表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

そして、重なる星

終わりつつあるクリスマスの夜の様子を中継するニュースショーを、テレビが虚しく垂れ流す。

電子レンジが、冷凍ペペロンチーノが温たまったことを電子音で報らせる。


官営のアパートの効きの悪いエアコンを恨めしく思いながら、僕はドテラを羽織ってのそのそと遅い夕食の支度をする。


結局あの後、現場には警察と消防が大量に押し寄せて、僕は名刺の裏に自分の電話番号とメールアドレスを書いて、彼女に渡し、どさくさに紛れて逃すのが精一杯だった。

ガヤンスーツを焼失させたことを怒られるかと出頭した本部では、褒められこそしなかったものの緊急避難措置として認められ、簡単な書類の提出だけで大したペナルティーを課せられはしなかった。


コシガヤンのSDイラストが入ったコップに近所のスーパーのPBの麦茶を注ぎ、湯気を上げる熱々のパスタのパックをちょんちょんとつつくように開け、中身をパスタ皿に移す僕の脳みそが、手元の作業とは別の所で、勝手にぼんやりと今日あった出来事を再生する。


彼女は、無事に逃げられただろうか。

彼女とはもう、二度と会えないのだろうか。


終わり行くクリスマスの淋しさ、祭りの後の虚しさが、僕の胸を木枯らしのように吹き抜ける。


その時、パスタ皿の隣に置いていたスマホがメールの着信を告げた。

未登録のアドレスだった。


メールを開け、文面に目を走らせる。


瞬間、一生で一番にやけた顔をなんとか二枚目半に引き締めた僕は、華麗な動作でドテラを脱ぎ捨て、洋服掛けからジャケットをひったくると、ばたばたと部屋を飛び出した。





電気もエアコンもついたままの部屋に、ほかほかと湯気を立てる、出来立てのペペロンチーノを残して。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