天国?
ひっさびっさの投稿。
猛省。
目が覚めると目の前に広がっていたのは、まるで市役所の待合室のようなところだった。周りを見ると俺のほかに何人かの人がいた。年齢はバラバラで、下は20歳から上は60以上くらいの人がパッと見て三人同じ待合室らしき場所にいた。というか俺って……。
その時、突然のアナウンスが流れた。ん
「岩城様。岩城総一郎さん。5番窓口までお越しください。繰り返し、アナウンス致します。……」
岩城総一郎。俺のことだ。何が何だか訳が分からないが、とりあえず言われた番号が表示されている窓口まで行った。そこにいたのは長くて真っ黒なつやのある髪を携えどことなく作業的な柔和な笑みを浮かべ着物着た美人だった。
やべぇ……。めっちゃ美人さんだ。ここまでの人芸能人にもいないぞ。最近働く女の人にかわいい人が多いってテレビでも聞くけど、本当だったんだ。緊張してきた。普通に緊張してきた。話す前から緊張するとか高校の時の表彰以来だぞ。その時は、全校生徒がいたのに今回は一人だぞ。本当にやばい、汗かいてきてた気がするし
。
「岩城総一郎様ですね?どうぞ、お座りください」
低俗な俺が分かるくらいに丁寧な所作。まるで心地よい鈴の音を思わせる澄んだ声は、俺の心を震わせた。促されたので座る。
「初めまして。全宇宙転生管理機関フィライザ太陽系第三惑星地球アジア圏日本国関東地方神奈川県支部へようこそ。今回貴方の転生のお手伝いをさせていただきます担当のエルシィと申します。短い時間ですが、どうぞよろしくお願いします」
「は、は、初めまして岩城と申します。よろしく」
エルシィさんていうのか。ちくしょう。女の子と喋るのが久しぶりだからどもちまった。恥ずかしい。エルシィさんに笑われてないかな。
目を合わせたらもっとひどいことになりそうだったので、伏し目がちにちらりと見る。どうやら、笑ってないようで、最初と同じく笑みを携えたままこちらを見ていた。
ん?そういえば、全宇宙転生管理機関なんたらかんたらってまさか。
「あの、すみません。質問いいですか」
「はい。何でしょうか?」
笑みをそのままに若干首をかしげつつ聞き返してくるエルシィさんに見惚れつつ質問する。
「その、全宇宙転生管理機関っていうのは何ですか?聞いたことない言葉だったし。あと、なんで俺はここにいるんでしょうか」
「はい、全宇宙転生機関とは、死した魂の転生を安全に行うために神によって設けられた機関です。この遍く宇宙の果ての果てまで存在している組織で、すべての生命の転生を管理しております。次の質問ですが、岩城様が死亡なされたので、ここにいらっしゃいました」
「あ、やっぱり。死んだんですね」
死んだのか。病院でもないし、夢なのかなと思ったが案の定死んだらしい。
「おや?死の自覚がおありですか。珍しいですね。だいたい若いうちにお亡くなりになった方は岩城様と同じ質問をされて、たいてい取り乱すのですよ。死の恐怖から一時的な記憶の混乱をされるんだけなのですけどね。その場合は、死の前後を記録した映像をお見せしなくてはならないのですが、自覚がおありなら次の段階に……どうなされました?俯いて、やはり記憶の混乱が?」
美人に目が合わせられなくて、俯いていたら勘違いをさせてしまったようだ。魂の不調ってのはわからんが。
「い、いや。すみません。あの、顔が……」
別に口に出すつもりは無かったが、つい口から出てしまった。美人さんと話しているからか?いやでもほんと、この人は美人だ。というか俺好みの容貌をしている。おっぱいでっかいし、どちらかといったら美人な顔立ちのところも俺を刺激していてそそる。
「顔ですか?何かついていますでしょうか?まさか朝食べたパンにくずが……
」
「い、いえ。顔には何もついていませんよ。ただ……」
「ただ、あまりにも俺好みで、美人さんな顔立ちなのでつい見とれてしまったんですよ」
え?やっべ。何でこんなこといっちまたんだ?なんか思ったことが口から出てしまった。俺ってこんな口軽かったっけ?失言しすぎだろ。
「あ、ありがとうございます。それと、この空間では思ったことが、口に出されやすいので注意してくださいね?」
エルシィさんは、顔を若干赤らめながら、少し詰まって言った。褒められ慣れていないのだろうか?かわいい。いや、それよりもだ。
思ったことが、投影される?じゃあ、さっきエルシィさんを美人とか見惚れたとか全部筒抜け……?
