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第二話 「秋の終わり」(修正)

 時間は22時、職場の蛍光灯はもう一時間も前に一斉に消灯し、今はモニターの白い光だけが手元を照らしている。

 仕事量変えずにノー残業デー強制消灯とか本当に○ねばいいのにと心底思う。

 クソ、今日は9時前には家に帰れているはずだったのに。

 原因のバカは8時を回った瞬間に


 「先輩、ちょっと用があるのですんません、すんません」


 と、此方がなにか言う前に席を立ちよろよろと帰りやがった。


 「あー君のミスの後始末を私はしているのですよ」とはさすがに言えずに頭のなかで盛大に喚き散らすに留める、しかし青くというかどす黒く変色した斉藤の顔をみて結局の所俺は、黙って作業をすすめるしか無かった…と言うか、あいつもう来ないんじゃないだろうか?

 いや、本気でやめないでね斎藤くん。


 とはいえ文句を言っても誰も助けてはくれず、周りの焦点のあっていない屍たちに混じり一緒になって黙々と作業を続ける。

 それからしばらく後、エラーを吐いていた場所は最初の最初、入力桁の間違いであることがわかり、即座に修正パッチを走らせ、問題がないことを確かめた俺は、他の屍たちに悟られる前になんとか帰路につくことができた。




 電車に揺られること一時間ようやく家に帰り着いた俺は、帰り道コンビニで買った500円の弁当を掻き込みパソコンの電源をいれた。湿気でグダグダになった海苔とごはんを緑茶で流し込みながらメールを流し読みする。


 「九割広告とかワロス」


 要らないメールをゴミ箱にポイしながらエミエミ動画にアクセスし、お気に入りに記録されている更新履歴を確認する。

 ふむ、「T-ランプ」さんの生放送が現在放送中らしい、昨日の続きだろうか。

 即座に再生ボタンを押すと、画面の中ではいつもの様に軽快な語り口で、「ネズミーランド建設実況」が流れ出す。

 非常に渋い声と軽快な語り口調を聞きつつ、即座に「わこつ」コメントを流す。するとそれに反応し自動で


「ゆっくりしていってね」


 と機械合成の音声で返信が返された。今どきはAIも発達し、言葉も人間と見分けはつかないものが普通だが、エミエミ動画では未だに機械合成音がよく流れる。様式美だそうだ。その後実況者Tさんからも


 「いらっしゃい、楽しんでいってね」


 との言葉をもらう。それを聞きながら複数あるサブの仮想カメラの一つを手動で操作すると複数のワーカーが集まり何か見覚えのある大穴を埋め立てている。周囲の建物が半壊していてパッと見はわからないが、よく見ればそこは昨晩襲撃があった「宇宙山」建設跡地ではないだろうか。

 サブカメラについている番組説明用のAIに確認してみると勘違いではなくたしかにそこは「宇宙山」跡地とのこと。数機のワーカーが巨大な穴に土砂を流し込んでいるのが見える。ということはあの巨大な穴は俺が爆散した穴だろか?

 昨晩のことを思い出しながら自機の機体データを立ち上げる。機体データは全て赤く外装装甲及び装備は完全にロスト、基礎フレームもすべて耐久力ゼロ、これは治すより新品を買い直す方が早そうだ。


「気持ちいいくらいきれいに吹き飛んだな。破損率100%とかそう簡単にはならないものだが。」


 なんとかフレームだけでも再利用はできないだろうか、とフレームの詳細データを確認するも


「うげ、耐久上限値も半分以下だこれじゃあこのフレームの再利用も無理そうだな、結構いい補正の入ったフレームだったのに、というかここ迄のダメージって事はあの時の多弾頭手榴弾はNPC謹製じゃないな、プレイヤーメイドか?」


 まったく、ただの作業用ワーカーに使用する物ではないだろうに、腹立ち紛れに飲み終わったお茶のペットボトルをゴミ箱に投げ込んだ。エミエミ動画の説明欄を流し読みしてみると、どうも前回の計画にはなかった防衛陣地の建造という副題が目につく。別のカメラを呼び出しそれについているAIに確認したところ現在別働隊が防衛陣地を建設しているらしい。

