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第一話 世界は阿鼻叫喚で満ちている

「もう少しでクリアだ‥‥!」


人気の配信者が苦行ゲームとして知られる「ドラゴンエッグ」というゲームのプレイをライブ配信中。山頂にあるドラゴンの巣から卵を盗み出し、下に転がっていかないよう支えながらゆっくり転がして地上のゴールまで運んでいくという内容。ただの球形の玉でも難しいのに転がり方の予測がつかない卵を転がすこのゲームは非常に難易度が高いことでも有名で障害物や段差、罠など様々な仕掛けがプレイヤーの精神力を削る。小休止を挟んでゲームを再開、配信はここからがクライマックス、これから最大の難関である竜の細橋という細い橋を渡っていく。微妙な操作ミスで人も卵も崖下へ真っ逆さま、幾人ものプレイヤーの行く手を阻み続けた橋だ。配信者がいくぞと自らを鼓舞し難所に差し掛かる。


「手に汗握るな」


俺の名前は山上飛転やまがみ ひてん、ゲームが大好きな34歳会社勤めの一般人男性。ポテチを片手に生配信の動画を視聴中。多くの視聴者と同じく画面にくぎ付け。多数の応援コメントが彼の背中を押す。そして慎重に卵を動かし途中ひやりとする場面がありながらも最難関の竜の細橋を越えた。


「やったーー!!」


ここまで何度も失敗をしながら少しずつ攻略し、遂にゴール目前までたどり着いた。残りはただの下り坂、ウイニングランと呼ばれるほど難易度がぐっと下がる。


「おめでとうございます!」

「あなたならと信じていました!」


称賛するコメントで埋め尽くされるコメント欄。多くの人が見ていたから流れる速度がとんでもなく速い。


「ありがとう!」


あまりの嬉しさにコメントを返しだす配信者。そしてここで悲劇が起こる。


「あ」

「たまごたまご!!」

「しまった!」


時間にして数秒、少しずつ動いていた卵が配信者のキャラを滑る様に越え転がりだす。必死に止めようと卵を追いかけるが届かない。卵はさらに加速し豪快にゴールに向かって転がっていく。


「あ”あ”ー、卵がー!!」


配信者の悲痛な叫び声がこだまする、台パンする音が鳴り響く。クリアは失敗しそうだが熱狂は最高潮を迎える。先ほどのコメが流れる速度を大きく上回る速さのコメ欄。人の不幸ほど甘美なものはないからね。むしろこれを見に来ている人も多いだろう。ゴールと共に卵は弾けて中をぶちまけ、プレイキャラが怒ったドラゴンに飲み込まれてしまいゲームオーバー。途中セーブ機能なんて甘いものはなく、ここまで来ていても最初からやり直しとなる。


「今日はここまで」


精神力が持たなかったのだろう、あまりのショックに言葉数少なく配信を閉じてしまった。いやー衝撃的な展開だった。一瞬の油断ですべてが台無し。ある意味人生の縮図、というのは流石に大げさだろうか。


「もうこんな時間か」


配信が盛り上がって興奮冷めやらぬ状態ではあるが明日も仕事があるからそろそろ寝る時間。お風呂に入って布団に潜り込みこの日は過ぎていった。朝起きて仕事へ、昼になり後輩と昼食を食べることになり会社から出て店へ。会話をしながら料理が来るのを待つ。ふとスマホが気になり、カバンから取り出して確認。


「今日はアイツから連絡が来ないな」

「先輩、罪深い人だなー。ここのところ毎日でしたね、もはや苦行」


企業からのセールス電話。結構頑張ったんじゃないかな。こういう電話の対処法ってどの方法が正解なんだろうか、まあ止まったしいいか。仕事を終えて帰宅。


「今日はゲームでも」


様々なゲームを遊ぶが一番俺に合うのは苦行ゲーム。非常に操作がシビアだったり理不尽を突きつけてくるものが多い。しかし慣れてきて今までできなかった動きができたりすると気分は最高潮、高揚感が体中を支配するようになる。有名どころはクリア済み、もちろん昨日のドラゴンエッグもクリアしている。PCを起動しゲームを販売しているサイトへ。


「面白そうなゲームはないかなっと」


新作ゲームで苦行ゲーを探していく。


「ヘル イズ プレファラブル? 初めて見る題名だな」


ゲームの内容を確認。あなたにこそプレイしてもらいたい究極の苦行ゲーム! 異世界に入り様々なゲームを攻略して自分を強くしていこう。いくつかのゲーム画像が貼られている、よくあるファンタジーな見た目、中世風の世界観か。苦行ゲーム詰め合わせみたいなやつかな? PTゲーム集みたいな。苦行ゲームを探している俺が言うのもなんだけど需要あるのかこれ。販売したばかりということもあるけれど予想通りというか当然というか、誰もまだ遊んでいないようで感想はなし。


「情報なしに突っ込むというのもまた楽しいものだ」


もしかしたら一番乗りか、結構燃えるね。よーし、やるか。気合を入れゲームを購入。ダウンロード後インストールをしてゲームを立ち上げる。まだ見ぬ強敵との戦いを楽しみにスタートを押しゲームを始める。


「‥‥あれ? ここはどこだ」


エンターキーを押した瞬間見知らぬ場所へと飛ばされていた。土でできた道、広がる草原。服装も着ていた服から変わっている、これは先ほどのゲームで見たデザインの服だ。


「まさかゲームの世界に!?」

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