11時45分。
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「きりーっ」
「きょーつけ」
「れー」
号令係のやる気の無い声でも、教室の皆で同じ動きをする。
それは11時45分ぴったりに入って来た先生も同じ。
隔週土曜日のHR。
先生も何処かダルそうだ。
5分かそこら話して終わるだろうに。
だからか。
たった五分のために学校に来なきゃいけないなら、確かにそれは面倒だ。
「はい。来週からは期末…ちゃう、学年末試験になります」
タレ目で若見えする先生はママ曰くイマドキっぽい、らしい。
「もう成績関係ないからとか、そんな訳ないので、しっかりテスト勉強するように」
なんとなく語尾が間延びしてる感じ、ほんとに脱力系って感じだ。
「あと文集~、卒業文集出してない、橋本、山田、吉田~」
吉田君がピラピラと原稿用紙を持った手を上げる。
「持ってきましたー」
「あ、おっけ。受け取るよ。橋本は?まだ。山田も……?まだ。はい、16日が締め切りだから忘れないように」
時々タメ口になる先生が当然のように受け取るけど、たったの一枚だけだ。
最低二枚ってなんだったのか?
あたしは頑張って二枚半書いたのに。
「あとは、再来週から通常授業は無くなって、卒業式のリハーサルが始まります」
絶対先頭にはならないし、早めに終えられる、カ行で良かった。
「卒業式でやらかすと一生恥ずかしい思いをするので、リハーサルはちゃんとしましょう。え?先生?先生はちゃんとしてたに決まってんじゃん」
こういう物言いがイマドキの先生っぽいってことなんだろう。
「はい、静かに~」
自分で湧かせといてそんな面倒くさそうにしないで欲しい。
「あ~と~は~……なんか質問ある人いる?大丈夫?はい。また何かあったら聞いてください。それじゃ号令」
「きりーっ」
「きょーつけ」
「れー」
教卓の名簿を閉じてさっさと帰ろうとする先生に一部の女子が駆け寄る。
『先生~』
「あげる~」
「お返しよろしく~」
「よろしくどうぞ~」
恒例のやつだ。
「おぉ、ありがと、ありがと」
半ば予想してただろうに、軽いリアクションを取って受け取る先生。
ほんとに『ちんすこう』しか受け取って無い男子は微妙な顔をしている。
彼はマフラーで口元を隠して見ていた。
目は笑ってる。
―――なんで嘘、ついたの?
「あ」
金島君に肩を組まれて、引き摺られるように教室から出ていってしまった。
あたしが漏らした声はマフラーに吸われて、ただ顔をあつくした。