 この地は自軍の主戦場のさらに奥まった場所にある為、いままで大規模な防御陣地を建造していなかったがあれから何度か襲撃があり結構な被害も出たとのことだ。どうもこちらの把握していない侵入経路ができたらしく。頻発する乙特攻にクラフトガチ勢がかなりピリピりしているらしい。「愉快犯死すべし慈悲はない」などと採算度外視で防衛陣地を建造中とのことだ。同時に襲撃犯も攻勢を強めていて、軽く確認しただけで複数の「荒らしてみた」や「ガチ発狂させてやった」など、かなり香ばしい動画の投稿が複数みつかる。そんな熱気にさらされて生中継のメッセージには


 「そこそこ有名な実況者さんの実況なので狙って襲撃してくるのかも」

 「Xchで襲撃呼びかけがあったみたいだよ」

 「嘘乙」

 「次はぶっ潰してやる」


 などとコメントが見て取れる。


 実況者Tさんそれらコメントに律儀に「曰くそれも醍醐味である。」と返しているが、少し渋い顔がが見て取れる。リソースが有限であるネズミーランドの建造も遅れるし、それも仕方がない事だろう。

 とは言え今後ネズミーランド建設予定地も無防備というわけにも行かず幾つか防衛陣地を設置していきたいとも言っていた。

 まあ、一視聴者サイドから言わせてもらえばこの手のトラブルは大好物だ、自分が標的じゃなかったらとの注意書きが入るのではあるが。


 その後、動画を立ち上げたまま本日の戦場の流れを軽く掴むため掲示板を流し読みしていく、復活地点の「金沢」に影響の有りそうな戦場、滋賀地区共和国専用掲示板では、自慢の強羅絶対防衛線を抜けられたことが問題となっており防衛計画の見直し、侵入経路の特定、報復侵攻作戦の立案など騒ぎになっているようだ。もっとも大半は「ypaaaa」「ウラァー」と叫んでいるだけではあるが、まあいつもの事だ。俺も適当に「ypaaaa」と書き込んでおくことにしよう。

 

 さて、そうこうしている内にいい時間になったのでどうするべきか悩んだが一時間ぐらいなら建設現場にお邪魔するのもありかもしれないと思い、「手伝いするよ」とコメントすると「是非カモン」と返答があった。

 さて、自分の墓穴の埋め立てぐらいはするべと、VRヘルメットをかぶり起動プログラムを走らせた。

 軽い耳障りなモスキート音が聞こえ、その直後一瞬間を起き周囲がブラック・アウトした。風景が一瞬で変わり今度は真っ白い空間に放り出される。複数の立ち上がったままのウィンドウを片手でちらしながら正面に向き直ると、そのには一人のスーツ姿の女性が立っていた。彼女は軽く会釈をしながらいつもの様に話しかけてくる。


 「おかえりなさいませ「アジン様」現在「重要事項」が一通「お知らせ」が一通来ております。如何なさいますか?」


 「田中一」「はじめ」だから「один(アジン)」面倒なのでこうした。そして彼女は「ジェーン」「женщина(ジェーンシチナ)(女性)」は長いから「ジェーン」である。ちなみに俺のロシア語の引き出しはもう無い、と言うか間違ってるかも知れないが気にしない。


 彼女は俗に言うオペレーターAIである。もっと言うなら秘書ガチャのSSRだ。ちょっとした自慢でもある。


 「重要事項、おしらせと順番に全部頼む」


 そう言うと彼女はどこからともなく書類を取り出し、軽くメガネを手でおしあげ話し始める。


 「重要事項として弊社から依頼を受けた業者を名乗りVR筐体に違法なチップを装着し生体情報の違法読み取りが行われた事例が報告されています。弊社がお客様に直接スタッフを派遣することはありませんのでお気をつけください。もしそのような事例に合われましたら当社への連絡および最寄りの警察署への通報をよろしくお願いいたします」


