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赤いサメの唄  作者: 変汁
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静香が始発で出て4時間待ちだったと言う話を元に私は前日から千葉に向かう事にした。午後3時頃にマリカの館の場所を把握する為に向かったら、30人近くの人が待っており最後尾には本日終了という立て看板が置かれてあった。それを見て私は1番近くのビジネスホテルに泊まる事にした。出来るなら1番を取りたかったからだ。


最初、私は静香が殺された事をマリカに突きつけ、占いがどれだけ曖昧で適当な事か文句をつけようと思っていた。


だがそれではつまらないと思い直した私は静香の生年月日、産まれた場所、今の年齢を控えて持って来た。


私が静香になりすまして占って貰おうと考えたのだ。

それにマリカには私が静香の偽物だと気付かれるとは思えなかった。何故なら毎日のように大勢の人間が全国から集まって来ていてその数だけでも片手では収まり切らない。おまけに静香が占って貰ったのは1週間も前の事だから、それを踏まえてもマリカが静香の事を覚えているとは思えなかった。


万が一、全ての占ったお客の日時、名前、内容を事細かく記録していたとしても、さすがに顔写真までは撮らないだろう。だからバレる事はないと思った。


その上で私は山木静香となりマリカがどんな占いをするかを聞いた上で、適当な事を言ったなら静香が殺された事を突きつけ、罵ってやろうと考えたのだ。


私はその時が待ち遠しくて中々寝付けなかった。だから会社で貰っていた薬を飲んだ。 


スマホの目覚ましを五時半にセットし目を閉じると今日初めて赤いサメが見えた。


冷静に考えたら私はどういうタイミングでこの赤いサメを見ることが出来るのだろう?と今は穏やかに回遊しているサメを見ながら思った。


常に見えてるわけでもなく、見ようと思って見えるものでもなかった。ただ、一つだけわかった事は、赤いサメが仰向けで泳いでいた時は、100%、何らかの理由によって人が亡くなっているという事だ。その人物とは、勿論、静香と課長だった。


100%と言ってもまだ2人だけなので確実性の根拠には乏しいと言わざる負えないけれど、それはこれから統計を取っていけばハッキリとする筈だ。


薬が効き始めたのか瞼が重くなって来た。赤いサメは普通に泳いでいる。それは私の周りの誰かが死ぬような事は起こりそうにない、という兆しな気がした。


その事について私は何故かホッとした。そしてそのまま瞬間的に意識を失った。


目覚ましで起きてゆっくりと支度を始める。シャワーを浴び、着替えて直ぐチェックアウトした。化粧はしなかった。途中、コンビニで朝食を買った。


飲み物は買う事を避けたのは待ってる間にトイレに行きたくなると困るからだ。2人1組で来てるならトイレで列を抜けても順番を取られるような事はないだろうけど、念の為、そうする事にした。


私がマリカの館に着くと既に1人の女性が待っていた。スマホを取り出し時間を確認する。6時15分だ。なのに1番乗りとはいかなかったのだが、一体この人は何時にここへやって来たのだろう?それでもまぁ2番なら良しと私は思い直し、その女性の後に並んだ。


私が並んだ事に気づいた先頭の女性は、チラリと背後を振り返りまた前に向き直った。こういう時、話しかけて良いものなのか私にはわからなかった。だから黙っている事にした。


こんな早くから待つような人だから、どうしてもマリカに占って貰いたい事柄があるのだろう。そんな女性の切羽詰まった現状が何とも痛ましく思えてならなかった。


静香から占いの内容を聞いていた身としては、高いお金を払ってまで占って貰うほどではないと考えていたからだ。


それでも私は、殺された静香の恨みでは無いけど、少なからず、静香の代わりに文句を言ってやりたかった。


その為に私は早く来たのだけど、この女性はきっと違う。自分の事で思い悩む事柄がそれなりにあるのだと思う。私はその女性の後ろ姿を見つめながら、この女性の日々の生活が何となく垣間見えた気がした。


開店5分前になると館のシャッターが開いた。マリカの助手らしき人物がシャッターの奥から姿を現し、並んでいる私達に向かって一礼をした。まるでイスラム教徒のような出立ちだ。


瞳以外、露出している部分はなかった。私は助手らしき女性を見た後で後ろを振り返った。目測ではあるけれど、40人近い女性客が立ち並んでいる。その助手らしき人は10番目までの人だけに、鑑定希望の時間帯を尋ねますと話した。


