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38. 平和な日が続きます





 ジョーが甘すぎるから、治療院でいつもの生活に戻るとホッとする。

 だが、街中にはジョーと私が正式に結婚するという事実が、あっという間に流れていた。



「アンちゃーん!オストワルに残ってくれて、ありがとうね!!」


 朝一番、ケーキ屋の奥さんが、また大きな包みを持って訪れた。その包みには何が入っているのか大体想像がつくが、私は知らないふりをする。


「こちらこそ、この街に残れて嬉しいです。

 みなさんとこうやってお話も出来るし」


 そう言いながら、私は剣の稽古で傷ついた子供の処置をする。子供は目を輝かせながら、


「僕は第一騎士団に入るんだ!

 ジョセフ様と一緒に戦うんだ!」


なんて言っている。


 こんな子供までを虜にするジョーはすごいとつくづく思う。


「そうそう、ジョセフ様と言えば……」


 ケーキ屋の奥さんの言葉に身構える私に、彼女は包みを開いて私にそれを見せた。


 そこには、私の予想通りの婚約おめでとうケーキがあったのだが、前回と少し仕様が変わっている。ケーキがハート型になっているし、ジョーは騎士団の隊服には、なんと紋章まで入っている。

 奥さんも、さらにケーキ作りの腕が上がったのだろう。



「このケーキのおかげで、うちの店は大繁盛よ」


 奥さんは嬉しそうに言う。


「街中の人が、ジョセフ様とアンちゃんの結婚を喜んでいて、販売開始十分で売れてしまうの。


 だから毎日、ケーキを焼きっぱなしだよ」


「それは、このケーキが美味しいからだと思います」


 笑顔で告げていた。


 ジョーとの結婚が本当になったため、私ももう結婚を否定することはなくなった。そして、何よりも皆さんから祝福されていることが嬉しいのだ。

 ジョーは美男で強いため、狙っている女性だっていただろうに。



 そんななか、


「アン!」


不意に現れるジョーは、いつものように治療院の扉を開けて中に入ってくる。


 手当てをしていた男の子が、ジョーを見て目を輝かせている。そんな男の子を喜ばせてあげたいと思い、ジョーに告げた。


「将来、ジョセフ団長と戦いたいんだって!」


 するとジョーは嬉しそうに男の子の前に座り、その頭をわしゃっと撫でた。


「頼もしいな。待ってるよ」


 男の子は嬉しそうに笑っている。ジョーはきっと、いいお父さんにもなるだろう。……お父さんか……私たち、結婚するんだよね……


 色々考えて真っ赤になってしまう私を、ジョーは再び呼ぶ。


「今日の稽古、するか?」


 私は大きく頷いていた。





 広い薬草園で、私はジョーに護身術を教えてもらう。最近は、これが日課になっていた。ソフィアさんは護身術なんてと笑うが、私は至って本気だ。私が事件に巻き込まれた時、少しでもジョーの負担を軽くしたいと思ってしまうから。


 ジョーに言われた通りに棒を振るうと、ジョーはわざと棒に当たってやられたふりをする。厳しい騎士団長のはずなのに、私には甘々だ。

 そして、毎度のことながら、騎士団の仕事を放り出して私と遊んでいていいのかと思う。


 わざとらしく倒れたジョーを見て、


「もう!真面目にやってよ!」


なんて笑ってしまう。少なくとも、私はジョーの足下にも及ばないことは分かっているのだが。


 ジョーもおかしそうに笑いながら、


「俺は真面目にやっている。アンに見惚れて何も出来なくなってしまうんだ」


なんて、これまた甘い言葉を吐く。最強の騎士団長を狂わせる私が、ある意味最強なのかもしれない。


 だが、このジョーの訓練のため意外にも私が戦えるようになっていたことが、後々分かるのだった。


「明日は王都に向けて出発だ。

 国王に、どうやって謝らせてやろうか」


 ジョーはそんな不吉なことを言うものだから、


「陛下は何も悪くないんだよ!」


 慌てて否定する。それでも、私が育った王都にジョーと行けるなんて、不思議な気分だった。 


 師匠も元気にされているかな。ジョーのことも報告しなきゃ。王都なんて二度と行くつもりもなかったが、意外にも王都行きに胸を膨らませる私がいた。




いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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