第十七話 誤解はいつも女の一言で解かれる
「い、意中の人って、そ、そんな人、わ、わたしには居ないわ。」
図星だったようで、イザベラおばさんは取り乱し、口調さいも変わってしまうくらいだ。
「そうそう、その人と早く結婚して、そうすれば俺もおばさんじゃなく、お母さんって呼ぶ事になるだろう。」
イザベラおばさんは完全に取り乱してる、だから俺もそれを機に思ってる事を言い出した。
「えぇ!?」
俺の言葉が止めを刺したように、イザベラおばさんは固まった。
「そうそう、ってあら、ベリオット?」
隣の母さんも俺の言葉に驚いたようだ。
...これって失敗した...よな。
母さんが隣に居たことすっかりと忘れていて、口が滑ってとんでも無い事を言い出して仕舞った!
母さんの一言でまた母さんの存在を気付いた俺は今すぐこの場から消えたいという衝動を抑え、来るかもしれない嵐に備えた。
「ベリオット!貴方も知っていたの!イザベラがロベルトの事好きだって事に!」
母さん確かに驚いた、まるで自分だけの秘密が他人にも知ってしまったように、そう自分だけが知っている筈の秘密が他の人に。
「「......えっ!」」
固まったままのイザベラおばさんは母さんのその一言で意識を取り戻し、俺と揃えて視線を母さんの方に向け、余りの驚きに勝手に間抜けな声だけが飛び出した。
「もって、それじゃ母さんも?でもさっきイザベラおばさんに早く意中の人と結婚って...」
早くも気を持ち直した俺は母さんの言葉が理解できずに質問をした。
「うん、それは私の本当の気持ちよ。イザベラなら問題ないし、彼女とならきっと私達はこれ以上賑やかで、これってない程に仲の良い家族になれる気がするわ!」
母さんは俺が理解出来ない事を察して、少し熱くなって俺に語った。
こんな母さんを見るのは産まれて初めてだ。
「そうっか、じゃ母さんも同意派だよね。これなら母さんと俺で共同戦線を築き、お互いをサポートし合ってより一層大掛りな作戦を立案出来るね!」
大分 と言うか産まれて間もなく初めてイザベラおばさんとあった時、その時はまだこの世界の言葉も分かっていないが、それでもその日の内にイザベラおばさんが父さんの事が好きである事が判った。あれから俺自身の体調の問題があって、母さんも考慮して俺はそれだけあんまり強く二人を押すことが出来ずにいた。
しかし今からならその母さんが味方になる事が俺はとっても嬉しい、自然と同志が出来たように手を差し伸べた。
「そうね、そうすればあんなことやこんな作戦も遂行できるわ。安心して、イザベラ、私とベリオットで全力で貴女の事をサポートするわ!」
俺が差し伸べた手を同じく同志を見付かったように、ぎっしりと掴み、自信に満ちた笑顔を浮かべながらイザベラおばさんにそう言った。
「い、いや、そ、そんな事しなくても!そもそもなんでわたしがろ、ロベルトなんかに好きと言う事になっているんだ!あんなやつなんか好きじゃない!」
俺と母さんの言葉が衝撃的過ぎたかそれともただのツンテレだったからか、イザベラおばさんは切れて、あんなやつなんか好きじゃない とか父さんの顔でも思い出しか少し顔が赤く染まりながら、如何にもツンテレなセリフを言い出した。
「またっまた、そんな事言って。」
ツンテレらしく表情と言葉が一致してい無いイザベラおばさんも中々に新鮮な感じがした。
「そうだよ、イザベラ。前々から思った事だけど、ロベルトって少し朴念仁な所が有るから、貴女が素直になって攻めていかないと何時まで経っても進展しないわ!」
気が高揚してる所為で母さんは積極的にイザベラおばさんに意見を出した。
「だ、だから、わたしは!も、もう、帰る!」
母さんの積極的な態度と正反対にイザベラおばさんは依然としてネガティブで消極的な態度で、百戦錬磨だったおばさんは迫ってくる母さんに気圧され、逃げ出した。
「待った、はいそこ、待った!」
イザベラおばさんの余りにも早い反応で逃げ出そうとした、しかし丁度その時一人の男が姿を現し、待ったを掛けた。
「「ジュド(さん)!?」」
その男の姿は俺とイザベラおばさんの良く知ってる人物だった事は直ぐに判り、同じように驚いて声を上げた。
「あら、ジュド君!良いタイミングだわ!」
奇妙なハイテンションになってる母さんもその男の正体に気付いた。
父さんは領主を務めてはいるがこの地の支配権はこの地方の貴族にある。確かに父さんは人望が厚く兵士達はその命令をきちんと文句を言わずに聞き入れるのだが、それでも兵士の殆どがその貴族の部下にである。その中今見えてるその男は数少ないはっきり父さんの部下と言える人の一人、ジュドさんだ。
