マロちゃんとの繋がり
俺は夢を見てるのかと思った。
何故なら見てはいけないような存在が目の前で目を潤ませながら語りかけてきたから。
【……何だ?…このちみっこいのは?……】
すると目の前にいる小さな女の子は頬をぷぅっと膨らませて手を激しく上下させて
「今!!真尋様は絶対に失礼な事を考えてるはずなの!!!」
【こいつ…!何で俺の名前を!?】
考えてる事を見透かされた事もそうだが、驚いた事に何故か小さな女の子は俺の名前を知っていた。
そして真剣な表情で真尋を見据える。
「私はそこにいるご主人からマロちゃんと名を授けて貰いました!真尋様の事はご主人から毎日聞いているのでお名前だけではなく、その日の出来事とか性格とか癖とかも色々知ってるのです!!」
とんでもない事を言ってきた。
俺の名前は河野真尋。イケメンでもなく、到って普通のどこにでもいそうな高校生だ。だが、確かにマロちゃんとか言う女の子は俺の名前を知っていたし、先程からふざけた様子もないので恐らくは言ってる事も本当なのだろうと思う。
だが……
「…っと言うよりも、それよりもまず、そんな小さなナリで当たり前に存在しているのがおかしくないか?これは夢じゃないんだろ?」
先程何度もマロちゃんの姿を十回以上は目を擦りながら見直していたので夢ではないと真尋は判断している。自分の事を知っていることや話を聞いたと言ってるのにも突っ込みを入れたいくらい驚いているが、それよりも普通に考えて世の中に本で見たような妖精くらいのサイズの女の子(人の手のひらに乗るサイズ)が目の前にいる事自体があり得ないのでそちらに気がいく。
するとマロちゃんは真尋の近くまでトコトコと移動し、ベッドで寝ている女の子の隣まで来る。
「……信じてもらえないかもしれませんが…マロは……毎日毎日…ご主人から愛情を注いでもらっていた為に生まれた思念体なのです……」
しゅんとしながらマロは話す。
「マロは最初…ご主人と一緒になってからはこの様な姿をしていなかったのです……それに…」
そっと真尋の横を指差すマロ。
「マロは真尋様のお陰でご主人と共にすることになったのです」
「………!?あれはっ!」
マロが指差す先には真尋にも見覚えのあるモノがあった。それは小学生の時に菜月の家族と真尋の家族で夏の花火大会に行った時に射的で取った人形があった。
日本人形
真尋は恐いのが嫌いなのであまり好きではないのだが、その人形は柔らかな表情をしていて暗いところでも不気味に感じない程の愛嬌のある毬を持ってる手のひらサイズの人形だった。菜月が一目惚れをして駄々をこねたのがきっかけで真尋が取ったのだ。
「…マロはあの人形を依り代にする事が出来てこうして存在しているのです!」
花が咲きそうな程の笑顔を浮かべるマロ。