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瀬名さん、ケガしちゃいました

 ケガをしてしまった。

 まあ、自分の不注意ではあるんだけれども。でも、労災ってことで認定され、治療費は保険でカバーされるらしい。

 生まれて初めて入院した。そして、意外なことに入院したその日に瀬名さんがお見舞いに来てくれた。明日には退院するっていうのに。


「災難だったね」

「いえいえ。僕がぼうっとしてたのがいけないんですよ。佐渡さんに申し訳ないことしたなあ」

「何? 一旦車から台車降ろして、それから車にぶつかったの?」

「はい。佐渡さんが真っ直ぐに停めなおしてるところにバランス崩して」

「それで、結局ねんざ?」

「はい。だから、労災認めてもらうのに一晩泊まるだけですから」

「そっか。お見舞い持って来たんだけど」

「え」

「はい、これ」


 大友克洋のマンガだ。”童夢”、ってタイトルだった。


「ありがとうございます」

「いいよいいよ」

「これを読めってことですか?」

「ん? うん、おもしろいよ。わたしは50回ぐらい読んだかなあ」


 確かに。厚みが増してて、読み込んだ感じがよく出てる。


「じゃあ、今夜読んでみますよ」

「泊まったげよか」

「はい? ここ、家族でも泊まり込みだめみたいですよ」

「なんだ、残念」

「それに、大げさですよ」

「そう? なんか、合宿みたいで楽しいと思ったんだけどな。補助ベッド借りて気根くんの隣で」


 瀬名さんと枕を並べて寝るのは確かに楽しそうだと思ってしまった。


「そういえば、好きって言ってあげたこと、無かったよね」

「ああ・・・そういえば、ないですね」

「気根くんも言ってくれたこと、ないよね」

「・・・無いですね」

「言ってみよっか?」

「え?」

「好きだよ」

「・・・」

「ほら、返事は?」

「はい」

「はい、じゃなくって」

「え・えと・・・す」

「す?」

「・・・好きです」

「うん。そうだろうと思った」

「趣味悪いですね」

「どうしたい?」

「ええ?」

「結婚まで行きたい?」

「・・・あの、まじめに訊いていいですか?」

「もちろん」

「僕、長男なんです。僕の親と同居とかありですか?」

「ああ、そっちの方か」

「そっちの方って・・・」

「うん。平気。頓着しないよ。それよりご両親の方が嫌がらないかと心配」

「うーん」

「そこで唸るんだ」

「いや・・・っていうか、瀬名さんと付き合ってもう半年ですけど、どの程度の潜在能力があるか分かんなくて。料理とか」

「あ、そいういうこと。わかったよ」

「え」

「作ってあげるよ。退院祝いに」

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