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猫の魔者  作者: ルイン
閑章 番外編1
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シャワー室

番外編です。読まれなくても大丈夫です。この話は、第三章「西からの訪問者」が終わり第四章「怪しい影」の町に行くまでの間にあった日常の出来事です。ちょっといつもと違うコリスたちが見れるかもしれません。そのため、イメージが崩れる恐れがあります。嫌な方はお逃げください。



 ――ある日の出来事。


 「ねえグローリア、ここはどんな部屋なの?」家でくつろいでいたコリスはグローリアを見上げた。


 目の前には、曇ったガラス扉がある。コリスはいつも不思議だった。なぜなら、シーリーやグローリアが入ったあと、この部屋から水音が聞こえてくるのだ。


 リビングの机で紙になにか書いていたグローリアはチラリとその扉を見ると、


「ああ、そこはシャワー室だ」といった。


「しゃわー室?」コリスはこてんと首をかしげた。


「つまり、身体を洗うところですよ」


 キッチンからあつあつの鍋を持ってきたシーリーが、そう付け加えた。とたんにいい匂いが部屋中にただよう。コリスは鼻をひくつかせながら、なおも不思議そうにいった。


「じゃあ、なんで僕は入ったことないんですか? ここに来てから、一回も入ったことないですよね?」


 ちょっと身体を見ながら聞いた。毎日きれいにしているので、そこまで汚れてはいない。



「なんでって、猫なら自分できれいに出来るだろう? 別に入る必要はないんじゃないか?」


 グローリアが身体を向けて、逆に不思議そうに聞いてきた。


「えー、そんなことないですよ。僕だって入ってみたいです!」


 コリスは心外そうにいった。すごくこの部屋に入ってみたくてたまらなかった。しかも、身体を洗うって一体どんなことをするんだろ?コリスは気になってしょうがない。



「じゃあ、こんど一緒に入ってみます?」そんなコリスを見て、シーリーが笑っていった。


 グローリアがぎょっとしてシーリーを見た。「わーい」と喜ぶコリスをしり目に「おい」と眉をよせる。



「変なことに興味を持ったらどうするんだ」


「変なこと? そんな可笑(おか)しなことにはならないですよ。なんなら、グローリアも一緒に入ればいいじゃないですか?」


 シーリーは楽しそうにいいながら夕食の準備をしている。外は、暗く月が(のぼ)っていた。



「おい・・・」グローリアは呆れたようにため息をはいた。


「まあまあ。コリス君が満足すればいいんじゃないですか? グローリアが思ってるようなことにはなりませんって」


 明るくそういうシーリーを横目で見ながら、グローリアはまた息をついた。




「あー、おいしかった!」コリスが口のまわりを()めながらいった。


 今日はシチューだった。温かくて、野菜たっぷりのシーリー特製シチューだ。


 

 さーてと、というようにコリスはキラリと目を光らせると、ぴょんとテーブルを降りて


「ねえねえ! まだですか?」せかすようにコリスがいった。


 グローリアはぎょっとしたようにコリスに


「コリス、まだご飯を食べたばかりだろう?」


「・・・? 食べたばっかりだと、ダメなんですか?」コリスはきょとんとした。



 珍しくうろたえているグローリアを見て、シーリーはクスクス笑うと「洗い物が終わるまで、待っててくださいね」とコリスにいった。


「うん」


 素直にこくんと頷いたコリスを見て、グローリアはちょっと安心した。


 そんなグローリアを面白そうにシーリーは見ていた。




 *シャワー室*


 腕まくりをしたシーリーはイスに座ったコリスに水をかけた。


「うわっ!」突然、温かいお湯をかけられてコリスはビックリして声をあげた。


 全身びしょびしょになったコリスは、毛並みが身体に張り付いてますます身体が小さくなった。


「ふふふ、さあ行きますよ」泡を手につけたシーリーがニヤリと笑うと、コリスを泡だらけにした。


「ぎゃあ!」とたんに毛が泡だらけになり、コリスは毛の間に泡が入って身体がぞわぞわし始めた。


 あわてて逃げようとするコリスを、シーリーがすかさず捕まえて引き戻した。全身を洗われて、わあぎゃあ言っているコリスを後ろで見ていたグローリアは、呆れたようなほっとしたような顔をしていた。


 

 ちなみに、シーリーもグローリアも服を脱いでいない。シーリーは元からそのつもりだったので何もいわなかったが、シャワー室でそれを聞いたグローリアは「なぜ早くいわない」と迫った。



「だって聞かなかったじゃないですか」


 きょとんとした顔のシーリーを見て、グローリアは何もいえなかった。


 てっきり、と思っていたグローリアは心配して損した気分だった。



「じゃあ、水で流しますね~」


 ザーッと水をかけられたあと、コリスは飛んで逃げた。「あっ」と二人が同時に声をあげたのも関わらずコリスは暖炉に行くと身体を舐め始めた。



「うげー、変な味がする」コリスがげーと舌を出していうと、


「そりゃそうですよ、だってまだ十分に水で洗ってないんですから」


 と、腰に手を当てたシーリーが怒ったようにいった。


「さあ続きをしにいきましょう、今度はたっぷりと泡をつけて洗いますから」


「えええええー!! また泡つけるのー!? やだ!!!」


 コリスがその場から飛んで逃げると、それを追うようにシーリーも猫の姿で追った。あっという間に捕まったコリスは、シーリーにくわえられてまた風呂場に戻ったのだった。




「まあ、とにかく。満足してよかったな」グローリアがほがらかに明るくそういうと、


「もうやだ!!」と、その横にいたびしょ濡れのコリスが叫んだ。

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