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失って気づくもの

作者: 堕落者

初めまして。蒼炎です。初めての小説なので暖かい目でみてください。

あ、ここはダメじゃね?みたいなのはドンドン頂けたら幸いです。

 人はどうして"特別(トクベツ)"を拒むのだろう。


 それは自分より優れ、自分たちの枠からはみ出た存在なのだからかもしれない。例えば、あいつはロリコンだとか、暴力が普通だと考える狂った思考の持ち主とか、運動神経がすごくいいやつとか……。



 そんな周りを見渡せば目に入る、ちっぽけな"異常(トクベツ)"。


 誰かは羨ましいと思うかもしれない。誰かは憎いと思うかもしれない。

 "異常(トクベツ)"な力を手に入れた本人はその運命を呪うのかもしれない。"平凡(フツウ)"が良かったと。


 だけど、何を思っても運命は変わらない。

だからこそ、ひとは"異常(トクベツ)"を拒むのだろう。

"平凡(フツウ)"を失いたくないから。

そして"異常(トクベツ)"も自分を拒み、恐れるのだろう。

周り平凡(フツウ)"を失いたくないから。

でも、それはただゆがみを――――――――――――――。


                       3年2組 篠原 玲



――――ドサッ。

 「…あぁ。懐かしいな…。このころのおれはまだ立ち直ってなかったな。今はもう慣れたけど。

 周りが俺を恐れ、妬み、そして離れて行った中学の頃のアルバムを見てそう呟く。


 中1を境にみんなが俺を気味悪く見て離れていった。それを見ておれはあわててみんなの能力に合わせたが、手遅れだった。夏にはもう孤独だった。家族もそのころあたりに居なくなった。仕送り自体は来るが。


 「まぁ、周りを見ないでホイホイやってたしな。もっとも今は、一人が落ち着くぐらいだし。よし、コンビニでも行くか。」




 俺は、篠原玲。どこにでもある公立高校の二年生だ。入学理由は家に近かったから。俺には、この家しかないし。学力は常に全国トップ。だけど、なまじ力があるせいで人々は俺を気味悪がり、関わろうとしない。はじめは泣きに泣いた。家族まで失ったから。

今はもう割り切った。自分は独りでいる運命なのだと。




 コンビニで飲み物と菓子を買い、出る。歩いて帰っている途中、見知った人を見つけた。

 國崎裕美くにさきひろみ。目元がぱっちりしていて元気があり、そして愛嬌のある美少女。小さい頃よく2人で遊んだ、仲の良かった(・・・)幼馴染。いや、幼馴染だったというべきか。あいつもまた、みんなと同じく離れていったのだから。

あいつが離れたときもまた大泣きした。家族と同じぐらい大切であり、初恋だった(ヒト)。立ち直るのにも時間がかかった。それほどまでに裕美の存在は俺にとって大きかった。

今は独りだと割り切ったからこそ、裕美を目にしても普通でいられる。



 そう考えているうちに距離が近づいていく。もちろん俺は無視して越すつもりだ。

裕美が信号を渡っていると、遠くから一台の車が高速で突っ込んできているのが見えた。優実は音楽を聴いているのか気づいていない。このままだと轢かれるだろうことは容易にわかる。

俺は声をかけようとしたが、やめた。俺から離れて行ったんだから、おれにはもう関係のない事だと自分を無理やり納得させようとする。


 「えっ。」

 裕美が止まった。車がきているのがわかって驚いているのだろう。あのままだと死ぬ。だけど、俺には関係ない。

そう言い聞かせても俺の足は止まるどころか、どんどん早くなっていく。


(何で、何で俺は走る!?もうヒトと関わらないと決めたのに!!)

でも、本心ではわかってた。裕美を失いたくない。助けたいと。

あと数メートル。俺は裕美のところまで全力で走る。


(もう押しても間に合わない。なら、せめて、せめて―――――――――――!!)


 キィィィィィッ、ドンッ。 ドシャァァァァッ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 「い、いた―い…。……え?わたし何で生きてるの?轢かれたはずじゃ…。」

裕美はあたりを見回す。するとすぐ脇に見知った顔を見つけた。


 「え?玲?」裕美は戸惑う。

 裕美の初恋の人であり、裏切り、自ら離れてしまった人が隣にいたから。


 

 「裕、美…。大、丈夫、か…?」彼は力なさげにほほ笑む。裕美は何故ここにいるのだろうと思いながら答える。

 「う、うん。大丈……」彼の体を見て固まる。

その時になってようやく気付いた。彼の体がおかしいことに。そしてその原因もすぐに思い至った。彼が身を挺して自分を守ってくれたのだと。


 「な、何で私を助けたの?私、玲を裏切って離れたのに……。」

 「はな、れたって関、係ない……。俺の、大、事な人、だから……。」

彼はそう言いながら、手を力無く裕美の頭に乗せ、撫でる。



 「もう、これ以上、面倒、事つくん、なよ…。」



 ―――それは、小さいころからよく聞いた言葉。彼女が困った時、彼は助けてくれた後よくそう言っていたのを思い出し、裕美の目に涙がたまる。


 「あぁ…。そんな顔、するなよ。いつも見、たく笑っていろ、よ…。」

彼の手がどんどん力無くなっていく。

 「もう、しゃべらないで。私が悪かった、ヒグッ、からぁ…。また一緒、ヒグッ、にぃ、いてよぉ…。」

彼の手をつかみ、泣きつく。そして彼女は、今までためていた思いを口に乗せる。


 「あのね、玲。私、ずっとあなたのことが好きだったの。だから、だから死なないで……!!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 「――――――だから、だから死なないで……!!」


 あぁ、俺はまだこの手に大切なものが残っていた。それがわかり、心が暖かくなる。俺はもうじき死ぬのは分かっていた。だからこそ、俺は最期の力を振り絞り、動く。


 「あぁ、俺、も裕美が好きだった…。ありが、とう…。こんな、俺を"異常(トクベツ)"を好きになって、くれ、て……。」

 「イヤッ!!そんなこと、言わないでよぉ…。まだ、生きてよぉ。死んだら、今までの分、取り返せないじゃないの……。」

 

 「あぁ…、そう、だな。さっき言葉で、十分だ、よ……。また、…」

また、逢おう。そう言おうとして俺は意識が遠のくを感じた。



 「イヤアァッ!!玲ッ!?ねぇ、玲、死なないでぇッ!!」



 遠のく意識の中、裕美のそんな言葉が聞こえた。


―――ありがとう、裕美。また貴女に逢えることを願います――― 


                                    Fin.

いかがでしたか?読んで頂きありがとうございました。できたら、感想お待ちしております、



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