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赤いサメの唄  作者: 変汁
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占い師のマリカと聞けば女子なら知らない方が珍しい有名な占い師だ。


私はまだ1度も占って貰った事はないけど、噂では15分の占いで最低1万円は取られるそうだ。


占いの平均的な値段の相場は知らないけれど、占い師マリカの鑑定料が高いというのは私にでもわかる。


それでも世の中にはたった15分程度に1万円を支払う女子が後をたたないらしい。


幸いな事にその占い師マリカの店があるのは、千葉県らしく、地方の私からしたら先ず千葉県まで行く事はない。


にも関わらず占い師マリカが女子に有名なのは、彼女がしばらく発信していたSNSのおかげだった。


最近は占い師の仕事が多忙なのか、SNSでの発信は行われていないが、コメント欄には再開を望む声が多数書かれているようだった。


その当時、占い師マリカは毎日、誕生日別のその日の運勢と星座の占いをSNSにて発信していた。


それがいつしかよく当たるとSNS内で噂となり、

あれよあれよとメディアに取り上げられ、瞬く間に人気占い師となって行った。


一度、ニュースで取り上げられた時はたった15分占って貰う為に沖縄や九州から来たという女性客達がいた。


その人達は自分の番が来るまで3時間待つ羽目になったのだけど、出て来た時の表情は実に晴れやかだった。


私にはその晴れやかになる意味が全く理解出来なかった。


占いというだけあって、最後にはポジティブな事を言われて終わるのだろうけど、だからといってそこまで晴れやかな表情になるというのはどうにも理解し難かった。


私はマリカに占って貰う為にわざわざ足を運んでいる人達に、何故、そんなにも清々しい表情で出て来るのか尋ねたいくらいだ。


最終的に、占いに来たお客に対し希望を与えて送り出すというのは良い事だと思うし、当たってないねとか、損した、ありきたりの事ばかり言ってるだけだから詐欺みたいなものよ等、SNS内で言われていないだけでも、占い師マリカの手腕は凄いという証だろう。


だからマリカは相当、良く当たる占い師なのかも知れない。


正直な話、他県住みの私の職場でも占い師マリカに見てもらいたいという女子は少なからずいる。夏休みに入ったら行くとか、有給使っていくとか、ディズニー行く時、次いでに見て貰おうかなと、その女子達は休憩時間に止まっているマリカのSNSを開いてはそれを見ながらワイワイやっている。


「咲は見てもらいたくない?」


私にそう聞いて来たのは同期の山木静香だった。


静香は同期と言っても私より4つ年上で何でも大学受験に失敗し、4浪したらしいというのを先輩の前田さんから聞いて知ってはいたが、その事を直接静香に聞いた事は1度もなかった。


仲良くなれば話してくれるだろうと思っていたからだ。だけど、入社して3年過ぎた今でも静香は自分が4歳年上だという話は一切、して来なかった。


その理由として考えられるのは静香が4浪したという事に相当なコンプレックスを感じているからだろう。


「んー。私は別に見てもらわなくて良いかな」


「どうして?」


「結局、良い出会いがありますとか言われても、それを見極め行動するのは自分でしょ?」


「そうだけどさぁ。それでも当たると評判のマリカさんに背中を後押しされてるから、より頑張れるじゃない?」


「それって占い関係なくない?自分次第じゃん?例えばさ。例えばだよ?何年の6月に人生のパートナーと出会いますと言われたら、確かに頑張るだろうけど、美容や婚活サイトに登録してお金を使い、精一杯頑張った先に良い結果が得られなかったらどうするの?また占い師マリカに会いに行くわけ?それとも所詮、占いなんて当たらないよっていう?」


「そんなのはみてもらわないとわからないわよ」


私のマリカ批判にも取れる言い方に静香は頭にきたのか少し不服そうな表情を浮かべそう言った。


「まぁ。でも私、今度の週末にマリカの所に行くから、占って貰った結果、私がどうなるかわかるんじゃない?」


本当に行くんだ?という私の問いかけに、静香は人差し指を立て唇にそっとあてた。誰にも言わないでという意味だ。その後、静香は座っている私の肩に手を添え黙っててねと微笑んだ。




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