女に下るよう指示を出す。


「はっ、はい、判りました。しっ、失礼します。」


侍女は一礼をするように頭を下げ、少し噛みそうだったが何とか上手く言葉を発して、その場から離れた。


「おとうちゃま。」


侍女がその場から離れ、父さんの肩の上に居る俺は父さんを呼んだ。


「うん?どうした?」


父さんは足を止めず、ゆっくり前へ進みながらも俺に聞いた。


「ぼくどうしてもおそとをみてみたい。」


俺は素直に望んでいるものを父さんに話す。


「そうか、そうだな何時かは外に連れ出してやろう。」


「いまはだめなの?」


俺は追問した。


「う~ん、今は無理かな。お前の体の具合がもう少し良くなってからかな?」


いかにも大人が子供を誤魔化す時に言うセリフだが、それが本当であるのと何故か俺にはそう感じた。


「じゃやくそくだよ、からだがよくなったらおそとにつれだすって。」


俺は手に力を入れて父さんの頭をべしべしと叩きながら、そう言う。


「あぁ、約束だ、お前が良くなったらお前のお母様も連れてお出掛けだ。」


父さんは頭上の痛みをものともせずに俺と約束の言葉を交わした。


子供の体だろうが俺の心もまるで幼児化したようでそれだけのことで喜びを感じ、もう少し叩く力を強くした。


そして心の中に今の俺自身の体の状況を思い返した。


病、今世の俺が生まれた時から病に掛かった。いや、その表現は正しくないか、正確には生まれて来る前、既に掛かる事が決まっている遺伝病だ。しかも最悪の場合は死すら有り得るくらいのな。


俺を転生させたのがこの世界の神様なら、この世界の神様もまた俺には優しくないようだ。

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