世界でいちばん格好良い貴方
「え、彼氏さん写真映り悪いね」
好きな人は顔じゃない。性格で選ぶものだ。
私はずっとそう思っていたはずなのに、その友達の言葉には思わず絶句した。
「彼氏さんの写真見せてよ!」
そうせがまれて、私はしぶしぶスマホを差し出した。
画面に映っているのは、修学旅行のときに初めて二人で撮った写真だった。
私にとっては大切な一枚だ。
「そう、だよね。ちょっと写真の撮り方が下手かも。実物の方がまだマシ」
そう答えた瞬間、自分が嫌になった。
嘘だ。
この写真は、いちばんお気に入りの1枚なのに。
それなのに、ここにはいないあいつのことを、自分で悪く言ってしまった。
「これを機に彼氏さんにも写真の撮り方勉強してもらいなよ! つむぎちゃんも」
「そうだね。私もあいつのこと、もっと上手に撮れるよう頑張る」
笑って返したけれど、胸の奥はずっと苦しかった。
彼は確かに、いわゆる整った顔立ちではない。
学校ではいじられキャラだったし、男の子とは思えないほど色白で細くて、度の強い眼鏡のせいで目も小さく見えた。
私があいつにアプローチしていた頃だって、
「俺なんか好きになるの、物好きだね」
と、あいつは自分で笑っていた。
でも。
当時の私にとって、彼は誰よりも輝いていた。
大笑いする口元。
真っ直ぐでさらさらな髪。
白くて細い綺麗な手。
首筋に浮かぶ立派な喉仏。
好きな人フィルターだと言われたら、それまでかもしれない。
それでも彼は、あの頃の私にとって世界でいちばん大好きな人だった。
悔しかった。
大切なものを否定されたことが。
きっと友達に悪気はなかったのだと思う。
それでも、あの日の言葉は2年経った今でも胸に残っている。
写真写りが悪いなんて、そんなことないよ。
私が好きになった人なんだよ。
本当はそう言いたかった。
彼の好きなところを、たくさん話したかった。
どうして私が彼を好きになったのか、教えてあげたかった。
それなのに私は、その言葉を飲み込んでしまった。
友達の言葉を否定できなかった。
彼を守れなかった。
だから今でも思う。
結局傷ついたのは、彼の容姿を否定されたからじゃない。
私が、彼のことを大好きだと胸を張って言えなかったからだ。
あいつにはこんな話、したことないし、もう二度とできないけど。
あの写真を見るたびに、私は心の中で謝ってしまう。
ごめんね。
あの時、誰になにを言われようと、世界でいちばん格好良かったのは、間違いなくあんただったよ。




