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オープニング

いつからだったかは定かではない。

ただこの世界はインターネットの普及よりも急速に医学が発展していった。


腕を失えばそれを補填できるように。

蔓延する病を駆逐できるように。

心の深い傷を包み込めるように。

たった5分の命が無くならないように。


それでもなお、事故件数に対する死亡率は一向に下がらなかった。

医療が発展し、さまざまな状況に対応できるようになったにも拘らず、世界中の死は全く揺るがなかった。


まるで世界が人々の死を望むかのように変わらなかった死亡率はその真実を知るもの以外にとって絶望と呼ぶほか無い。


いや、あるいは真実を知ってしまった者達にとっても絶望でしかなかったのかもしれない・・・・・・。



    ▼▼▼▼▼



空は青く、夏真っ盛りな今日。晴れ渡る日の光は地に這う者どもに灼熱の試練を与える。

そう―――――夏休みである。


「っあー! あっぢー! 信じられないくらいあっつい!」


せっかくの夏休み初日だと思い、映画でも見に行こうかなと外出をした矢先に光の矢で貫かれた僕はゾンビのようにのろのろと歩く。

こんな暑いなら外に出なければよかった、と嘆きつつ冷房が良く効く映画館を目指しているのだがなかなか着かずに愚痴を吐きだしてしまったがそれで涼しくなる訳でも無し。


周りを見渡すと同じように死にそうな顔を浮かべながらシャツを煽いでいる人々や、アイスなどの冷菓に舌鼓をうつ人々が散見される。

彼らも何か用事があって街に繰り出しているのだろうか、などと益体のないことを思いつつ、僕は遂に目的地を発見した。


「あぁ、愛しの冷房よ……。 素晴らしき人類の英知……!」


下らない独り言を呟きながら冷えた空間へと侵入する僕。もう映画なんてどうでもいいからここから出たくない。


外の売店で売っていたかき氷でも買って来ようかな、と外を見た僕は、世界が塗り替わるのを目にした。


「………え?」


何が起こったかはその時の僕では分らなかった。ただ、外を見た瞬間に僕は確かに世界が塗り替わったのだと確信めいた感情がせりあがっていた。


白。他に言いようがないほどの純白。それに飲み込まれた世界に見とれるように硬直している僕もまた、世界とともに塗り替えられてしまった――――――――――。



   ▼▼▼▼▼



その日、未曽有の大事件が巻き起こった。

死者は全く居ない。事故すら起こらなかったその集団失神事件(・・・・・・)にて、政府は犠牲者および被害者は皆無、全員が無事と表明しその事件の終幕を図った。

規模は定かではない、集団失神事件はその原因を熱射病として速やかに世間から忘れ去られていった。


一人の少年を5年間、白い牢獄に閉じ込めたまま………。

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