表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

あいつ

世界でいちばん格好良い貴方

作者: 末摘
掲載日:2026/06/08

「え、彼氏さん写真映り悪いね」


好きな人は顔じゃない。性格で選ぶものだ。


私はずっとそう思っていたはずなのに、その友達の言葉には思わず絶句した。


「彼氏さんの写真見せてよ!」


そうせがまれて、私はしぶしぶスマホを差し出した。


画面に映っているのは、修学旅行のときに初めて二人で撮った写真だった。


私にとっては大切な一枚だ。


「そう、だよね。ちょっと写真の撮り方が下手かも。実物の方がまだマシ」


そう答えた瞬間、自分が嫌になった。


嘘だ。


この写真は、いちばんお気に入りの1枚なのに。


それなのに、ここにはいないあいつのことを、自分で悪く言ってしまった。


「これを機に彼氏さんにも写真の撮り方勉強してもらいなよ! つむぎちゃんも」


「そうだね。私もあいつのこと、もっと上手に撮れるよう頑張る」


笑って返したけれど、胸の奥はずっと苦しかった。


彼は確かに、いわゆる整った顔立ちではない。


学校ではいじられキャラだったし、男の子とは思えないほど色白で細くて、度の強い眼鏡のせいで目も小さく見えた。


私があいつにアプローチしていた頃だって、


「俺なんか好きになるの、物好きだね」


と、あいつは自分で笑っていた。


でも。


当時の私にとって、彼は誰よりも輝いていた。


大笑いする口元。


真っ直ぐでさらさらな髪。


白くて細い綺麗な手。


首筋に浮かぶ立派な喉仏。


好きな人フィルターだと言われたら、それまでかもしれない。


それでも彼は、あの頃の私にとって世界でいちばん大好きな人だった。


悔しかった。


大切なものを否定されたことが。


きっと友達に悪気はなかったのだと思う。


それでも、あの日の言葉は2年経った今でも胸に残っている。


写真写りが悪いなんて、そんなことないよ。


私が好きになった人なんだよ。


本当はそう言いたかった。


彼の好きなところを、たくさん話したかった。


どうして私が彼を好きになったのか、教えてあげたかった。


それなのに私は、その言葉を飲み込んでしまった。


友達の言葉を否定できなかった。


彼を守れなかった。


だから今でも思う。


結局傷ついたのは、彼の容姿を否定されたからじゃない。


私が、彼のことを大好きだと胸を張って言えなかったからだ。


あいつにはこんな話、したことないし、もう二度とできないけど。


あの写真を見るたびに、私は心の中で謝ってしまう。


ごめんね。


あの時、誰になにを言われようと、世界でいちばん格好良かったのは、間違いなくあんただったよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なかなか良い話ですね。 感情の表現が僕好みで好きです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