10時40分。
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三限目は教室移動。
最後の理科室。
来週期末だから本当に最後。
「どうせ自習のくせに教室移動ダルくね?」
それはそう。
「ってか学校自体だりぃ」
それは……そうでもない。
「香菜いこ」
「いこいこ」
凛と英恵が声を掛けてくれる。
「いこいこい!」
席を立つ。
ちなみにチョコの交換は朝に終えた。
「いこいこいこいこい!」
乗って来たハナにはちゃんと教室で渡してる。
「いこいこいこいこいこいこいこい~♪」
なんか歌い始めた凛が途中からゲラって、つられて皆で笑う。
『いっこいっこいっこいっいっこいっこい~♪』
こんな馬鹿なことで笑えるのもあと少し。
10時40分を指す時計に見送られて3-1の教室を出た。
――― ――― ―――
理科室は四階。
ちょっと遠い。
日々の運動不足に加えて、三年は二階だからちょっとキツい。
長机に背凭れの無い椅子が四脚。
入って直ぐの島に、もう座ってる。
「じゃね」
凛とハナがポンポンして去っていく。
椅子を下ろして座った。
教室では離れてるけど、理科室では隣の島の背中合わせ。
隣の金島君が喋ってる。
「お前、貰った?」
「なにを?」
「そういうのいいから、何個もらった?」
「……貰ってないよ」
「え?まじ?」
「なんで嬉しそうなんだよ」
「いや、去年お前めっちゃ貰ってたじゃん」
「二個だけだよ」
「それでもだよ!俺なんて今年も『ちんすこう』だけだからな!しょっぺぇっての!」
「島袋さん面白いよな」
嘘。
「はい。授業はじめまーす」
嘘ついた。
「今日は最後の授業。三年の、しかも最後ということで―――」
なんで?
『えぇ~~~!!!』
『なんで~~~?』
『自習ぅ~~~!』
直ぐ後ろにいるのに。
『はい、静かに~。黒田さん、ごめん。窓、じゃないカーテン閉めて』
朝、一緒にいたのに。
『はいはい、静かに』
白スクリーンが降りてくる。
教室の電気が消える。
教室の騒めきは消えない。
私の胸の騒めきも。