 「お知らせとして大型アップデート「迫りくる冬」実装のため明日8:00~18:00までの間メンテナンスの為一時的に以下のサービスがご利用いただけません。「ゲームプレイ」「公式サイトの閲覧」皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、ご理解ご了承の程、よろしくお願いいたします。「迫りくる冬」に関しましては、「季節の実装」「様々なパーツの追加及び実装済みパーツのバランス調整」「未実装地域の追加」などがあります。詳しくは特設サイトをごらんください。今後とも「黒鉄の城オンライン」を、よろしくお願い申し上げます。「黒鉄の城オンライン」スタッフ一同とのことです」


 おっとここしばらく忙しくて忘れていたが大型アプデは明日だったか、まあ、詳しいアプデ内容は後でサイトで確認すればいいとして、時間もないしさっそく「石川地区金沢ポータル」へダイブする事にした。


 「石川地区」「金沢」通称金沢共和国は石川地区の共和国における生産拠点だ。石川地区は比較的共和国勢力が優勢な地区であり尚且つ現在主戦場である「滋賀地区」からも比較的遠いため共和国軍内クラフターたちが色々な建物や建造物を建てて飾るにはもってこいの地区だった。




 さて、その中で俺が降り立った場所は昨晩死亡した「金沢」の復活地点である「金沢」モニュメントの前だ。

 モニュメントは街の心臓部でありここを破壊することで、その土地の所有権を得ることができる。見た目は共和国シンボルについたポールと旗なのだが、大体の場所では破壊を遅らせるために建物で覆ったり装甲板を貼ったりと工夫する。最近のはやりは装甲で豆腐ハウスを二重に作り間に噴水を仕込んで装甲の間を水で満たすだったかな、だがこの金沢では何人かのクラフターが共同で様々な機材建材をを組み合わせて何処かで見た萌ゲーでキャラの「ロリロリスター○ン像」作り上げていた。製作者いわく、「ロリロリ○ターリンちゃん」を攻撃できるやつはこの世に居ないぶひ~とのことだ。本気のクラフター渾身の作である。でも正直スタ○リンが見たら助走をつけて殴りかかって来るんじゃないだろうかと思わなくもない。


 さて、昨晩爆散した俺は作業用ワーカー一式を揃えるため、モニュメント前の防衛陣地スターターパックへ行くこととした、まあそういうパック本当にあるわけではないが、最初に設置すべき施設「銀行」や「お店」「工場」や「倉庫」を無機質な豆腐ハウスにして一地区に詰め込んだ地区のことをこう呼ぶ。味気ないが使い勝手は便利なので死に帰りのゾンビたちは基本ここで人間に戻るため(比喩)お買い物に勤しむことになる。まず最初に「銀行」に行きお金をおろし次に隣の「服屋」で縞パン姿の原始人から文明人に進化、その後に向かう場所は、まあ人によって場所によって様々だが金沢では東に行けば「個人プレイヤーショップ」西方面は「NPCショップ」が立ち並ぶ。そして、街全体で見れば北は「クラン街」、南は「個人倉庫」「アパート」と言った建造物が設置されていた。


 さて、自分の作業用ワーカーは吹き飛んことだし作業用にプレイヤーメイド品はもったいない、つまりは考えるまでもなくNPCショップにむかう。

 うむ、いつ見ても四角い、ハンコで押したような豆腐ハウスだ。これはモニュメントの近くに持ち主不在の空き家があると何処からともなくNPCがやってきて商売を始めるため最初にやるのが豆腐ハウスの建造だからだ、だいたい何処もこんならしい。ちなみに不都合なところに住み着いたNPCの家にワーカーが突っ込んで更地にするのもよく見る光景だ。

 まあ、それはそれとして、目当てのワーカーショップを見つける。どうでもいいが、どっかのバカが正面でNPCの立てた看板をワーカーでふっとばし代わりに「ロリロリス○ーリン看板」に変えようとしているのが見える。しばらくするとNPCが通常の看板に戻そうとするのに本当に暇なことだ。本人的には飽くなき闘争だそうだがどちらにしてもNPC的にはえらい迷惑な話だとは思う。

