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7/9

12時01分。

7/9

走った。


久々に。


凛とハナに軽くバイバイして。


廊下を走って、階段を駆け下りた。


「はっ……はっ……」


靴箱。


いない。


「はっ……はっ……はっ……」


校門。


いない。


「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」


交差点。


どこにも、いない。


「ごほっ……ごほっ……」


咽た。


マフラーを外して、息を吸う。


首筋がひゃっこい。


「はぁぁ……」


青信号の前で大きな溜息が出た。


スマホを見る。


12:01。充電77%。


しょうがなく、白線を渡る。


向こう側に見える、今朝方の奇跡。


流れてた曲は、なんだっけ?


あ。


信号の青色がチカチカ明滅する。


小走りに渡る。


黒い氷は真昼の陽射しに跡形もなく消えていた。


渡り切ってから、点字ブロックの凹凸を感じて、もう三歩進む。


目の前には少し溜まった泥。


わざわざ拭って、差し出してくれた右耳のイヤホン。


なんとなく……ううん。


しっかり、思い出したくて。


スカートのポケットからブルートゥースを取り出した。


両耳に差し込む。


薄くなる周囲の喧騒。


その瞬間、ふと耳に蘇った音とフレーズ。




『恐いくらい覚えているの』




なにそれ?




『あなたの匂いや しぐさや 全てを』




知ってる、大好きな曲だから。




『おかしいでしょう?』




けど、なにそれ?




『そう言って笑ってよ』




「笑えないよ……」




また鼻の通りが悪くなった。




――― ――― ―――




「はっ……はっ……」


帰り道は緩い上りがずっと続く。


「はっ……はっ……」


行きが下りなんだからしょうがない。


「はっ……はっ……」


マフラーに籠る熱がまた鬱陶しくなってきた。


「あっつい…!」


乱暴に取る。


クルクル巻いて鞄にしまった。


ちらっと見えた赤い包装紙を押しつぶして入れた。


「すぅ―――はぁ―――すぅ―――はぁ―――」


坂道はもう終わり。


丘の上アパートは直ぐそこだ。


だから、深呼吸。


きっと、ノンデリママがまた意地悪言ってくるから。


ひゃっこい風が気持ちい。


お昼の陽射しが温かい。


あたしの好きな季節。


分かるって、笑って言ってくれた大好きな瞬間。


「すぅ―――」


鼻から大きく息を吸う。


スッと冷気が喉を伝って肺に広がる。


火照った身体にひゃっこい空気。


やっぱり気持ちがいい。


この季節が、あたしは、大好きだ。


だから、大丈夫。


いつも通りに言える。


――― ――― ――― 


「ただいまー」


「あら、今日早いのね」


「だから土曜は午前で終わりだってば」


「そうだっけ?おかえり」


「ただいま」

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