第五話 牢破り
(兵士にはなれるけど)
実はレベル10はすでに越えている。しかし話を聞く限り彼らの仲間にはなりたくないな。何をさせられるかわかったものじゃない。
「第一王子側についている人間の最後を見せてやろう。そこで指をくわえて見ているがいい!」
「やめろー!」
剣を振り上げ見張りを突き刺そうとする兵士。理不尽極まる行動に俺の怒りが限界を超える。冷静タイプかと思っていたが意外と熱血タイプだったのかもな。いやいや、誰でもこんなことされたら怒るか。ん? さっきの騒動で袋から剣が一本こちらに流れ落ちてきている。なら答えは一つだな、鉄格子を破壊してここから脱出し彼を助ける。剣を拾い前へ出ると兵は俺に気が付き冷やかしてくる。
「おお、勇敢な旅人がこの鉄格子を破壊しようと挑戦なさるぞ。だが残念なお知ら」
「ハンドレッドバースト!」
ありがたいお話の途中だが構わず斬撃のスキルを放つ。習得にはスタート後、百日経過した時タイミングよく剣を振るという試練を攻略する必要がある。この技は爆発する斬撃、破壊するならもってこいのスキルだがさて。体から赤色の闘気が発生し剣に集まる。剣を振り鉄格子にぶつける。鼓膜をつんざく金属音と爆発音が発生するが、剣が弾かれ鉄格子は何事もなかったように傷一つついていない。
「驚かせやがって。だが、たかが旅人だと思っていたが騎士団長レベルの力を手に入れていたとはな。忠誠を誓えるなら我が軍に入れてやってもいいぞ、あーはっはっは!」
悪党に忠誠なんか誓えるわけないだろ。これで破壊できない? ならその上のスキルを使うだけだ。
「サウザンドエクスプロード!」
このスキルは千日後にタイミングよく剣を振るという先ほどの上位版。いやー、思っていたよりも間隔が短かったから失敗しちゃった(二敗)。黄金色の闘気が発生し剣に集まっていく。周りにいる人たちはその闘気が発生しただけで吹き飛ばされる。
「うぎっ、これは一体っ!?」
「ヒテン、お前は‥‥」
燃え上がる炎のような黄金の闘気。振り上げて鉄格子に叩きつける。激しい爆発が発生、周囲はホワイトアウト。爆弾が爆発したような光景が広がる。光が収まり鉄格子が見えてくる。今度はどうだ?
「そ、そんなまさか」
先ほどの爆発で中央に大穴が空けられていた。よかった、成功だ。ここでカレサさんに目で合図を送る、はっと我に返り、仲間たちに指示を出す。
「今だ、取り押さえろ!」
兵士はすぐに押さえつけられ無力化。俺がスキルで他の牢も開けていく。そして各自武器を持ち戦いの準備を整える。あれだけの音を出した割には誰もこちらに駆けつけてこない。王子救出作戦が時間通り行われ向こうに人手がとられているな。どうやら作戦は予定通り進んでいるようだ。
「ありがとうヒテン。これでこの国は」
「俺も手伝います」
「お願いする」
乗り掛かった舟とばかりに俺も第一王子側につく。
「みんな、いくぞ!」
牢から大人数の男達が叫び声を上げながら飛び出していく。牢屋の通路を抜けると数人の敵兵と出くわす。
「なっ、敵襲!? お、お前たち、ここは任せたぞ!」
「無理に決まってるだろ! そいつを捕まえて差し出して逃げるぞ!」
お前がお前がと醜い争いが勃発、結局全員逃走を選び情けない声を出しながら皆逃げていった。その後は拍子抜けするほどあっけなく解決。俺達が牢から出てくるのは完全に予想外だったようで、城内部からの突然の兵の発生に敵側は混乱、彼らは元々忠誠も何もあったものじゃない金だけの寄せ集めの兵、第二王子を放り出し、先ほど出会った兵と同じく街からすぐに逃げていった。王子もこれを見て城を捨て逃げ出す。第一王子を殺そうとしていた者達も、戦況が変わったのを知りほぼ同時に逃げ出す。散り散りに兵たちが逃げ、一時は見失った第二王子だったが、逃げた兵に踏みつけられたような靴の跡だらけの服装で街道にぼーっと突っ立っていたところを確保。こうして戦闘は終結。その姿を見てちょっとかわいそうかな、なんて思うことはなかった。やりすぎた代償としては安いぐらいだ。
「七天苦王さえ来ていれば‥‥」
ぽつりと謎の言葉だけつぶやき後はずっと無言。第一王子が捕らわれていた場所に今度は自分が入ることになった。翌日には第一王子が城に戻りあらためて王に。バルコニーから挨拶と今後の国の在り方を熱心に説明、国民たちは大喝采。今までの政治が本当に駄目だったんだろうな。その日は街中がお祭り騒ぎで各場所で無料のお酒や食べ物の提供があった。俺は客室に通され、服を用意してもらい着替えてご馳走してもらうことに。この世界に来ていきなり牢獄に入れられまずい飯を食べてきた反動もあり、うまいのなんの。気絶するまで飲み食いし誰かがベッドに運んでくれた。うーん、もう食べられないよ。あ、この世界は十五歳から成人だからお酒はOKということで!
「まさかこの牢を破壊する者がいるとは」
「その昔、凶悪な魔物を封じ込めていたという話ですね。前王に試してみろと言われ斬ってみましたが歯が立たず。とてつもなく頑丈な金属を使った鉄格子だとか」
「ああ、父上から破壊できる者がいるとしたら勇者や魔王と呼ばれる類の上位の人物だろうと聞いている」
「!! そこまで」
「この件は二人の秘密にしておこう」
「わかりました」
「わずか数日でそこまでとはな。もしかして我々はとんでもない人物と接しているのかもしれん」




