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赤いサメの唄  作者: 変汁
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静香は15分の間に3つの事を占って貰ったそうだ。


3つというのは15分で占って貰える最大の数で、細かい内容を求める場合は2つ、もしくは1つになる時もあるらしい。


静香は恋愛と結婚、そして経済力を見てもらい、恋愛は今年の夏、年下の男性と熱愛するがその男性とは結婚はないらしい。結婚は35歳でするのが最適で一回り上の男性と結婚するといわれ、少しショックだったと私に言った。


静香は一回り上の男性との結婚がショックだったわけではなく、その男性とは同僚、もしくは上司で、つまり社内結婚になると言われたのがショックだったというのだ。


「そんなの恋のドキドキ感皆無でしょ?まるで私がとりあえずいい歳だし、世間体もあるから適当な所で手を打った、みたいじゃない?それが嫌なのよ」


「そんなのわからないじゃない?静香が惚れる場合だってあるわけだから」


「ないない。この会社で一回り上の男に素敵な人なんかいないわよ」


「多くはないけど他部署だってあるし、静香はそこの男を全員知ってるわけじゃないでしょ?それに35歳まで後、何年ある?転勤とか新しい人だって入って来る事もあるじゃん?」


「まぁ そうだけどさ。でもなんか嫌だなぁ」


占いで自分が気に食わない鑑定をされた人の何が面倒くさいかというと、こういう風にフォローしてあげないといけないという事だ。


長年の友達でも恩がある相手でもない。ただの同僚なのに。けどある程度は話を聞いてあげないと後々、面倒になるのが女という生き物だ。本当、自分でもわかってるけど、女同士ってつくつぐ厄介な関係だと思う。

まぁ。男と女の関係も、厄介な場合が多いけど。


「とりあえず私の結婚までは時間あるらしいから今年の夏の年下君に期待する」


静香は鼻息荒くそう言った。


その後に静香は、経済はFXを勧められたからさっそくアプリを入れて練習をやっているのと言った。


「夏には株のプロになるんだら。だから今から勉強よ」


「はいはい。頑張って」


人気占い師マリカが静香に対してどんな占いをするのかと期待していたが、ありがちな内容に呆れたし、所詮、占いなんてそんなものだと言う安心感もあった。だから占いなんて朝の占いランキング程度で良いのだ。


「任せてよ。大株主になってセレブになるからさ」


私は笑ってみせた。苦笑いと言った方が正解かも知れない。


「あ、そうそう、咲は赤いサメって見たことある?」


「はい?」


「赤いサメよ」


「赤いサメなんているわけないじゃん。それにいたとしても見たことないよ」


「だよね〜」


「ていうかいきなり何変な事、言い出してんの?」


「いや、マリカがね。鑑定終わった後にさ。いきなり、貴女の近くに赤いサメを飼っている人がいるから、その人には気をつけてって言ったの」


「赤いサメを飼ってる?馬鹿みたい」


私は笑った。


「そんな人いるわけないじゃん。そもそも赤いサメなんていないだろうし」


「やっぱそうだよね」


「そうだよ」私が言うと静香は変なこと聞いてごめんねといい自分のデスクに戻っていった。


そう静香には言ったものの、それからの私は頭の中から赤いサメの事が離れなかった。


赤いサメの事で頭が一杯というわけではなく、脳の中の一部分に、ゆったりと海遊する赤いサメの姿がある、みたいな感じだ。


その赤いサメはホホジロザメに似ていて見るからに凶暴そうで尚且つ全身が深い赤色だから、まるで戦いの後の傷ついた戦士のようだった。


返り血と自らの流れる血が混ざったどす黒い、そんな赤だ。けれど私の脳内で泳ぐその血塗れの赤いサメは優雅で貴賓に満ちていた。サメ界のセレブというか貴族のようだと私は思った。


ランチ中も静香の話や他の同僚の話を聞きながら、相槌を打ったり話したりする中にあっても、私の脳内の中の赤いサメは消えなかった。絶えず私の脳内で泳いでいた。その姿に見惚れるせいで、午後からはぼうっとする時間が増えて上司から2度も注意を受けた。


「昨日夜更かしでもしたのか?」


「いえ」


「本当か?」


「はい」


ていうか人のプライベートは放っておいてくれ。大体あんたには関係ないだろう。そう思ったが、実際私が赤いサメに見惚れてたせいで、そんな風に言われたのだ。

気をつけなきゃと思い直した。


「さっきから手を止めてるが、体調が優れないのか?」


「そんな事ないです。大丈夫ですよ」


「なら良いが。調子悪くなったら早めに言ってくれ」


「わかりました」


まさか赤いサメが優雅に泳いでるのを見てました、なんて言えるわけがない。勿論、体調も悪くない。


だけど、私の頭の中にいる赤いサメの事が気になって仕方なかった。今となっては、それが幻覚か妄想かは自分でもよくわからなかった。ただ言えるのはパソコンの画面をみていても、私には赤いサメの姿がハッキリと見えてしまっていたのだ。


それは目で見ているという風ではない。

だから、パソコン画面に赤いサメが映るような事もない。ただ赤いサメの姿が私には見えるのだ。

感知していると言った方がわかりやすいかもしれない。


だとしてももし誰かに説明するとするならば、赤いサメが見えると表現するしか私には言いようがなかった。


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