「はい。全部筒抜けです」
今度はよどみなく答えたが、頬はまだ赤いままだった。そうか、筒抜けなのか。うわぁ。恥ずかしい。え、思ったこと全部筒抜けなの?今なら恥ずか死できる。あ、もう死んでるんだった。
「ふふ。こんなに褒められたのは初めてです。ここに来る人は次の人生に眼を向けて、こっちのことなんて気にしてくれないんですよ。こんなに褒めてくれたのは本当に初めて……」
そういってこちらを向いて微笑む姿は先ほどと同じく見ほれてしまうほどの笑顔だったが、どことなくぎこちなかった。
けれども、俺はさっきの機械的な笑みよりも、今の自然な笑顔のほうが好きだった。この思考も筒抜けなのだろけども。そいういえば、どうして、筒抜けなんですか?
「もう、心の中で話さないでください」
「はい。ごめんなさい」
特に断る理由も無いので、素直に答えた。そもそも、隠し事をできない時点で遊びのようなものだったが。
「よろしい。えーと。筒抜けの理由ですか。本来なら話すことでもないのですが、別に秘密というわけではないので話しましょうか……」
エルシィさんが言うには、この世界はエルシィさんの上司に当たるこの宇宙の創世神に当たる人物?いや神物か。まあ、とにかくその人が作られた空間で、こんなのがいくつもあるらしい。エルシィさんと何人かはこの空間の担当らしく、ちょっとあたりを見渡すとエルシィさんと同じ格好をした人がそれぞれの窓口にいた。話は脱線したが筒抜けの理由は、人間が嘘が得意でこちらを騙しきってしまうことがあったらしく、その時に筒抜け状態にしたのだとか。
「一応、人のためになるかで善悪を図る機械もあって、基本はそれを用いて判断するんです。でも、普通の人生を送ってきた人はその値がちょうど真ん中あたりの人が多いので、こういう会話でその人の本質を判断するんですよ。たまに本当に心から偽ることができる人もいるんですけどね。ちなみに岩城様の本質評価は……」
そう言いながら会話の最中時何かを記入していた紙を見ながら読み上げた。
「本質評価は、善人に近く、素直ってところですね。後はもろもろの採点項目を加味すると、善悪値がよほどひどく低くなければ、そのまま転生という運びになります」
「そうですか。で、その善悪値というのは?」
「はい。善悪値というのは生前の善行・悪行を数値化し善行から悪行を引いた値です。高いほど聖人に近く、低いほど悪人に近いといった具合です。」
生前の善悪を数値化か。まあ、平均よ位かな。特に悪行をしてきた覚えもないし。
エルシィさんは淡い白光放つサッカーボールくらいの水晶板を取り出した。言われたとおりに手をかざすと文字が浮かび上がってきた。
「これは最終の本人確認もかねているので、生態情報も出てきます。いくつかの質問に答えてください。問題ありませんか?」
仕事モードに入ったのか、もうすっかり顔に赤みはない。最初と同じく凛々しい感じで問われた。
「はい。問題ありません」
「では、いきます……」
水晶には、俺の名前・生年月日・俺しか知りえない恥ずかしい黒歴史などが出てきた。まるで献血前に受ける質問のような感じで、質問とはい・いいえのアイコンが出てきてそれを押す形態だった。水晶板を押すのは変な感じだったが、趣味が献血の俺は割りとスムーズにできた気がする。
最後の質問を答えるとエルシィさんが
「はい。お疲れ様でした。ご本人様確認が取れました。続いてそのままの画面で善悪値の判定を行います。そのまま手を置いてください。……はい。判定終了しました。では、画面をご覧ください」
しかし、善悪値か。そんなに悪いことはしてないと思うし、最後にいい子としたからそれなりには高いと思うんだけどな。お、水晶から紙が出てきた。面白い。
水晶板には、『貴方の善悪値は96です』という文字が浮かび上がっていた。この数値は高いのだろうか?
エルシィさんが固まってる。ひょっとしてこの数字とんでもなく低いんじゃないだろうか。人生を数値化したものだし、最高が一万とかあるんだろう。
「あのー、エルシィさん。この数値低いんですか?」
「とんでもない!この数値は最高に近いです。一般人の平均値は50前後で、最高値は100。貴方のそれは最高ランクです。歴代でも100の数値の人はかなり珍しくて数人しかいませんでした。貴方の世界で言うキング牧師やマザーテレサ、ガンディーなどが該当します。これほどの傑物はここ最近お目にかかっていません。90台の数値とはいえここまでの数値は今まででも5,000人いるかいないかなんです!地球の人類は今まで1080億人の人が生まれてきました。その中の5000人という数字はかなりすくなんです!どれくらいかというと雷に打たれて死ぬ
確率よりもありえないです」
エルシィさんはかなり興奮気味に俺に事実を伝えた。俺の善悪値が高い?冗談だろ。
「じょ、冗談ですよね……」
「冗談ではありません!貴方は地球上まれに見るいい人なんです」
「で、でも。確かに俺は犯罪行為とかはしてないですけど、さっきエルシィさんが言った人たちみたいに何か特別なことをしたわけじゃないですよ」
確かにと呟いてエルシィさんは善悪値が表示されたとき一緒に出てきた紙を確認する。
「これは……」
感想おまちしとぉります。