1番目の女性は1時間をお願いし、私は思わず溜息をついた。それが聞こえたのかいきなり後ろを振り返り、もの凄い形相で私を睨めつけた。


目が血走っているとはこのような女性の目を言うのだろう。瞳孔は開き、神経痛なのか瞼が痙攣していた。私はその目に苛つきを覚えたが、その時、助手らしき女性が私に鑑定時間を尋ねて来たので目を合わさずに済んだ。


私は30分と告げた。15分ではマリカが静香を占った事だけで時間が終わると考えたからだった。私が静香から聞いた内容と全く同じことを言うのかと思うと今から楽しみで仕方なかった。


助手らしき人物は私の鑑定時間をノートに記入すると3番目の女性へと移動して行った。前をみると1番目の女性は鑑定が待ちきれないのか、しきりに貧乏揺りをし始めた。さっきの目もそうだが、この揺すりは私を苛つかせた。こいつウザい女だなぁ。死ねよと思いながら私はそいつの後頭部を睨め付けた。


「では、最初の方、私の後について来てください」


そう助手らしき人物がいい、1番目の女の手を取った。2人は手を繋いだままシャッターの奥へと消えて行った。


女が中に連れていかれてから約30分くらいが過ぎた頃だった。暇つぶしにスマホでアプリゲームをしていたら、いきなりスマホ画面に赤いサメが映って見えた。


そのサメは又、仰向けになって泳いでいた。口を大きく開き、数多の鋭利な歯がギラついていた。


こんな歯で噛みつかれたらひとたまりもないなぁ。

その時、私は無意識にあっと口に出していた。直ぐさ手で口を押さえてから、私はある事を思った。さっきの女、多分、死ぬわ。私は込み上げる笑いを必死に堪えた。


偉そうに私を睨んだりするからよ。残念。今、あんたが占って貰っている事は絶対に叶わない。何故って?それは叶う前にあんたが死ぬからだよ。それも何一つ叶わずに死んじゃうの。


それも近々に。


あの女にはどういう死に方が似合うだろう?かと考えた。血走った目を思い出し、その両目が潰されてしまうような死に方が良いわ。そうね。例えば飛ばしている車が跳ねた小石が目にあたるとか、ビルの建設中の現場から鉄筋が落下して地面で跳ね、女の目に突き刺さるなんてのも最高に楽しそうだった。私は女の死に方を詳細にイメージした。


そのイメージ通りの事があの女の身に起きたのなら、私にはサメの力が備わったのは確実だという事だ。


そこまで考えてから、私の頭の中で、ある疑問が浮かび上がった。それは静香の死の事だ。


確かに私は会社で静香に会うのがウザいと思っていた。あの日はウンザリするくらい静香には会いたくないと思っていた。


けれど死ねばいいとは思わなかった筈だし、おまけに残忍な殺害方法などイメージしてもいない。なのに静香は殺害された。もしも、私の気付かない潜在意識下の中で静香の死をイメージしていたとしたら、それは私の力ではどうする事も出来ない事だ。


致し方のない不慮の事故だ。でももしそのような意識下にさえ力を及ぼすのであれば、私が嫌だと思う相手は残らず全員、この世界から消え失せるという事になる。


これは最高なプレゼントだし、力だと私は思った。


静香には悪いが死んでくれて良かったと私は思った。

だって静香が死ななければこのような力に気づく事にはならなかったかも知れないからだ。


課長の死は。恐らく、赤いサメとの因果関係についても私は見落としていたと思う。


そういえば静香の死体を見つけた朝、赤いサメは何やら荒れていて何かに噛みつき引きちぎっていた。ひょっとしたらその赤いサメの行動は腹部に数ヵ所も刺し傷や切り傷があった静香の死に方を暗示していたのかも知れない。でも確か、赤いサメは仰向けで泳いでいなかったのではなかったか。それだけが謎だった。強引な考えを当てはめれば、静香は助かる可能性があったかもと言えなくもない。だから赤いサメは仰向けで泳いでいなかった、そう捉える事も出来ると私は思った。


再度、スマホ画面を見つめると、赤いサメは未だに仰向けで泳いでいた。よし。これであの女は確実に死ぬだろう。私は人差し指でスマホ画面のサメを撫でた。なんて可愛いのだろう。

君がオスなのかメスなのか私にはよくわからないけれど、そろそろ君の名前をつけてあげなきゃだ。うん。そうだ。紅子、ベニ子がいい。君は紅子だ。どう気に入ってくれたかな?

私は自分の鑑定時間までスマホ画面を撫で続けた。


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