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瀬名さん、渋すぎませんか?

 瀬名さんのいる女子寮。男子禁制ではないらしい。ただし、個室の中はダメで、共同エリアのみだ。女子寮らしく、食堂にあるキッチンは申請すれば使わせてもらえるという。土曜のお昼ちょっと前。ギャラリーがすごい。全部で6人。


「何何? 瀬名ちゃんの彼氏?」

「こんにちは。よく瀬名ちゃんと付き合おうと決断したね」

「うるさいなー」


 瀬名さんは口を動かしながら、手も止めない。フライパンで何やら炒めている。


「さ、どうぞ。みんなも味見して」


 なんだ、この状況は。トレーを手に台所の前に並べられた鍋からめいめいおかずとご飯と味噌汁をよそい、テーブルに着く。僕は中央席で、女子7人に取り囲まれる。


「じゃ、合掌」

「いただきます」


 そう言った途端に7人全員が一斉にしゃべり出す。


「これちょっと芯が残ってる」

「砂糖、入れすぎ」

「あ、これはいける」


 僕は箸をつける前にトレーの中をチェックする。


「筑前煮。切り干し大根と油揚げの煮物。かぼちゃの甘煮。高野豆腐の玉子とじ。わかめと豆腐の味噌汁。ごはん」

「デザートは大学いもね」


 平然と答える瀬名さんに質問してみる。


「渋すぎませんか?」


 瀬名さんの代わりに、斜め向かいのロングヘアーのひとが答える。


「全部常備菜だよね」

「うん」


 当たり前のように瀬名さんもうなずく。


「でもさっきフライパン使ってませんでした?」

「あ、気根くん、知らない?」

「え?」

「切り干し大根て、水で戻した後、油で炒めて、それから煮るんだよ」

「あ、そうなんですか」


 あれやこれやとしゃべりながら食べ終わる頃、みんな次々に言う。


「こりゃ合格だよ」

「うん、瀬名ちゃんがここまでやるとは思ってなかった」

「気根くん、いいヨメ、みつけたね」


 僕は、何と言えばいいのだ。

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