第十八話 心地良く眠れる夜には邪魔者は付き物
イザベラ議会I・S・B・L規定
その一、以後本議会に関わる行動に置いてサポート対象であるイザベラをターゲットと称し、撃墜すべき対象ロベルトをボギーと呼ぶ事とする。
その二、作戦中本議会に在籍してる者同士、互いを差別無く同志と呼ぶ。
その三、本議会における全ての作戦は同志シェリアとボギーと仲を傷付かずにターゲットとボギーをくっ付けさせる事を最終目的とする。
その四、規定三に基づいた作戦を議会に在籍者は無条件で協力する。以上
因みに、ISBLとはイザベラから略したものじゃない。
あの後俺と同志シェリアごと母さんにそれから同志ジュド、俺達三人による討論会はイザベラおばさんの乱入により一時的な混乱に陥った。
まぁ、こちら イザベラ議会 の同志俺を含めた三人が最初からイザベラおばさんの乱入を予想していた。
なにせ彼女の事を熟知してるものが三人集まっている、それ故に彼女が取る行動は最初から予想しているものだ。
だから母さん達二人と俺はその乱入よりも先に様々な議題を出し、速やかに意見を纏めた。
この短くも長い時間で我々はこの議会に置ける基本的なルールを決め、早速我等のデビュー戦、第一の作戦を決めた。
イザベラおばさんの乱入が我々の初めての戦いの狼煙を上げた。俺、同志シェリア、それから同志ジュドは彼女の性格を逆手に取り、目一杯彼女をからかった。中々にからかい甲斐があった仕事で、見事に我等の狙い通りに彼女を足止めする事に成功した。
本来ならば、まだまだ続けていけるものだが、待ち望んだ父さんが帰って来た事で止むを得ず、作戦を第二段階へ移行した。
さっき同志ジュドが持ってきた情報通りではあるが、いつもよりはほんの少しだけ遅い時間で父さんは帰ってきて、きちんと外の声が聞えるように会客室のドアを少しだけ開き、父さんが中に入って侍女の誰かが出迎いに行って互いに挨拶を交わす声を第二段階開始の合図にした。
その合図と共に同志シェリアはイザベラおばさんを会客室のもう片方のドアから連れ出して、そのまま同志シェリアの寝室へ向かった。
そして俺と同志ジュドはさっき入った方のドアから出て、真っ直ぐに玄関へ向かい、父さんを足止めした。
結成したまだ数時間しか経っておらず、その上で最初の作戦である筈なのに我等三人の連携は完璧、全てが狙い通りに事を運び、イザベラおばさんと父さんを一つの食卓に座らせた。
まぁ、当然その横に同志シェリアを始め、同志ジュドと俺も一緒にその食卓に座り、食事を摂る事になった。
二人はこの食卓が我等三人が仕組んだものとも知らずに、イザベラおばさんは同志シェリアにいつもの軽鎧と違い、ドレスに近い白いワンピースに着せられ、父さんの左側丁度同志シェリアの向こう側の席に座っている。
いつもと違う服を無理矢理着せているからだろうかそれともさっき我等がいじめ過ぎたか、イザベラおばさんは普段と違って男染みた行動じゃなく淑女らしく淑やかな仕草を心掛けているようで、逆にその目当てである父さんの方はなんとも思わずにただ 珍しいな と呟いただけで疑う事すらしなかった。
本来食事中にも作戦を新たな段階へと移行すべきだが、I・S・B・L に置ける掟の一つに同志シェリアをも考慮に入れないといけないからしない事になった。
結果普段通り...いや父さんは普段通りでイザベラおばさんは今まで見たことの無いふわふわしでて何だか落ち着かない感じで二人共本当にただ食事を進めただけで、たま~に会話を交わそうと思えばイザベラおばさんから話し掛けても父さんからでも二人共仕事の事ばかりで、進展が感じないまま二人共食事を済ました。
もちろんこの事態も一様我等の予想内で、最悪の事態を備えるために次の策も用意してあった。しかしそれを悟ったのか、イザベラおばさんは元の服にも着替えずにそのまま逃げるように屋敷から出て行った。
普通の状態じゃない事を思う我等の同志ジュド念の為にその後をついて行って、万が一が無いように護衛した。肝心なイザベラおばさんが居なくなり、俺と同志シェリアは止むを得ず一時的に活動を中止した。
結局今回の我々結成から初の作戦は最後の最後以外に全て読み通りに事を運べたが、余り良い戦果を挙げる事が出来ずに終ってしまった。
その後、母さんと俺はお互いの部屋へ帰り、部屋へ戻った時は既に夜が更けていった。
