7時55分。
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三歩分遅れて教室に入る。
廊下側の前から二番目にもう鞄を置いている彼を横目に、あたしは真ん中の列の一番後ろの席に向かう。
「おはよー」
「おはよー香菜」
途中、凛におはようを言いながら。
なんかニヤニヤしながら返してきて、そのまま抱き着きながら付いて来る。
「どうしたの?」
ひそひそ声で言って来る。
「どうもしてない」
自分でも不機嫌そうだなって思う声が出る。
「一緒に来てるじゃん」
「たまたま。そこの信号で一緒になっただけ」
言って席に座った。
時計は7時55分を指している。
「え?偶然?凄くない?」
声がデカい。
「声おっきいって…!」
「ごめんごめん。で、どうしたの?」
「だから、どうもしてない。普通に話して来ただけ。靴箱まで」
「えぇ…!凄いじゃん…!スゴくない…!?」
小声でも騒げる凛の方が凄い。
ちらっと見てみる。
教科書を机に入れてる。
「ちょっと来て」
教室の後ろからトイレに向かった。
――― ――― ―――
「先に入れられてた」
「え?チョコ?」
「うん。普通に嬉しいって。直ぐ鞄にしまってた」
「香菜は?」
「渡せないよ。あんなタイミングで」
「そっか……」
「それで、嬉しい?告られたら?ってちょっと……しつこくしちゃって……嫌われたかも……」
「えぇ、嘘、泣かないで、大丈夫だよ香菜ぁ」
泣いてなんかない。
ただ不安で、目が熱いだけ。
鼻声なのは……寒いから。
「大丈夫、大丈夫。昼……放課後とか、ちょっと時間空けてさ」
「うん」
でも、凛がいる。
「いっそ直で渡しちゃいなよ。三限終わり、部活ないでしょ?」
「うん」
抱きしめて、頭を撫でてくれる凛がいる。
――― ――― ―――
鼻をすする。
通りが良くない。
小学校から持たされてるティッシュでかんだ。
「これ、あげる」
もちろんティッシュじゃない。
忘れずに持って出た、凛の分。
市販の40円のヤツ。
「普通トイレで渡す?」
呆れ笑いを浮かべた凛の顔。
「あ……ごめん」
「いいけどさ」
「ほんと、ごめん」
「いいって。もう、ほんと香菜だなぁ」
そう言って、また私を抱きしめる凛。
「ごめんね」
「しつこいぞ~」
「うん」
でも、香菜だなぁって、なに?




