ラフィの逃亡作戦
初投稿です。
読みづらかったらすいません。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
一人の少女が叫びながら森の中を駆ける
「ここは獣がでない安全な道って聞いたのにぃぃぃぃぃ」
その少女の後ろには獰猛な獣が鼻息荒く追いかけてくる
猪のような体躯ではあるが大きさは有に三メートルは越える獣であった
普段ならこんなとこでは滅多に現れない獣に出くわした少女は不運としかいいようがなかった
ここは魔法があり精霊・魔物などがいる世界
アルアリーデという大国の端に位置する町からでた森のなかである
少女は涙目になりながら叫ぶ
「あんのくそったれぇぇぇぇ!!!
どれだけあたしを苦しめれば気がすむんだ!!!」
逃げてもらちが明かないと覚悟を決め獣に退治する
土煙をあげながら迫り来る獣を迎え撃った
さて少女がなぜこんなにも不運に見回れるのか
それは一年前に遡る
その前に元凶である、ある人物の話をさせてほしい
少女の父は商人であった
豪胆な性格で真新しいものや不思議なものなどを集めたりときには禍々しいものもあったがそれなりに儲かる商売である
品揃えの多さや滅多に手に入らないものなどもあり貴族や王族にも客がいる
そんな環境であったがためにあの悲劇が起きたとしかいいようがない
その人との出会いは5歳のときであった
父につれられ豪勢なお屋敷にいった少女はひとつ年上の少年を紹介された
「セイン・アルバート様だよラフィ挨拶なさい」
父に促され少女ははっとした
「らふぃ・せれなーですっ」
勢いよく挨拶をした少女は少年に見惚れていた
天使のような雰囲気を持った優しげな少年に目を奪われる
白銀の髪に瑠璃色の瞳
すらりと伸びた手足
透き通るような肌
この世のものとは思えない美貌を備えた少年がそこにいた
「セイン・アルバートですよろしくね」
優しげに微笑まれこちらもつられて笑う
「よっ…よろしくおねがいしますっ」
父に教えられた通りにぺこりと頭をさげる
おずおずと顔をあげるとにっこり笑ったセイン様の姿があり恥ずかしくなり父の後ろに隠れる
「ほらラフィ、セイン様に遊んでもらいなさい」
父にセイン様の前に押し出されもじもじしながら少年を見つめた
「ラフィいこっか」
にっこり笑ったセイン様に手を引かれ少女は少年と楽しいひとときを過ごした
「最初はよかったのよ…最初は…」
土煙をあげながらこちらに迫ってくる獣に向かい少女は魔法で強化した拳を奮った
ドゴッ
正確に眉間に拳を撃ち込む
数秒後ドスーーンと音をたてながら獣はその場に崩れ落ちた
少女は手をパンパンとはたきため息をつく
「最初はまるで天使のように儚くて優しくてとっっっても素敵な人だったのに一年もたてばあれよあれ!救いようがないわ」
初めは優しかったセイン様も月日がたつにつれ変わっていった
いや変わったのではなく本性を表したとでもいうのか
「我が家に突然やって来たかと思うと森につれていかれ獣と戦わされるわ山に放置されるわしまいにゃ崖から突き落とすわ鬼の所業としかいいようがないわ…
さらに死ぬギリギリでいつも助けに現れるんだから余計たちが悪いわ!!!」
少女は今までのセインとの思い出を思い出しながら怒りにうち震えていた
セインは何故かものすごく強かった
魔法の才能がものすごくあった
そのせいでラフィはこんなことになっているのだがその力のお陰で生きられたことも確かだった
「いっつもいっつもあたしは魔法の餌食にされていたしあいつと関わったせいで無駄に強くなっちゃったしだからこんなことになったのよ!!!あいつは疫病神っ!!」
地団駄を踏みながら少女は叫ぶ
「あたしがどんなに逃げても逃げてもあいつにすぐ捕まっちゃうんだもの…」
少女は肩を落としいじけだす
どうしてあたしなんかに構うのかしら…
どんなに拒絶しても結局いつもあいつの手のひらで踊らされてるんだわっ
逃亡したことも数知れず…
だけどあの悪魔から逃れられたことはないのよ!
一年前もあいつは突然現れたかと思うと少し困った顔をしていったのだ
「ごめんねラフィ…ぼくこれからは頻繁にここにこれないんだ」
セインの話によると学園に通うことになるのでこれからはあまりこれないというのだ
「ほらぼくもう15才でしょ?だからルシフォール学園に通うことになったんだ」
ルシフォール学園といえば貴族平民関係なく実力のあるものはみな平等に通える学校だ
逆に実力がなければどんなに偉くとも通えないそんな学校であった
「ほ…ほんとに?」
少女は嬉しさのあまり震えるのを押さえきれなかった
十年近くにも及ぶ地獄の日々からの解放
ほんとにほんとに嘘じゃないわよねっ
あたしやっとセインから解放されるってことよね?
こんなに幸せだと思ったことはないわ!!