「お久し振りです、シェリアさん。」
上司の妻である母さんにジュドさんは真っ先に挨拶をした。
「本当久し振りだわ、ジュド君。」
母さんもジュドさんに挨拶の言葉を返す。
「何しに来たんだ、ジュド。要塞にまだ用事が沢山残っている筈だろう?ロベルトに協力しないで、何故此処に居る?」
ジュドさんの姿を確認した時に驚いたが、直ぐに落ち着きを取り戻し、ジュドさんを問い詰めた。
「そのロベルトさんの指示で此処に来たのですよ、イザベラさん。」
ジュドさんはイザベラおばさんに弁解した。
「ロベルトの指示だと!まさかなにかっ」
「何もありませんでしたけど、ただどうもいつもよりやるべき事が多いからいつもより遅くなるとシェリアさんに伝えて来いという指示を受けただけさ。」
父さんに何か不測な事態に落ちいてるではないか とイザベラおばさんは慌てだしたが、その言葉の途中でジュドさんは慌てずに割って入り、その途中で母さんの方に向き、伝えるべき言葉を母さんにも伝えた。
「はぁ、なんだそんな事か、あいつは相変わらずのようだな。」
ジュドさんが来た訳を知り、イザベラおばさんは安心したように溜息を吐き、父さんの顔をでも思い浮かべるように何だか遠い目をして呟いた。
「ありがとう、ジュド君。こっちは大丈夫だから と主人に伝えておいてね。あぁ、それと、きちんと晩御飯の分を残しておいてあげるけど、お腹が空いたら先に何かを食べ置きなさい とね。」
伝言を受け取った母さんは同じように伝言をジュドさんに頼んだ。
「はい、確りとロベルトさんに伝えておきます。」
ジュドさんは母さんに返事する。
「用が済んだならとっとと帰りな、わたしはもう行く。」
ジュドさんの登場ですっかり忘れていたと思っていたのに、きちんと憶えているイザベラおばさんはジュドさんを追い出すかのような言葉を言い捨てて自分も此処から去ろうとした。
「あぁ、いやそれがさっきの話を聞いてこっちらも用事が出来たのでね、イザベラさんは用事があるのならお先にどうぞ。」
ジュドさんは 出て行くのでしたらこちらにどうぞ て意味込めて手でこの屋敷から町へ繋がる唯一の街道の方に向けた。
「もしかして、ジュドさんも...気付いたんですか?」
俺は敢えてはっきりとしない言葉でジュドさんに聞いた。
「えぇ、あんなイザベラさんを見て気が付かないのは恐らくロベルトさんだけだと思うさ。」
きっちりと俺の言葉の意味を理解してジュドさんは答えてくれた。
「えっ!」
イザベラおばさんは自分の耳を疑うようにポカンとその場で固まった。
「あら、イザベラが職場にいる時ってそんなにはっきりと判るくらいだったの?」
母さんはその話に食い付いた。
「それはそれはもう...本人を前にして流石に話せませんね。」
ジュドさんは言うとしたが、直ぐ隣に居るイザベラおばさんが目に入り、口を慎んだ。
「まぁ、それなら中に入り、同じ志を持つ人同士で詳しく話し合いましょう。」
母さんもその場に固まっているイザベラおばさんの事が気になり、提案した。
「素晴らしい提案ですね、それは!」
ジュドさんはその提案に同意した。
「そうね、それなら俺も参加する!」
俺も と俺は言い出した。
「そうね、じゃ中に入ろうか。あっ、イザベラは気を付けて帰ってね。」
母さんは今だにそこで黙ったまま俺たちのやり取りを見詰めるイザベラおばさんに別れの挨拶をして中へ入っていこうとして、後ろに向いた。
「またね、イザベラおばさん。」
母さんの後を追うように俺も中へ入って行こうとして、挨拶の言葉を口にした。
「先に失礼ね、イザベラさん。」
もう一人の同志ジュドさんもそう言って俺たちの後から着いて来た。
「......」
突如の出来事でまだ消化仕切れて居ないイザベラおばさんは長くその場に立ち尽くしていた。ジュドさんのあの一言が余程ショックだっただろう。
まぁ、それから俺と母さん、そして新たに加えたジュドさんの三人でこの家の玄関真正面にあるドアを開け、会客室に入った。
そこから俺達三人は愉快の話しをして中々に盛り上げている、その途中にチョコチョコとイザベラおばさんとロベルトごと俺の父さんをくっ付けさえ、尚且つ母さんとの仲がいつも通りである為の作戦に関する討論をした。
かなり盛り上げた所で、外に一人で置いてけぼりにされたイザベラおばさんが立ち直り、この集会に乱入して来たのは、また別の話だ。