 それはそれとして、知り合いと思われたくないのでこっちを見ないでもらいたい、声もかけるな。

 俺は顔をそらし足早に店に入る。


 「いらっしゃい」


 ウホッ!? 青いツナギの青年がカタログを持って此方にやってくる。何を言ってるんだ俺は…

 さて、ここで注意しなければならないのは共和国製ワーカーは他国のワーカーに比べて製品にばらつきがある事だ。この偏りはひどいもので左右足の出力バランスが調整機能を大幅に上回り延々と片方にしか曲がれなかったなんて笑い話もベータ版の頃にはあったそうだ。現在はそこまで酷いことは稀ではあるが、それでも個々のパーツの性能差は無視できない振れ幅がある。あまり酷いようなら別の店に移動しないといけない、同じ店では一度提示された性能は購入しなければ数時間は変わらないからだ。


 もっとも、この振れ幅を利用して、ワーカーを何体も購入しバラし厳選し高性能部品だけで再度組み立ててNPC謹製の高性能機を仕立て上げることも可能らしい、もちろん暇と金とメカニックとしての腕があればの話だが。

 まあ、しかしどれもない俺には関係のない話で素直にノーマル品をそのまま買うしかない。

 軽く店員に声をかけほしいワーカーのカタログを指差しワーカーを見せてほしいと店員に伝える。

 また、それと同時に店員に他の部分は妥協するのでとにかくパワーがほしいことも一緒に告げる。

 こう言うことで噂では性能ガチャの乱数でパワーの部分に補正がかかるらしい。まあ、そんなものは無いという人もいるし、気休めだがやらないよりはましという人もいる。

 そしてそんな俺は補正は有ると信じる派だ。

 店員に倉庫より出されたワーカーは良くもなく悪くもなくといった性能だった。確かに出力的に平均より数%高いかもしれないが、ただとにかく他の性能が軒並み低いこれはキャンセルかなと流し読みしていると一箇所だけやたらと高い数値を見つける。

 なんと左脚部の出力だけ平均値のプラス35%、10%を超えるのなど稀で15%プレイヤーメイド品でしか見たことがない。こんなん買うしかないだろ。


 即座に購入したワーカーは「トルート」という何の変哲もない特徴がないのが特徴な二足歩行型の作業機械であり胴体正面部分が強化ガラス張りの四角い箱の組み合わせだけで表現できる非常に簡素なワーカーだ。

 共和国共通の特徴は色濃く受け継いでいて他国のワーカーに比べても更に、デカイ・遅い・高パワーだ。うむ、やはり我が国のワーカーは素晴らしい、特に他国は採用していないこのビス止め方式は心躍るものがあるな。


 さて、結構時間も押しているし、俺は急いでワーカーに乗り込み作業現場に向かう事にした。

 そして歩きだすと同時に壁に突っ込んだ。

 なんてこった購入して1分で修理することとなった。泣ける・・・

今回のワーカー♪


機体名 「トルート」

制式名称「TT-020」

開発メーカー 国営工場品(NPC品)

全高 6.02m

全幅 6.02m

全装備重量 15t

最大起重 5t

最小回転半径 7m

装甲材質 特殊鋼

固定武装 12.7mm機銃×1

固定装備 腕部ショベルドーザー×2 後部ウィンチ 脚部アウトリガー

ハードポイント 上部アタッチメント×1

主な乗員 作業員1名


パワー C--~B++

機動性 F--~E++

装甲  F--~E++

値段 2000新円(ゲームスタート時チュートリアル後に貰える金額が1万新円前後)


最も安く尚且つ最も出回っている作業用ワーカー、一応ハードポイントもついていることから戦闘に使えなくもないが火器管制などは設置できないので基本目視の盲撃ちしかできない。普通はクレーンなどを設置する。

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