少女はうつむき笑みをこらえる
「あぁラフィ泣かないで?ぼくに会えないから寂しいんだよね」
セインに頭を撫でられながらとんちんかんなことを言われてもラフィは気にしなかった
嬉しすぎてそんなこと全く気にならなかった
やっと!
やっとよ!
通算3582回目の逃亡も叶わずこれからもまたあいつの玩具にされ続けるかと思ったけどこれでやっと解放される!!
しかしダメよここで気を抜いたら
喜んでるなんて知られたら何をされるかわかったもんじゃないわ…
笑みを堪えながら悲しげな雰囲気を作ろうと必死になるラフィを後目にセインは喋りだした
「だから…ね?ぼくがいなくても寂しくないように魔法をかけてあげる」
「………えっ?」
なにやら不穏な言葉を聞き勢いよく顔をあげ即座に否定した
「あの、セイン様?わたくしなんかに魔法をかける必要などありませんことよ?わたくしはセイン様の魔法がなくても大丈夫です」
笑顔がひきつるのを感じながら言い切る
セインは少し困った顔をしながら
「ぼくが心配なんだ…だからお願い…ね?」
子供を諭すように言う
そのきれいな顔に弱いラフィは狼狽えた
くっ…ここで負けてはダメよラフィ
こいつは顔は天使だけど中身は悪魔よ!!
気をしっかり持つのよラフィ!!
「セイン様のお手を煩わせるわけには…」
しおらしくうつむき拒絶する
「ぼくがしたいんだからいいんだよ」
そういいながらラフィの右手をとりうやうやしく口づける
小指の根本にチリッとした痛みを感じ魔法をかけられたことを感じる
小指には指輪のように巻き付いた蔓のような模様が浮かび上がっていた
「これできみは寂しくないね?」
セインはクスッと笑い呆然とするラフィを見つめた
「次に会うときにこの魔法はといてあげるね?これはぼくがいなくてもぼくのことを思い出すような魔法だから」
そういい残しセインは帰っていった
帰った!
もうあいつに会わなくていいってことね?
やった!やったわ!勝ったのよ!!!
拳を突き上げ勝利のポーズを決める
ラフィは魔法のことはよくわからなかったがとりあえずもう会うことはないと喜んでいた
しかしその喜びは続かなかったのである
「何なのよもう…絶対あいつのせいだ!!」
森にでかければ獣に遭遇し町を歩けば植木鉢が落ちてきて店の前を歩けば水をかけられる
不運なことが立て続けに起こる
「あいつの魔法のせいよこれは!!!魔法じゃなくて呪いよ!!」
こんなにも不運にあうことなどいままでなかったのだ
部屋のなかで少女は叫ぶ
最近は外出することさえ滅多にしなくなっていた
「それにセインからの手紙…見たくないわ…」
机の上に置いてある手紙を睨む
でも見ても見なくても最悪なことになるような気がするから見るしかないわよね…
少女は手紙をとりだし読み始めた
この手紙のせいで少女は旅に出ることになったのである
「なぁーにがルシフォール学園に通いませんか?よ!こっちが拒否できないように外堀埋めて、絶対来るようにしむけたくせにぃぃぃぃ」
逃げられないように外堀は埋められていた
埋められ過ぎていた
父親からの許可に始まり学園の手続きからなにからすべて終わっていたのである
「それにこの呪いのせいで絶対あいつに会わなきゃいけないし…」
先程気絶させた獣を背にラフィは歩きだした
セインからの手紙を読んだあと覚悟を決めたラフィは学園に向け旅だったのである
「絶対なんかあるからって早めに出てきたけど毎度のこと獣に襲われるなんて…」
はぁとため息をつきながら少女は歩き出す
その光景を見ている人がいるとも知らずに
ルシフォール学園のある一室に佇む青年はとても嬉しそうであった
「やっとラフィにあえるね」
少年は元気に歩く少女の姿が写る鏡をみて呟く
「ラフィの泣き顔はやっぱり生で見なくちゃねぇ。ラフィの泣き顔はねぇポロポロ涙をこぼすより泣くのを我慢しているときの顔の方がぼくは好きなんだぁ」
誰に話すでもなく嬉しそうに呟く
「早く会いたいなぁ一年も我慢したんだもん。ねぇ?ぼくのラフィ…」
うっとりと少年は微笑んだ
歩きだした少女は震えた
「うっ……なにこれ…悪寒?」
急な寒気に体を抱き締める
「変なことが起きなければいいけど…」
不安に駆られながらも少女は進む
「日がくれるまでには次の町までいかなくちゃ!野宿なんてごめんよ!あの悪魔のもとに向かうのは癪だけどいくしかないんだからっ」
自分を奮い立たせ少女は進む
「絶対絶対今度こそあの悪魔から逃げきってやるんだから!!!」
これはひとりの少女が悪魔から逃れるため頑張る物語
悪魔から逃れられたかは神のみぞしるというところでしょうか…
元気一杯少女は学園へ向かう
学園にたどり着くまでにまたひと騒動起こるのだがそれはまた別のお話