夜が齎す眠気と僅かな疲れに俺の足を動かし、勝手にベットの所に連れられて、ベットに引っ掛かって転んだようにベットの上に倒れ込み、ベットに顔がつけた途端に俺の意識が遠くなり、そんなに時間を要せずに俺は眠りについた。
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夜は更に更けて行き、本来ならいつもの様に俺は熟睡から目覚める事なく朝まで気持ちいい眠りに就いている筈だ。
だが今宵はそのいつも通りと違った。
『警告、警告!不審人物の接近を確認!』
俺の耳元に響く警告音は俺の眠りを妨げる。
「うっ、な、なんだ?」
前世の頃いつも悩まされている目覚まし時計のアラームよりも強力で直接脳に響くからどうしようもなく俺は重く感じている目蓋をこじ開け、未だたるい体を無理に起こした。
『警告、警告!不審人物が複数こちらに接近して来ます!』
俺が目を覚ました事で五月蝿い警告音は鳴り止み、その代わり警告の内容が詳しくなった。
「…不審人物?……本当の様だ、三人もいるのか。父さんと母さんは……寝室にいるな、未だこいつらの事に気付いてない様だ。それならっ!」
警告を元に俺は脳内地図で向かって来る不審人物が三人いる事を確認し、一様父さんと母さんの方にも確認して二人はその存在に気付いてない事が判明し、ある決心をした。
幸い服を着たまま寝たから特に準備も必要なく、戦いになるだろうと思い、程良い緊張感が眠気を追い払い、俺は気を引き締め、軽くジャンプして未だに天井に付けているデュランダルを手にしてまた軽く着地した。
ちゃんと起動してるかどうかを確認する為俺は一気にデュランダルの全体を見わたし、その剣身に蒼いラインが走り、きちんと起動してる事を確認できた。
「準備万端だ。」
俺は自分に言い聞かせ、ゆっくりとした足並みで窓辺に近付き、それと同時にデュランダルを背中に付けた。
「...あれだな、よし、視認できた...そろそろだな。」
窓から外を覗き、外になにものの影がこの屋敷に近付いてくるのが見えた。脳内地図で確認した所、もう四十メートルも無い所まで来ている事が判り、俺は窓を開けた。
窓が開けた瞬間に十一月に相応しい冷たい夜風が吹き込み、一瞬冷たく感じたが、高揚してる気持ちが先行してそれもほんの一瞬で収まった。
『斥力場オン!』
俺は心の中でそう念じて、そしてそのまま此処が二階である事を無視して窓から飛び出した。
斥力場を使って開けばなしになった窓を栓をせずにただ閉めて、斥力をクッションに使わず、俺は重力に引き摺られて落下していった。
着地目前で俺は出来るだけ体を伸ばし、真っ先に足が地に着き、その一瞬でしゃがみ込むように思い切り体に掛かる重力を足へと移し、それと同時に足で地を蹴って加重力を逃がしてそのまま体を丸め前へ一回転して受身を取って、間も置けずに俺は直ぐに立ち上がった。
「何者だ、お前達?」
立ち上がった俺は向こうにいるやつ等の方へ歩き出し、大き過ぎる声を出さないように少し声を抑えて、向かってくるものたちに問をした。
「「「......」」」
向かってくる三人も俺の事を確認できたように離れて歩いていたが、徐々に近寄って行き、着物に近しい白い服を着た三人は俺の問を沈黙で返した。
「もう一度聞く、何者だ、お前達?」
返事しない三人を見て、俺は足を止め、背中にあるデュランダルを抜き、切っ先三人に向けもう一度質問した。今度は少しだが殺意の混じった声でだ。
「視認した、こいつで間違いないだろう。」
俺の言葉に三人は揃えて足を止め、三人の内真ん中に居るやつはそう言いながら他の二人を見た。
「あぁ、あれを所持している以上、先ず間違いは無いだろう。」
左側(俺から見た)のやつも俺を無視して、真ん中のやつにそう返した。
「反応からしても、そいつで間違いない。」
右側のやつも直ぐにそう続けた。
「そうか、じゃ...」
真ん中のやつはもう一度左右の二人を見て、アイコンタクトが取れたように頷き、他の二人もきちんと理解したように頷いた。
「こっちに向け!俺の質問に答えろ!」
不審者に無視された事にイラっとした俺は思わず声を大きくした。
「残念だが、死に行くものにそうする必要を感じない!散れ!」
初めて俺の声に反応した真ん中のやつは俺に返事すると共に右手を挙げ 散れ と思い切り横へ振った。
その声と連動したように他の二人は同時に左右に散開した。